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安倍政権下での国債増発への懸念 ロクイチの悪夢がよぎる

 国債の流通利回りがじりじり上昇している(価格は下落)。期間20年、30年の超長期国債の利回り上昇が顕著だ。安倍晋三政権下での国債増発、財政規律喪失への懸念が強まっているからだ。

 ロクイチの悪夢が頭をよぎる。ロクイチは通称。1978年4月〜79年2月に発行された表面利率6.1%の10年国債を指す。今では「そんな時代もあったのね」と思わせる高金利国債だ。


 ロクイチは80年4月に急落した。金融引き締めで公定歩合(当時)がこの間、3.5%から9%に上がったからだ。流通市場での実勢価格は額面100円に対し72円台に下がり、利回りは12%台に上がった。ロクイチを大量に保有する金融機関は巨額の評価損失の処理に苦しんだ。昨今の南欧諸国の国債の値動きと重なる。国債発行残高が100兆円に満たない時代の話だ。

 中央銀行が政府の財布代わりにされた例は戦前のドイツにも先例があった。ただし、経緯があった。中央銀行ライヒスバンクの理事会は39年、ヒトラーの大量資金供給の要求を撥(は)ねつける上申書を提出。激怒したヒトラーは理事会メンバーを反逆者とみなし罷免。意向を諾々と汲(く)むメンバーと入れ替えた。


 罷免された理事の一人だったW・フォッケは戦後、中央銀行のドイツ・レンダー・バンクの総裁を長く務めた。インフレファイターとして辣腕(らつわん)を振るい、ドイツマルクの守護者と呼ばれた。フォッケに著書がある。『健全通貨』(吉野俊彦訳)だ。日銀マンの多くが読み、城山三郎の『小説日本銀行』の中にも出てくる。


 「危険なものは、政治的過誤、(略)欲望の過度の膨張、(略)無統制な要求、また狭量な国家主義である」「私は人々にただ愉快なことのみを語る地位にはない。職務の性質上私はしばしば不人気で不愉快な真理を語らなければならない」…。同書には、権威と矜持(きょうじ)に包まれた中央銀行総裁ならではの述懐が満ちる。

 闘うべき相手はインフレとデフレの違いがある。しかし、政権の要求を諾々と聞くだけでは中央銀行総裁の名が泣く。悲しい。人為的な超低金利、超金融緩和に齟齬(そご)が生じれば、波乱相場に利益を求める内外の投機筋が日本国債に牙を剥いてこよう。

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