トヨタ、今年の新型車生産の投資は08年比で半減へ | Reuters
トヨタ自動車(7203.T: 株価, ニュース, レポート)は26日、2015年の新型車生産での設備投資額について、生産性向上の結果、2008年当時と比べ約半分に低減するとの見通しを発表した。これまで取り組んできた生産体制・工程の見直しや現場での改革が大きく寄与する。
同社は現在、部品類などの共有化により商品力向上とコスト削減の同時実現を目指す新しい車両設計方式「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)」の導入準備を進めている。新方式による生産立ち上げ当初は設備投資が一時的に増えるが、これまでの全社的な投資低減努力により、08年時より少ない投資で車両モデルの切り替えが可能になるという。
トヨタはこれまで販売する地域などによって異なる車種を個別に開発し、それに併せて部品も別々に発注してきましたが、世界での販売台数がトヨタ単体で900万台を超え市場のニーズが一段と多様化するなかで、どう効率的に設計していくかが課題になっていました。
これを受けてトヨタはクルマ作りを抜本的に見直し、さまざまな車種の基本部分をまとめて設計して部品の共通化を進める「TNGA」と呼ぶ新しい開発の方式に切り替えることになりました。
具体的にはエンジンやトランスミッションなどを複数の車種で共通化し、デザインや内装などは地域のニーズにあわせることにしており、コストの削減と品質の向上を図るねらいです。
トヨタはこの新しい開発方式を年内に発売するハイブリッド車「プリウス」の新型モデルから順次、取り入れ、2020年ごろまでに世界の販売台数の半分に広げる方針です。記者会見で加藤光久副社長は「TNGAは持続的成長に向けた構造改革で開発で浮いた元手を車作りに再投資してもっといい車を作っていきたい」と述べました。
トヨタ自動車が導入を始める新しい開発方式「TNGA」は、部品の大幅な共通化を進めるいわゆる「モジュール化」の一種です。数多くの部品を高度な技術で組み立てていく「すり合わせ」と呼ばれる自動車生産の基本概念を大きく変えるものです。
モジュール化はヨーロッパの自動車メーカーがいち早く導入しました。
ドイツの「フォルクスワーゲン」は「MQB」と呼ぶ手法を、おととし導入しました。主力車種の「ゴルフ」では、従来は基本的な設計が異なっていたガソリン車と電気自動車の生産を共通化し、コスト競争力が高まったとされています。BMWやアメリカのフォードなども同じような取り組みを進めています。
また、「日産自動車」も「CMF」と呼ぶモジュール化の手法をおととしから導入し、SUV=多目的スポーツ車の「エクストレイル」などで採用しています。
車のモジュール化は、エンジンルームや座席があるフロア部分など車をいくつかのブロックにわけたうえで、それを組み合わせることで複数の車種を効率的に生産する新しい手法で、基本的な設計や部品などを共通化することができます。共通化によって、これまで各国や地域の仕様にわかれていた国内外の複数の工場で、同じ車種の生産がしやすくなるほか、モデルチェンジの際に行う工場の設備投資の費用も抑えることができるとしています。各社がモジュール化を進める背景には、先進国から新興国まで市場が広がり、地域の需要にあわせて生産が複雑化していることや、従来の生産手法では一段のコストの削減が難しくなっていることが挙げられます。
一方、モジュール化の動きを巡っては、部品の共通化が進めば、取り引き先の部品メーカーが絞り込まれるなどの影響が出るといった懸念も指摘されています。