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米 IS空爆から1年 作戦は長期化か NHKニュース

アメリカは、去年8月からイラク空爆を開始し、その後、ヨーロッパの同盟国や中東のアラブ諸国とともに有志連合として、ISが占拠した施設や兵器などに対し、イラクとシリアでこれまでに6000回を超える空爆を行いました。
さらに、アメリカは、先月、ISとの戦いに消極的だったトルコとの間で軍事的な協力を深めることで合意し、トルコ南部の空軍基地を使って無人機で空爆を開始して、シリア北部での戦況を好転させようとしています。
しかし、空爆と連携する地上部隊については、イラクアメリカ軍の兵士3000人余りを派遣してイラク軍の訓練を行っていますが、新兵の不足などから、当初の予定よりも計画に遅れが出ています。
また、シリアでは、ISと地上で戦うシリア人の部隊を年間で5000人規模にまで育成する計画ですが、先月の時点で、訓練を受けた兵士は60人程度にとどまり、一部の兵士が過激派に拘束される事態もおきています。
オバマ大統領は、アメリカ軍の大規模な地上部隊を派遣することはないと強調し、代わりに、現地の部隊の訓練に重点をおいてきましたが、計画は大幅に遅れていて、軍事作戦の長期化は避けられない状況となっています。

過激派組織IS=イスラミックステートは、去年6月、「イスラム国家」の樹立を宣言すると、シリア北部のラッカを一方的に首都と位置づけて攻勢を強め、シリアとイラクにまたがる広大な地域を支配下に置きました。
これに対し、アメリカ軍は、去年8月、2011年にイラクから撤退して以来となる空爆イラクで開始し、翌月にはシリアでの空爆にも踏み切りました。
これを受けて、クルド人勢力が、ことし1月、トルコ国境地帯にあるシリア北部の戦略的な要衝、アイン・アルアラブからISを撤退させたほか、2月にはイラク北部の都市キルクークからISを撃退しました。
また、イラク政府軍も、ことし4月、ISとの激しい戦闘の末、北部の主要都市ティクリットの奪還に成功しました。
アメリカ国防総省は、空爆の成果として、ことし4月の時点で、ISが支配していたイラクの人口が多い地域のうち、最大でおよそ3割の地域で、ISが自由に活動することができなくなったとしています。
しかし、ISは、ことし5月、イラク西部アンバール県の中心都市ラマディやシリア中部のパルミラを制圧したほか、アイン・アルアラブでも6月下旬、再び攻撃を仕掛けるなど攻勢を強めていて、対ISの軍事作戦は一進一退の状況が続いています。

イラクでは、ISとの激しい地上戦を繰り広げる部隊の主力を占めているのがイスラムシーア派民兵たちです。
去年6月、北部のイラク第2の都市モスルが陥落したあと、シーア派の最高権威シスターニ師が宗教令を出して義勇兵を呼びかけ、「人民動員隊」と呼ばれる組織が発足しました。
「人民動員隊」には、イラクの有力なシーア派民兵の組織が参加し、イラクの正規軍を上回る数万人から十数万人の戦力とされています。
イラク首相府は、「人民動員隊」が軍の傘下にあることを強調していますが、実態としては、シーア派民兵組織がそれぞれの思惑で行動しているものとみられます。
戦闘員を送り出すため、イラク全土で「人民動員隊」の訓練が行われ、40日間、武器の扱い方やISが潜んでいるという想定で民家を襲撃したり、車に爆発物が仕掛けられていないか調べたりする訓練を繰り返します。
最高権威のシスターニ師は、夏休みの期間中、中学生や高校生にも準備をしておくよう呼びかけたため、10代の子どもたちも訓練に参加しています。
戦場で「人民動員隊」が使う武器は、イラク軍やシーア派の隣国イランから提供されたロシア製の武器など古いものが多く、ISがイラク軍などから奪ったアメリカ製の最新の武器と比べると、劣勢の感は否めません。
ISとの戦闘で、シーア派民兵の犠牲者は増える一方で、南部のバスラでは町じゅうに戦死者を「殉教者」とたたえる横断幕や看板が掲げられています。
今後、アメリカ軍などの有志連合と、シーア派民兵組織との連携が、軍事作戦上、重要なカギとなりますが、シーア派民兵組織は、イランの影響を強く受けているうえ、イラク戦争のあと、イラクを占領したアメリカ軍と戦ったことなどから、アメリカに対する不信感が強く、対ISで共闘できるかどうかは予断を許さない状況です。

ISに対する軍事作戦として、アメリカは、イラクで政府軍の訓練を続けているほか、内戦が続くシリアについては、ことしの5月以降、反政府勢力の軍事訓練に乗り出しています。
このうち、シリアの反政府勢力の訓練について、アメリカ政府は、1年間で5000人余りをISと戦う地上部隊として育成し、給与のほか、武器も提供して戦闘地域に送る計画です。
NHKの取材に応じた反政府勢力の関係者によりますと、訓練にあたって、アメリカ軍は、過激な思想に影響を受けていないかをうそ発見器なども使って審査したうえで戦闘員を選び、シリアの隣国のトルコやヨルダンで自動小銃迫撃砲などを使った訓練を行っているということです。
しかし、シリアの内戦への介入を避けたいアメリカ側は反政府勢力に対し、「戦闘の相手はあくまでISで、アサド政権に対して武器を使ってはいけない」などの条件をつけたということです。
このため、もともとアサド政権の打倒を目的としている反政府勢力の中には訓練への参加を拒む戦闘員が相次いでいるということです。
7月はじめの時点で訓練を受けた戦闘員は僅か60人ほどで、しかもそのうちシリアに入った一部のグループが先月末ISとは別の過激派組織に拘束される事態となり、訓練の計画は難しい状況に直面しています。
反政府勢力の幹部の1人は、「独裁的なアサド政権の打倒とIS壊滅を同時に進めるべきで、そうでなければアメリカの訓練計画は失敗に終わるだろう」と述べています。

アメリカ、ホワイトハウスのアーネスト報道官は、7日の記者会見で、アメリカが過激派組織IS=イスラミックステートに対する空爆を開始して1年になることについて、「ISはこの1年でイラクの支配地域の30%を失い、シリア北部では1万7000平方キロメートルを失った」と述べ、空爆の成果を強調しました。
一方で、アーネスト報道官は「オバマ大統領がこれまで言ってきたとおり、この戦いには時間がかかる。今後、後退を余儀なくされることもあるだろうが、われわれは成果を上げており、最終的には勝利する」と述べ、ISとの戦いは長期戦になるという見通しを示しました。

CSIS=戦略国際問題研究所の中東・軍事専門家のアンソニー・コーデスマン氏は、NHKのインタビューの中で、「アメリカの戦略は、空爆と地上部隊の育成によってISを食い止めるものだが、部隊の育成が非常に遅れている。オバマ大統領は、軍事顧問の部隊の派遣など、軍事面や政策面で新たに行動してきたが、地上部隊の訓練を改善する以外、劇的な解決策はない」と述べました。
さらに、中東だけでなくアフリカやアジアでも、イスラム過激派の活動が広がっているとして、「過激派への対応は、少なくとも今後10年は続くだろう」と述べ、イスラム過激派との戦いの長期化を指摘しました。