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日刊ゲンダイ|異次元緩和の次元を超えた誤り

 日銀の黒田総裁は、追加緩和の理由のひとつに「原油価格の急落」を挙げたそうだ。ガソリン高騰に難儀してきた一般家庭や、中小企業の経営者にすれば、やっと値が下がって「ホッと一息」のはず。それなのに、物価上昇に固執する黒田総裁は原油急落を「悪い芽」として摘み取ろうとする。その感覚は国民の生活実感とはあまりにズレている。


 異次元緩和をもう一段、次元を上げれば、さらなる円安を招く。その弊害は地域の中小企業ほど大きい。政権が掲げた「地方創生」の金看板にも泥を塗ることになる。パンや豆腐や卵といった日用食品も値上がりするので、一般国民の生活も大変だ。なのになぜ黒田総裁は「2%の物価上昇」にこだわるのか。


 金融緩和は実体経済を動かす潤滑油になることが大前提だ。日本経済が今、資金需給が逼迫し、企業の旺盛な投資意欲に金融機関が応えきれない現状なら、なるほど異次元緩和の超低金利策にも意義はある。


 実体は真逆だ。黒田総裁が異次元緩和にカジを切って1年半。日銀の当座預金残高はどんどん膨らんでいる。一昨年3月末の34・4兆円から史上最高額更新を繰り返し、今年9月末には161・5兆円に達した。企業の内部留保もこの1年で20兆円積み上がり、285兆円に拡大している。現状はマネー不足どころか、銀行にも企業にも資金はダブついているのだ。


 よしんば企業の設備投資意欲に火がついたとしても、グローバル化が進んだ今、資金は海外展開に向けられる。すでに多くの日本企業は海外に生産拠点を移し、国外で積み上げた利益の一部を国内に還付して本社の台所を潤わせている。こうした構造が出来上がっている中、さらなる緩和で円安を加速させても無意味だ。輸出は伸びず、輸入額だけが膨らんでいく。最近の国際収支統計を見ても、日本企業の海外子会社からの配当などを示す「所得収支」だけが伸びている。


 もはや日本は「輸出立国」の姿を失っているのだ。黒田総裁にはグローバル時代に則した金融政策こそ求められている。国民生活を犠牲にしてまで「2%」の物価目標に執着するサマは「頑迷固陋」に陥っているとしか思えない。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20141031#1414751835
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20141009#1412851005