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【鑑賞眼】ボリショイ・バレエ団「スパルタクス」

 ローマ貴族の酒宴の余興で同朋を殺害させられたスパルタクスは、支配階級の横暴に怒り、奴隷を組織し反乱を起こす。民衆も加わり反乱軍は勝利するが、情けをかけ司令官の命を救ったためにローマ軍の猛反撃を受け、あえなく散る−。

 帝国の威光を体現するローマ司令官、その寵愛(ちょうあい)を得んと反乱軍を誘惑し分裂に導く妖艶(ようえん)な娼婦(しょうふ)、貞淑スパルタクスの妻の人物造形も魅力的で、退廃と官能漂う司令官と愛人の踊り、情感あふれるスパルタクスと妻の踊り、復讐(ふくしゅう)に燃える司令官の踊りなど多様な見せ場も物語に厚みを加える。

 1967年、革命50周年記念に生まれたこのソビエト時代の傑作バレエは、圧政に抗(あらが)うプロレタリアの英雄の物語に愛、正義、裏切り、復讐という普遍のドラマと人間の身体と舞踊が秘めた可能性を示し、今も人々の胸を熱くするのだ。