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眼鏡パンダ

山本芳久『トマス・アクィナス 肯定の哲学』。感情論を視軸として、トマスの人間論・神論・キリスト論が明晰に読み解かれる。愛や希望、怒りなどの感情についての精緻な分析の上に、恋愛などの日常的な具体例が豊富に提示され、読んでいて勉強になるだけでなく楽しい。

それだけでなく、議論は『神学大全』の読み方、スコラ的方法の意義、引用するとはどういうことか、そして学問という営みの意味(古典的テクストを研究することにで真理追求の共同体に参与すること)にまで及ぶ。キリスト論は初出で拝読していたが、この書の中に位置付けられて改めて理解が深まった。

今回特に私が惹かれたのが、第4章での感情の活動性と結論の魅力を感受する能力の議論。感情とは受動することによって現実化される活動であり、魅力が分かるとはその魅力を感受することができるという能力である。いずれも受動性と能動性が交錯する場面であり、トマスの人間論の本質的部分だと思う。

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