外の世界への扉を開くのは、恋である。客として何人の男がやってこようと彼女らの扉は一向に開かれないのに、恋をすることによって固く閉ざされた扉はあっけなく開き、それどころか、ためにため込んだ力を一気に発散させるかのように、ここではない別の世界へとぶっ飛んでいく。
遊郭の女達は新地を出て橋を渡ることを夢見ている。しかし、ただ橋を渡ってもダメなのだ。好きでもない男に身請けされて、目も耳も感覚も閉じたまま背負われるように橋を渡るのではなく、自ら扉をこじ開けて、全身で世界を見に行く必要がある。
こうした想いを受ける側の男達の不甲斐(ふがい)なさが気になる。
しかし、心中物は気色悪さが漂ってる。