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インタビュー:資源高で先進国はデフレ悪化へ=浜同志社大教授

 世界経済が緩やかな回復基調にあるのは、金融危機後に各国が財政出動したことで構造調整が十分進まなかった証拠でもあり、先進国の財政問題が新たな恐慌の引き金になる可能性が高いとの見方を示した。

 ――2011年の世界経済を総括するキーワードは。


 「2011年を考えるとき、私の頭の中にあるキーワードは『ディンフレーション』という言葉。デフレとインフレが同時に進行する意味で私が勝手に作った。不況下の物価高を表すスタグフレーションとは違う。新興国のインフレとバブル、そして資源高で先進国ではコスト圧力が高まってくるが、モノの価格を上げられる市場環境ではないので、人件費をさらに下げる圧力がかかり、賃金デフレが悪化する状況が展望される。新興国のインフレにせよ資源高にせよ、デフレに苦しむ先進国の金融緩和がもたらしており、無限に続くいたちごっこの状態で極めて厄介だ」

 ――世界経済が懸念された二番底に陥らず緩やかに回復しているのをどうみるか。


 「景気循環的な意味では、前年比ベースで底を打ち、上昇局面にあるのは間違いない。しかし、景気が拡大再生産される力が醸成されているわけではない。グローバル経済の特徴は、経済の不均衡が恐慌によって調整される自己浄化作用が十分に完結されずに、マネーがハイリターンを求めて暴走を始め、資産インフレに翻弄される。経済が回復に至っているように見えているのは、逆に十分調整が進んでいないことの表れだと考え、次のショックに備えなければいけない局面に来ている」

 ――日米欧の財政状況をどうみるか。


 「米国のバランスシート調整は進んでいない。欧州も財政問題がある。そのため、財政という、本来は経済のレスキュー隊の役目を果たすべきところが、次の恐慌を招く原因になりかねない。日本の国債も、もう一発格下げが来れば相当危機的・末期的な状況になり、赤字国債も発行できず、公共サービスの提供機能が低下することになりかねない。日米欧どこから火を噴いてもおかしくないが、(財政)問題の規模という点では明らかに日本が台風の目。日本の機関投資家がどこまで我慢して持ち続けるかだ」

 ――欧州中央銀行(ECB)による利上げの動きをどうみるか。


 「日本を筆頭に非伝統的な金融政策手段があまりに幅広く浸透し、かく乱要因にもなる中で、なるべく早いタイミングで金利を正常化するというのは至極全うな発想。だが(金融緩和という)生命維持装置を取り外してしまうことにもなる。ECBは腹を決めたようだが、米国はそこが一番悩ましいだろう」

 ――ユーロ圏をめぐる欧州周縁国とドイツの動向をどうみるか。


 「ユーロ圏ではドイツが我慢する代わり、他の加盟国に対して『ドイツ並みになれ』と高い代償を求めている。ドイツ並みに引き締めや財政再建を求められると、周縁国はデフレ効果が強まる状況に直面させられるが、最近のドイツは『それが嫌ならカネは出さない』と言わんばかりだ。ドイツが突っ張れば突っ張るほどユーロ圏のデフレ・財政状況が悪くなる悪循環に陥ってしまう。ユーロ圏維持のため本当に現実的なシナリオは、メジャーリーグマイナーリーグのようにユーロAとユーロBに分けることなどだが、その実現性は少ないだろう。ユーロ圏はひとつ、と各国で支えているうち支え切れなくなり、各国が勝手に脱退する可能性が多分にある」