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日銀の植田和男総裁は30日、金融緩和の出口局面で中央銀行の財務が一時的に悪化しても、金融政策の目的である「物価の安定」を実現できていれば政策運営能力は損なわれないとの見方を示した。緩和修正に対する思惑が市場でくすぶる中、日銀の出口戦略そのものにはなお距離があるとの考えも強調した。

日本金融学会で同日行った講演内容を日銀が開示した。

植田総裁は、デフレ脱却に向けた長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の導入で、1) 長期国債の資産増、2)ETF・上場投資信託などのリスク性資産計上、3)当座預金の大幅な増加――といった財務構造上の変化が生じたと指摘した。これに伴う日銀が受け取る利息収入は「増加傾向にある」と述べた。

植田総裁は「バランスシートの拡大・縮小に伴い収益が振幅するメカニズムが内在していることは確か」とし、仮に金融正常化に向かう場合には「資産側では国債、負債側では当座預金が減少していくと考えられる」と述べた。

その場合は「短期金利を上昇させるために、当座預金に対する付利金利を引き上げていくことになる。その結果、支払利息が増加し、中央銀行の収益は下押しされる」と説明。他方で、高い利回りの国債への再投資などを通じて「やや長い目でみれば、中央銀行の収益はいずれ回復していく」とも語った。

その上で、日銀の収益や資本が減少すれば通貨の信認が失われるという見方があることに対し、中銀の資産や財政の健全性が直接担保するわけではなく、「適切な金融政策運営により『物価の安定』を図ることを通じて確保される」と述べた。

金融政策の目的はあくまでも「物価の安定」だとし、日銀は賃金の上昇を伴う形で「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していると改めて強調した。

一方、2%目標の持続的・安定的な達成には「実現を見通せる状況には至っておらず、なお出口には距離がある」とした。

#日銀(【講演】植田総裁「中央銀行の財務と金融政策運営」(日本金融学会) )