「不均衡蓄積の証拠ない」─木内減額提案めぐり委員ら激論=日銀議事要旨 | Reuters
日銀が8日公表した議事要旨によると、4月7─8日に開かれた金融政策決定会合では、木内登英委員による資産買い入れの規模縮小提案に対して、「政策効果を減殺する可能性がある」など多くの反論が出ていたことが明らかになった。
政策運営の目安としてきた消費者物価指数(生鮮除くコアCPI)はゼロ近傍にとどまっているが、委員らは、短観やアンケートから読み取れる企業や家計の物価観が安定しているため、物価の基調は上昇していると判断している様子が確認できる。
木内委員はこの会合で、国債買い入れのペースを現在の年間80兆円(残高ベース)から45兆円に減額するのを柱とした緩和縮小を提案し、反対多数で否決された。
議事要旨によると、木内氏とみられる委員は、需給ギャップがゼロ近傍まで改善しているなかで、「逓減している『量的・質的緩和(QQE)』の追加的効果を副作用がすでに上回っているため、導入時の規模であってもこれをなお継続することは、金融面での不均衡の蓄積など中長期的な経済の不安定化につながる懸念がある」と説明した。
これに対し何人かの委員は、「物価目標に向けてなお途半ばである現時点での減額開始は、政策効果を減殺する可能性が高い」と反対した。複数の委員も「ようやくデフレ脱却への道筋がみえてきたという段階であることを踏まえると、現時点ではデフレに戻るリスクを避けることを最優先すべき」と指摘した。一人の委員は「現状、金融面での不均衡の蓄積を示す具体的な根拠はない」と明言したという。
日銀がQQEを開始して丸2年が経過したが、コアCPIはゼロ近傍にとどまっている。議事要旨によると、「政策運営に当たっては、物価の基調的な動きが重要」との認識を委員らは確認している。
物価の基調をめぐり、「3月短観における企業の物価見通しをみると、原油価格が下落するもとでも、先行き物価上昇率が高まるとの予想が維持されている」と多くの委員は指摘している。日銀が集計している生活意識に関するアンケート調査で「家計が引き続き物価上昇を予想している」(何人かの委員)ことも重視されている。
ある委員は「やや勢いを欠いているとはいえ2年連続でベースアップが実現する見通しとなったことは、基本給は上がらないとの固定観念を変え、前向きの予想形成を促す重要な契機」と評価している。
もっともコアCPIの先行きいついて、何人かの委員は「エネルギー価格などの動向次第では、小幅のマイナスになる可能性がある」としている。
また、「耐久財や衣料品の価格上昇率が低下していることなどを踏まえると、この先、消費者物価の上昇率拡大はかなり緩やかなものにとどまる」(ある委員)との慎重な見方も出ている。
米国経済について、委員らは「ドル高などの影響から輸出の伸びは鈍化しているが、堅調な家計支出を背景に企業マインドや生産活動のモメンタムはしっかりしており、設備投資も回復を続けている」との見解で一致した。
国内消費をめぐっては、何人かの委員が「マインド指標の持ち直しに比べ、個人消費関連指標の改善がやや遅れている」との懸念を示した。「年金生活者には賃金上昇の恩恵が及びにくいため、こうした層の消費動向に注意する必要がある」(複数の委員)との指摘も出た。
政策効果をめぐり、「実質金利がマイナスまで低下したもとでも、消費や設備投資が明確に加速するほどの効果はみられなかった」(ある委員)、「国債市場では流動性プレミアムが相応に意識され、名目金利が下がりにくくなっている」(複数の委員)など懐疑的な見方も表明されている。
昨年10月の追加緩和の効果について、「実際の物価上昇率が低下するもとでも、予想物価上昇率は維持されており、賃金や価格改定などへの二次的な影響は生じていない」(何人かの委員)と評価している。
政府の財政再建についても議論されている。「日銀の国債買い入れにより金利の低位安定が保たれるとの期待が過度に強まることなどを背景に、財政健全化に向けた政府の取り組み姿勢が後退するリスクには引き続き注意が必要」(複数の委員)、「仮に政府の財政健全化へのコミットメントが薄れたと市場が判断すれば、国債に対する信認低下から長期金利が上昇し、結果的に日銀の政策効果を減殺する可能性がある」(何人かの委員)との指摘が出た。
日銀は先月8日まで開いた金融政策決定会合で、金融緩和策の継続を決めましたが、民間のエコノミスト出身の木内登英委員が、金融政策を転換して日銀が市場に供給するお金の量を大幅に減らすよう提案していたことが分かっています。
8日公表されたこの会合の議事要旨によりますと、木内委員とみられる委員が「大規模緩和の追加的な効果を、副作用がすでに上回っており、これを継続することは中長期的な経済の不安定化につながる懸念がある」と主張し政策の転換を求めていました。これに対しほかの委員からは、「2%の物価目標に向けてなお道半ばである現時点で、市場に供給するお金の量を減らすことは政策の効果を減殺する可能性が高い」などとして反対意見が相次ぎ、木内委員の提案は否決されていました。
大規模な金融緩和策の効果と副作用を巡って日銀内部で論議が続いていることが、改めて浮き彫りになっています。
金融政策決定会合議事要旨(4月7、8日開催分) http://twme.jp/boj/01Qc
Minutes of the Monetary Policy Meeting on April 7 and 8, 2015 http://twme.jp/boj/01Qd
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150507#1430995684
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150430#1430390915
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150428#1430218308
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20150408#1428489755