ウクライナ危機に「核戦争」への発展を危惧するゴルバチョフ 米国には「ペレストロイカが必要だ」 WEDGE Infinity(ウェッジ)
原因は、クリミア半島の併合や、ウクライナ東部の内戦に介入し、第2次世界大戦後の秩序を冒したロシア側にあるのではなく、北大西洋条約機構(NATO)の側にあるのだという。
「NATOの東方拡大は欧州の安全保障の秩序を破壊している。第2次世界大戦中、ドイツは東方への影響圏の拡大を図ろうとした。私たちは教訓を学ぶ必要がある」
冷戦への認識は、ウクライナ危機が激化するにつれ、その都度、深まった。
ロシアがクリミア半島を併合した昨年3月、欧米の対露制裁が発動されたことを鑑み「次なる冷戦を防がなくてはいけない」と述べた。そうして、ウクライナとロシアへ、両国民が受け入れられる解決策の実行を促した。
11月、ベルリンの壁崩壊25周年イベントでは、「われわれは冷戦勃発の縁にいる」と言った。
そして、ウクライナ東部での死傷者が激増する中で行われたシュピーゲル誌のインタビューでは「私はすでに、ありとあらゆる新冷戦の兆候を見ている」とさらに突っ込んだ。
その上で「米国には政治的な根本改革、ペレストロイカが必要だ」と訴える。
「米国は緊張と不安定に乗じて、混乱状態に介入している。圧力の政治の展開を容易にするため、敵をわざと作り出している。米国はいまだに20世紀の古い政策の虜になっている。敵がいなければ、彼らは生きていけないのだ」
昨年11月には、「After the Kremlin(クレムリンの後)」という本を上梓した。モスクワで行われた出版記念イベントには、数百人が列を作り、サインに応じた。近年、病気で入退院を繰り返しているが、壇上では「90歳の誕生日パーティーに招待するよ。参加者全員で祝おう」とおどけてみせた。
出版イベントでは、これまで「自信過剰な政治家」と評していたプーチン大統領を、「良い判断力と自制心を持った政治家だ」と持ち上げた。さらに、プーチン大統領は国家崩壊からロシアを救ったことを「記憶に止めなければならない」とも述べた。
直近のインタビューでは、「欧州はやはり、共通の家の中にある。戦争の舞台ではない。全ての諍いの歩みが終結に向かわなければならない。私たちは全てヨーロッパ人なのです」と語った。