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日銀異次元緩和は財政ファイナンスか:識者はこうみる

国債買い入れ


黒田総裁「長期国債を年間で50兆円買います計画は市場参加者の常識を超える巨額なものだ。こうした買い入れは、基本的には幅広いゾーンの国債を入札で買い入れる以上、可能であり、必ず実現する。「整斉と」とはいかない可能性があるが、できるだけ円滑に進めたい」(4月12日、読売国際経済懇話会)


●河野龍太郎・BNPパリバ証券・チーフエコノミスト「政府・日銀を統合したベースで考えれば、日銀が長期国債を買い進めていくということは、政府部門の民間部門に対する債務が長期国債から日銀当座預金という超短期の債務へ置き換わっていくことを意味する。つまり、政府部門の債務は短期化していくということであり、その分、国の財政は金利上昇により脆弱になっていく。言い換えると、それゆえに利上げができなくなるということである」


●池尾和人・慶応大学教授「日銀が大量の国債を買い取ることで、これまで民間部門が保有していた国債が減るために、国債の需給が引き締まり、長期国債の利回りは低下する要因となるはず。一方で他の資産市場にシフトして国債市場から離脱する市場参加者の方が多ければ、かえって需給が緩み、結局利回りは下がらない。何らかのストレスが市場に発生することで、財政に伝播(でんぱ)してしまうリスクや、金利上昇の際のリスクが大きくなったともいえる」


●岩田一政・日経センター理事長(元日銀副総裁)「これまで日銀が買っていた国債は3年程度の期間のものまでだったが、より長い期間の国債まで買うことになり、保険会社や年金などが他の資産を買わざるを得なくなる。それにより、資産市場を通じた効果が大きくなる。株価や為替への効果はすでに大きく出ており、期待インフレ率が上がれば、実質金利が低下することにより、実体経済へも波及することが期待される」


<財政ファイナンス


黒田総裁「日銀の多額の国債買い入れが、ひとたび財政ファイナンスと受け取られれば国債市場は不安定化し、長期金利が実態からかい離して上昇する可能性がある」


「量的・質的緩和による長期国債買い入れは金融政策上の目的で日銀自身の判断で行うもので、財政ファイナンスではない。日銀による国債買い入れが増加する中、それが財政ファイナンスではないかという議論を惹起しないためにも政府が今後の財政健全化に向けた道筋を明確にし、財政構造改革を着実に進めていくことがきわめて重要」(4月12日、読売国際経済懇話会)


野口悠紀雄一橋大学名誉教授(早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問)「今回の緩和策の本当の目的は私の解釈では国債を買うことだ。つまり財政ファイナンスということ。毎月7兆円くらい買うといっているが、それは年間では新規国債発行額より多い。財政赤字がいくら増えて国債が発行されても日銀が買いますと言っているわけだ。財政規律が弛緩する」


与謝野馨・元経済財政担当相「政府と日銀が、これは財政ファイナンスではないと言っても、財政ファイナンスであるということは明らかだ。決して健全な金融財政政策とは言えない」


山本幸三自民党衆議院議員「(物価上昇率)2%までは国債を買うが、それを超えたら止めるのが物価安定目標政策だ。物価安定目標政策こそ、最大の財政ファイナンスに対する歯止めであり、ハイパーインフレに対する歯止めだ」


●加藤出・東短リサーチ社長「フィスカルドミナンス(財政支配)という問題に直面していくだろう。国債の発行量の7割を購入するというのは強烈だ。日銀が国債を買うことで需給に見合って長期金利が低下するが、そういう状態が長期化し、人為的に国債金利を低く抑えつけていることに慣れてしまうと、モラルハザードが起きる確率がかなりある。今は世界経済が上向きだが、これが萎(しぼ)んでしまうと財政出動の議論が出てきやすくなり、日銀が買っているから大丈夫となって財政赤字が膨らみやすい」