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アングル:AIIB問題で欧米に亀裂、中国「小切手外交」の勝利か | Reuters

地政学シフトは時に、計画によってではなく偶然の出来事で発生する。

欧州諸国は今月、いずれも先発者利益を得ようとAIIBへの参加を表明。米国の懸念に対抗したかたちとなった。


いち早く参加を表明した英国のオズボーン財務相は議会で行った演説で、AIIBが英国にもたらす事業機会を強調した。「われわれは、西側の主要国として初めてAIIBの創設メンバーに加わることを決定した。新たな国際機関の創設の場に存在すべきだと考えたからだ」と述べた。この演説の前には、ルー米財務長官が電話で参加を控えるようオズボーン財務相に求めていた。


米国の緊密な同盟国である英国のこの決定を受け、他国の参加ラッシュが始まった。英国の「抜け駆け」を不満とする独仏伊も相次ぎ参加を表明し、ルクセンブルクとスイスも素早く続いた。

匿名の欧州、米国、中国の当局者は、欧州諸国のAIIBへの参加表明について、かつて「欧米」と呼ばれていた関係国の戦略的対話が不足していることが浮き彫りになったと指摘。また、自国の商業的利益に関わる問題となれば、欧州連合(EU)の主要国は共通の外交・安全保障政策は二の次にするということも示された。

西側諸国は長らくの間、中国に対し、貿易黒字の一部を途上国の交通、エネルギー、通信の各分野に投資することを求めてきたが、米国と日本が大きな影響力を持つ世界銀行アジア開発銀行(ADB)を利用するよう望んでいた。


しかし米議会が、国際通貨基金IMF)での中国と他の新興国の議決権拡大に関する2010年の合意を承認しないことから、これを不服とした中国は独自の道を進むこと選んだ。

欧州諸国の間でもAIIB参加の方策やタイミングについて議論はあったが、一般的な見解は内部から影響を与えようというものだったと、複数の当局者は話す。ある欧州の外交官は「対立は主に米国寄りの安全保障アドバイザーと、経済・アジア分野のアドバイザーによるものだった」とし、経済・アジア分野のアドバイザーらが、大きな電車は動き出していて、乗り込むことがわれわれの利益だ、と強調したと明らかにした。


ドイツでは、メルケル首相府が経済省と外務省にAIIB参加をめぐる判断などを担当するよう指示。同国は中国との貿易を優先してきたことから、AIIB参加を疑う見方はほとんどなかった。

英独仏伊の当局者は共通した姿勢でAIIBに臨むため数回にわたり会合を開いてきたが、英国が先駆けて参加を表明。驚きではないにしても、反発が広がった。


英政府の関係筋は「国際金融において中国の良きパートナーでありたい」と語った。また、「米国が同じ立場でないことは理解していたが、それを承知で動いた」と述べた。


同関係筋によると、AIIBに関して、4カ国に日米カナダも加えた7カ国の当局者による非公式会合も開かれたが、結論には至らなかった。

フランス政府の関係筋は、ガバナンスなどの問題は未解決だと指摘した上で、「それでも、設立当初から関心を示すことは欧州諸国にとって重要だった」と述べた。

前出の欧州外交官によれば、イタリアでは、パドアン経済相がレンツィ首相に電話一本をかけただけで参加の方針が決まったという。

オバマ政権はこの対立を利用し、貿易促進権限(TPA、通称ファストトラック)を大統領に付与し、IMF改革を批准するよう議会に圧力をかけている。環太平洋連携協定(TPP)はアジア太平洋諸国11カ国の協定で、中国は含まれていない。ファストトラック権限があれば、TPP交渉妥結が可能になる。


前出のオバマ政権のメンバーは「他国が行動を起こしているから、われわれもファストトラック権限やTPPに関して積極的に行動している。道筋のルールを決定する場にいたい」と述べた。