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変化する時代と日米関係 ―冷戦的構図は当てはまらない―

 アメリカ側(特に知日派の同盟堅持派)から日米同盟に懸念が表されるのは今回が初めてではない。90年代半ば冷戦終結後にも日米同盟が「漂流」しているといった意見が示された。当時日本では、冷戦後という時代状況に即して日本の安全保障政策を再考する動きがみられたが、これに対して、アメリカ軍の駐留は、アジア太平洋地域には依然として不安定な要素があるため必要であると確認され、日米同盟関係は「再定義」された。北朝鮮によるミサイル危機もあり、日米新ガイドライン、周辺事態法が整備され、軍事面での協力体制が整ったのである。

 今回の懸念は、民主党政権が発足し鳩山首相がより自主的な外交姿勢を表明したことが発端である。しかし、日米関係をめぐる懸念は、単に政権交代のみならず、より深いレベルで日米関係に影響を与える地殻変動が生じていることにも起因すると思われる。それは90年代半ばの「再定義」に至る底流でもあった国際環境の変化が加速度的に進んだことである。当時にもまして、アジア、特に中国の発展はめざましく、日米両国にとって中国はきわめて重要な貿易相手国となった。今回のオバマ大統領のアジア訪問でも、同盟国である日本や韓国よりも中国での滞在日数は長く設定された。米中関係は、同盟という法制度を基盤とする日米関係と質的には異なるにしても、それでもアメリカにとって中国との関係は重要性を増している。他方、鳩山首相も、「東アジア共同体」構想をシンガポールで唱えており、日本でもアジア外交を重視する声もあがっている。グローバリゼーションも進展し、今次の世界経済危機の解決をめぐっては、G7からG20が招集されるなど関係諸国は一挙に3倍になった。

篠原初枝 教授 OFFICIAL SITE-早稲田大学大学院アジア太平洋研究科-

いかなる思想も行動も世界全体を明確に把握することなくしては役に立たない。
いかなる思想も行動も過去と現在の関係を考察することなくしては意味がない。
いかなる思想も行動も各地域の関係を理解することなくしては成立しない。
いかなる思想も行動も諸国民の相互依存を認識することなくしては意義がない。
  『戦争の研究』(1942年)

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