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【日曜経済講座】編集委員・田村秀男 再来する日中通貨戦争

 中国は戦前のこうした通貨戦争の教訓を現代に生かしている。基本は米国との「連合」である。胡錦濤総書記・国家主席は党内の異論を押し切り、ドルと米国債を買い続け、人民元の発行量もドルに合わせることで対ドルレートを安定させている。一方でため込んだドルを利用し、海外の石油資源を買い占める。

 北京は人為的にドルとの交換レートを安定させることで、信用度を急速に高めている。昨年9月のリーマン・ショック後は台湾やベトナムなど周辺地域・国で人民元の流通促進を図っている。ブラジル、ロシアなどとも通貨協定を結び、人民元による貿易決済を始める計画だ。

 日本円は「国際通貨」と呼ばれながらも、海外での流通はごくわずかだ。日本企業はアジア地域の子会社との取引では円を使うが、残る大半はドル決済である。中国はその点、国際化で出遅れながらも、東南アジアを中心にじわじわと人民元を浸透させつつある。上海の証券市場を対外開放すれば、企業や投資家は人民元建ての金融資産を大量保有し、人民元の国際化は一挙に進展しよう。

 金融危機はいま、モノやサービスで中国市場の国際的地位を一挙に高めている。中国系企業が人民元を武器にビジネス機会を広げる好機である。日本企業が円を使えず、中国や東南アジアなどで人民元で投資や貿易の決済を迫られる日もいずれ来るだろう。