アングル:中国政府に銀行が反旗、住宅市場支援策に協力せず | Reuters
中国は低迷する住宅市場をてこ入れするため、支援策を矢継ぎ早に打ち出している。一方、不良債権への警戒感を強める銀行は当局の方針に抵抗しており、政策効果が実体経済に及ばないという問題が生じている。
中国政府はこれまで、利下げや頭金比率引き下げに踏み切ったが、銀行の反応は鈍く、住宅の買い手は政策の恩恵を受けられないでいる。
中国経済の15%に当たる住宅市場の回復は、これ以上の減速を防ぐ上で不可欠。銀行の非協力的な姿勢は経済を一段と冷やしかねない。
中国のある大手銀行の関係者は、なぜ貸し出しを積極化させないのかとの質問に対して「マージンが既に圧迫されているなかでは、資本コストに関心を持たざるを得ない」と述べた。
第1・四半期の中国の国内総生産(GDP)伸び率は前年同期比で7.0%と、6年ぶりの低成長を記録した。経済指標が全般にさえないなか、中国人民銀行(中央銀行)は19日、全銀行を対象に、預金準備率を100ベーシスポイント(bp)引き下げると発表した。
その他にも住宅市場支援に特化した政策を講じており、昨年9月には住宅ローンの基準金利を引き下げ。さらに、2戸目の物件購入時のローンについて、金利のディスカウントや頭金比率引き下げを認めた。
しかし、金融データ会社が12都市・200カ所の銀行支店を対象に実施した調査によると、1戸目の住宅購入時のローン金利で(人民銀の指標から)30%のディスカウントを提供している銀行は皆無。2戸目の住宅ローンで、金利をディスカウントしている銀行もゼロだった。
実際、2戸目の住宅のローンについて、金利をディスカウントするどころか、過半数の銀行では指標を上回る金利を課していた。
深センのあるディベロッパーで、コーポレートファイナスを担当しているある匿名の幹部は「大手銀行が金利を引き下げないのは、住宅ローンをさほど重視していないから」と指摘。「銀行は高い投資リターンを希求している。むしろ、株式市場への投資に熱心だ」としている。
調査によると、中国光大銀行、交通銀行、中国民生銀行、中国建設銀行、中信銀行(CITIC銀行)などが、2戸目の住宅の購入者に対して、指標水準を20─30%上回る金利でのローンを提供していた。
預金準備率引き下げで、銀行の不動産ローンは増えるのだろうか。
CBREチャイナのエグゼクティブディレクター、フランク・チェン氏は「中国では住宅ローンのデフォルトは他のローンよりも少ない。ただ銀行はここ1─2年、不動産への警戒感を強めている」と述べた。
問題の1つは供給過剰だ。3月末現在、中国の販売予定の不動産は6億4998万平方メートルとなっており、2月末から1076万平方メートル増加。住宅投資は2009年以来の水準に落ち込んでいる。
3月の中国主要70都市の新築住宅価格は、前年比6.1%下落し、2月の5.7%下落から下げが加速、7カ月連続の下落となった。
中国の住宅価格が下げ止まるまで、どの程度時間がかかるのかについては、アナリストの見方も分かれている。中国の株式市場はこのところ活況を呈しており、投資資金は住宅から株式にシフトしている。
CBREチャイナのチェン氏は「預金準備率引き下げを受け、(住宅ローン金利の)ディスカウントが実施されるかもしれない。流動性の一部が不動産セクターに行くのではないかと期待している」と述べた。