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欧米が叩けば叩くほどプーチン支持が強まるロシア 経済的苦境に立ちながら80%以上の支持を与える国民気質とは | JBpress(日本ビジネスプレス)

 西側で彼が蛇蝎(だかつ)のごとくに嫌われているのは、ロシアが強くなることを周辺国と米国が恐れているからなのだが、なぜ恐れるのかと言えば、それに現実味があるからだ。


 そう思わせるのも、近来のロシアでは稀なほどプーチン大統領が有能な為政者だからで、そのことを欧米も内心では認めざるを得ない。

 そして、プーチン大統領の動きは先が読めない。予見不能だから何をしでかすか他国は不安になる。その彼の行動を行き当りばったりと評する向きもいる。行き当りばったりで核戦争などに踏み込まれたら堪ったものではない。


 だが、ロシア人一般が、相手の出方を見て自分の動きを決めることを基本にしていることが分かっていれば、これは何の不思議もないはずなのだ。


 プーチン大統領やロシアが「悪」で、その「悪」が練りに練った攻撃計画の下で周辺国をなぎ倒して帝国の拡大を図っている――。


 こうしたストーリーを作ってしまうと、ロシアのやっていることはそのストーリーからはみ出る矛盾だらけで、恐らく何が何だか分からなくなるだろう。


 なぜなら、ロシア側の意図とは、概して西側の動きの反射鏡に過ぎないからだ。


 プーチン大統領の動きは他国に理解できるものではない(他の惑星に住んでいる!)、と主張するなら、それが鏡の反射角の大小について言及した時にのみ正論となり得る。反射角がどうなっているかは、さすがに誰にでも簡単に分かるといった代物ではない。

 ロシア人――それが人種か、市民か、国民かを問わず、外敵からはどんな犠牲を払ってでも守る、という国家のリーダーの意思表示である。それだけ国民の間に西側への警戒心が高まっていたということでもあり、その安堵を図る必要性にプーチン大統領は迫られていた。

●1999年に無名の新人・プーチン氏が登場した時には、ロシアなどこの先どうなるか分からない国として扱われていた。有体に言えば、西側の視界には入っていない国だった。


プーチン氏が2001年の9.11事件で真っ先に米国に連帯を示しても、多分当時の米政権は、小国の1つが擦り寄って来たとしか受け止めていなかった。


●それどころか、ロシアが弱体の間にユーラシア大陸での強国再興という将来の芽を摘んでしまえ、とばかりに、旧ソ連諸国でのカラー革命を先導し、「ロシア圏」の崩壊・解体へと歩を進めていった(9.11は他国が皆敵に見えるほど、米国の安全保障政策を神経過敏なものにしてしまった)。


●ところが、2003年のイラク問題に始まり、プーチン氏は米国の一極支配=強者の権利に抵抗するようになる。そして、原油の国際価格上昇とともに、ロシア復活の兆しが見え始めてきた。


プーチン氏に比べれば、2008年に大統領職を継いだドミトリー・メドベージェフ氏はまだ御しやすいと見られた。しかし、その就任早々にロシアの拡大を恐れたグルジアのミハイル・サーカシビリ大統領が、拙い手の出し方をしてロシアにコテンパンにやられる。


●これでまず米国は面子を失ったが、続いて登場したオバマ大統領は「リセット」を唱える。その政策の中でロシアをうまく抑え込む道を探し出そうとしたのだろう。核兵器廃絶を宣言しながら、他方で核大国のロシアと最初から睨み合うわけにも行かない。


●だが、2012年にプーチン氏が再度大統領に復帰したことで、米国はロシアを危険な存在として捉え始める。逆に、その年の末から始まったロシアの大都市での市民による抗議行動は、プーチン氏から見ればカラー革命のロシア版焼き直しであり、米国が裏で操った結果との疑念が深まる(後のウクライナの騒動でこれは確信に変わる)。


●双方の間が冷え込んでいる中で、2013年にスノーデン事件やシリア問題が生じ、そしてその年の11月からのウクライナのマイダン騒動が始まる。それから後は、冷戦思考への一直線。

 こうした解釈に加えて、ソ連末期にソ連共産党書記長だったミハイル・ゴルバチョフ氏が旧東西両ドイツの統一を認めるに際して、当時のジェイムズ・ベーカー米国務長官NATO北大西洋条約機構)の東進はあり得ないと彼に約束したにもかかわらず、その後その約束が反故にされたことも強調される。


 それは今に至る西側に対するロシアの不信感の源流でもある。


 米側関係者は、この約束には法的拘束力はなかったとして、米国の意思にかかわらずロシアの周辺国がそれを強く望んだから、と今では説明しているが、これはスカイツリーから飛び降りるに等しい気持で決断を行ったゴルバチョフ自身にとっても、大変な裏切りであることに変わりはない。

 プーチン氏やロシア人一般の反射角を支えるこうした流れへの解釈を、今の米政権はどうにも理解できていない、あるいはあえてしようとはしていない、としか考えられない。


 ロシアに対してのみならず、外交の相手国の状況や、その歴史・文化から引き出される行動形態への知見が大きく欠けてしまっていることは、中東問題を現在の状態にまでこじらせてしまったことを見ても分かる。


 これに、オバマ大統領の外交への関心が薄いこと(だから、その下のネオコン一派がやりたい放題)が加わるから、米露関係は彼や彼のスタッフがホワイトハウスから引き上げる時までは、少なくとも改善しないと見るしかない。

 他国を見る目が欠けてしまったのは、冷戦終結後の超大国・一極支配の気分の中で、米国がその節度を忘れてしまったことに大きな理由があるのだろう。


 「民主主義、人権、法の支配」という理想が理想である限り、イスラムの法律観はさて措くとして、世界の多くでそれには誰も反対はしていない。


 だが、それが自らの正当性を主張するためのスローガンに使われたり、他人に説教を垂れる際の優越意識を担保するために語られたり、であったなら、恐らく他の国や人々がそのやり方に疑問を感じ始める。


 一極支配から多極化へ世界がこれから向かうのなら、その理由は米国の軍事・経済での圧倒的な存在が相対的に低下してきているということだけではない。民主主義という言葉によって自国が世界最良で特別な国と思い込んで自己規定するそのイデオロギーが、他国の嫌悪感の中で色褪せてきていることにも求められる。

 それを鋭敏に感じ取っていたロシアでは、米国も、それに追随する欧州も、もはや話し合える相手ではないとの諦めが根づきつつある(その諦めが、冷戦時代に西側が共産主義国家に対して持ったそれと同じものであることには、まだロシアも気づいていないようなのだが)。


 ロシアだけではない。他国もウンザリしてきている。最近大いに話題になっている中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立で、米日を除く主要国が雪崩を打って参加に走ったことが、その表れの一つかもしれない。


 しかも、米国の最も強固な同盟国のはずであった英国がその雪崩の引き金を引いたのだから、何とも皮肉としか言いようがない。ウクライナへの武器供与には賛成する英国でも、AIIBではそれなりの算盤勘定があったのだろう。そのことを米国は理解していなかった。


 そして、この英国の動きが他の欧州各国の米国に対する見方に影響を与えたことは間違いない。同盟国ですら抑え切れていない。「欧州の米国に対する独立宣言の時期が来た」などとの評まで出てくる始末である。

 ちなみに、ロシアはこのAIIBへの参加への返事をすぐには出さなかったようだ。それはこれから拡大して行かねばならないユーラシア同盟との整合性をどう確保するかで、水面下で中国と交渉を行っていたからだろう。


 その結果が、7月8〜9日にロシアのウファで開催されるBRICS首脳会談と上海機構首脳会談ということのようだ。ここにはベラルーシ以外のユーラシア同盟参加国も上海機構のメンバーとして顔を揃えることになる。


 これらの組織で従来検討されてきた経済・金融での協力構想とAIIBとをどううまく繋ぎ合せるか、その中にあってロシアが自国の地位をどう確保して行くのか、がロシアの関心事になる。そして、それは欧州と手を切るという可能性すらも視野に入れた東進策へのプーチンの決断とも、整合性を保って行かねばならない。


 対欧ガス輸出でのサウス・ストリーム計画に絡むプーチン大統領の決定については前回触れたが、それはもう欧州にどう嫌われようと、どう対立しようと構わない、という姿勢でもあり、欧米の批評家があれこれ忖度している範囲をはるかに超えて、ピョートル大帝以来のロシアのベクトルが大転換を迎えているのかのようだ。


 ロシアが欧州一家への夢を捨て、東進政策に本気で向かい出したのは、ロシアが欧米に愛想を尽かしてしまったから、とも言える。米露であろうと、露欧であろうと、一方が他方をアホ(loopy)だとみなして匙を投げてしまったなら、相互間にもう信頼関係は生まれようがない。

 ゴルバチョフの改革以来のロシアへの期待が(それがロシアへの無知に依拠していたと今では批判されようと)、裏切られたという失望感を米国が味わったことは間違いない。  


 ウクライナ問題では、クリミアやウクライナ東部への限りなくクロに近い軍事介入を議論する前に、これまでロシアがウクライナを甘やかし過ぎてきた・・・ロシア人の、よく言えば相互扶助の精神、だが実際にはなァなァベースと変わらないつき合い方が、結果的に凶と出てしまった ・・・という点で責任の一端がロシアにもある、と指摘できるだろう。


 こうした切り口での批判から始めるならば、ロシアも耳を傾けてくる可能性がある。ロシア人も自己観察の面で、自分とロシアがすべて正しいなどとは思っていないようだから・・・。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150411#1428748553
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150407#1428403283
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150404#1428143834
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150331#1427798719
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150331#1427798729
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150226#1424947686
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150214#1423910642
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150211#1423650811
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20140805#1407235311