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【古典個展】立命館大教授・加地伸行 偏差値から人間教育へ

 それはこうである。縁あって、私は大阪のある私立高校の助言者となった。同校は女子高であり、少子化の中で低迷していた。もちろん生徒定員を割っていた。


 結局、男女共学にし、巨額の借金をして新校舎を建て、面目を一新する方向となった。それはそれで再生の手順としては良かった。しかし問題は教育方針。これまでと同じでは、いずれまた低迷してゆく。


 そこで私は、従来の方針すなわち偏差値至上主義の教育を排して人間を育てる教育へ、偏差値教育から人間教育へ、と主張した。主張し続けた。だれが何と言おうと。

生徒が学校に来るのが楽しくてしかたがないという雰囲気や解放感があることが最も大切なのである。

 先述した高校の学校説明会では、偏差値を一切言わず、もっぱら人間教育とその内容との説明をした。ふつうの学校説明会とはまったくことなっていた。


 ところが、3回の説明会参加者(保護者を含む)は鰻登(うなぎのぼ)り、募集人員320人に対して、志願者1524人(うち専願が610人)に達し、入試当日は人で溢(あふ)れた。

 すなわち、世の心ある生徒や保護者は求めていたのである。偏差値教育ではなくて、志を養う人間教育を。しかし、それに応える高校がほとんどなかったのだ。