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大前研一「東アジア共同体」を語る前にEUの歴史を学べ

その始まりは古く、1958年のローマ条約までさかのぼる。その後も各国は関係を強くし、93年のマーストリヒト条約を経て、現在はリスボン条約の批准が大詰めを迎えている。呼称もEEC(欧州経済共同体)、EC(欧州共同体)、EU欧州連合)という変遷をたどってきている。

現在批准していない加盟国はチェコのみとなっている。

 リスボン条約は、チェコさえ納得すれば、すべての加盟国が批准することになる。順調に進めば今年中には批准が終わり、来年(2010年)からリスボン条約が発効されることになる。

そうなると次の問題は、EU大統領の選挙だ。

米タイム誌10月19日号の記事「The Next Step」でも触れられていた。その主張も同じで、「全加盟国が批准した後はEU大統領選びが重要になるが、バローゾ氏では力不足」と指摘し、期待される人材としてブレア氏のほか、ドイツのメルケル首相の名前を挙げていた。やはり世界が納得し、その人の考えに従おうという人材でないと、EU大統領は務まるまい。

 わたしはEU誕生を「人類が成し遂げた知的成功の一つ」として高く評価している。人類の歴史を振り返れば、「武力に寄らずに版図を拡大した」例はない。それが世界最大の超国家EUは「人々の合意」という人間の知性で実現するのである。

わたしは年に一度、ヨーロッパにある32の企業のトップと共に、EU単一市場をつくるための合宿を10年近くにわたってやっていたことがある。率直なところ、あまりにも難題であるため挑戦すればするほど、彼らがめげそうになるのも事実だった。そして絶望的になったときに、タイミング良く出てきたのが1988年3月の「チェッキーニ報告」だった。イタリア人の経済学者チェッキーニらが単一市場の利点を数量化したリポートで、まさに希望の光が差したように感じたものだ。単一市場をつくるために何が必要かは、この「チェッキーニ報告」を読めば理解できるはずである。鳩山首相もぜひ一読してほしい。ましてや、いまの通貨ユーロやヨーロッパ中央銀行などの創設を規定したマーストリヒト条約は必読書である。

東アジア共同体」構想については、すでに(予想された)米国からだけでなくアジア各国からも不協和音が聞こえてきている。

「米国との経済、安全保障面での強固な関係を保った上で、東アジア共同体を定義してほしい」と、アジアの小国は考えているのである。