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FRB: Press Release--Federal Reserve issues FOMC statement--December 16, 2015

Information received since the Federal Open Market Committee met in October suggests that economic activity has been expanding at a moderate pace. Household spending and business fixed investment have been increasing at solid rates in recent months, and the housing sector has improved further; however, net exports have been soft. A range of recent labor market indicators, including ongoing job gains and declining unemployment, shows further improvement and confirms that underutilization of labor resources has diminished appreciably since early this year. Inflation has continued to run below the Committee's 2 percent longer-run objective, partly reflecting declines in energy prices and in prices of non-energy imports. Market-based measures of inflation compensation remain low; some survey-based measures of longer-term inflation expectations have edged down.


Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee currently expects that, with gradual adjustments in the stance of monetary policy, economic activity will continue to expand at a moderate pace and labor market indicators will continue to strengthen. Overall, taking into account domestic and international developments, the Committee sees the risks to the outlook for both economic activity and the labor market as balanced. Inflation is expected to rise to 2 percent over the medium term as the transitory effects of declines in energy and import prices dissipate and the labor market strengthens further. The Committee continues to monitor inflation developments closely.


The Committee judges that there has been considerable improvement in labor market conditions this year, and it is reasonably confident that inflation will rise, over the medium term, to its 2 percent objective. Given the economic outlook, and recognizing the time it takes for policy actions to affect future economic outcomes, the Committee decided to raise the target range for the federal funds rate to 1/4 to 1/2 percent. The stance of monetary policy remains accommodative after this increase, thereby supporting further improvement in labor market conditions and a return to 2 percent inflation.


In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments. In light of the current shortfall of inflation from 2 percent, the Committee will carefully monitor actual and expected progress toward its inflation goal. The Committee expects that economic conditions will evolve in a manner that will warrant only gradual increases in the federal funds rate; the federal funds rate is likely to remain, for some time, below levels that are expected to prevail in the longer run. However, the actual path of the federal funds rate will depend on the economic outlook as informed by incoming data.


The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction, and it anticipates doing so until normalization of the level of the federal funds rate is well under way. This policy, by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable levels, should help maintain accommodative financial conditions.


Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; Charles L. Evans; Stanley Fischer; Jeffrey M. Lacker; Dennis P. Lockhart; Jerome H. Powell; Daniel K. Tarullo; and John C. Williams.

米FOMC声明全文 | Reuters

10月の連邦公開市場委員会(FOMC)以降に入手した情報は、経済活動が緩やかなペース(moderate pace)で拡大したことを示唆している。家計支出と企業の設備投資はここ数カ月間に確実な速度(solid rate)で増え、住宅部門は一段と改善した。しかし、純輸出は軟調だった。継続する就業者数の増加や失業率の低下を含め、最近の広範な労働市場の指標は一段の改善を示し、労働資源の活用不足が今年の初め以降、目に見えて減少した(has diminished appreciably)ことを裏付けている。インフレ率はエネルギー価格とエネルギー以外の輸入価格の下落を部分的に反映して、委員会の長期的な目標である2%を下回り続けた。将来のインフレを示す市場ベースの指標は低いまま(remain low)で、調査に基づいた長期的なインフレ期待の指標の一部はやや低下(edged down)した。


委員会は法律上与えられた責務に従って、雇用最大化と物価安定の促進を目指す。委員会は現在、金融政策の運営姿勢の緩やかな調整(gradual adjustments in the stance of monetary policy)により、経済活動が引き続き緩やかなペースで拡大し、労働市場の指標は引き続き力強さを増すと予測している。全般的に国内外の動向を考慮すると、委員会は経済活動と労働市場の両方の見通しにとってのリスクは安定しているとみている。インフレ率は、エネルギーや輸入価格の下落による一時的な影響が消え、労働市場がさらに力強さを増せば、中期的に2%に向かって上昇すると予想される。委員会は引き続きインフレ率の動向を監視する。


委員会は、今年に入って労働市場の状況は著しく改善(considerable improvement in labor market conditions)したと判断しており、インフレ率が中期的に2%の目標に向けて上がっていくとするだけの合理的な確信(is reasonably confident)がある。経済見通しを踏まえ、政策(policy actions)が将来の経済の結果(future economic outcomes)に影響を及ぼすまでにかかる時間を考慮に入れて、委員会はフェデラルファンド(FF)金利の目標誘導レンジを0・25―0・50%に引き上げることを決定した。今回の引き上げ後も金融政策の運営姿勢は引き続き緩和的で、それによって労働市場の状況の一段の改善と、2%のインフレへの回帰を支える。


FF金利の目標誘導レンジの将来的な調整の時期と規模(the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate)を決めるに当たり、委員会は目標にしている最大雇用と2%のインフレとの比較で経済状況の実績と見通し(realized and expected economic conditions)を評価する。この評価は、労働市場の状況に関する指標、インフレ圧力やインフレ期待の指標、金融動向や国際情勢の解釈を含む幅広い情報を考慮する。現時点でインフレ率が2%に届いていないことを考慮し、委員会はインフレ目標達成に向けた進捗と期待(actual and expected progress toward its inflation goal)を注視する。委員会は、経済状況はFF金利の緩やかな引き上げしか正当化しない形で進むと予測する(expects that economic conditions will evolve in a manner that will warrant only gradual increases in the federal funds rate)。FF金利は当面、長期的に到達すると見込まれる水準を下回るレベル(below levels that are expected to prevail in the longer run)で推移する可能性がある。ただ、FF金利の実際の道筋は、今後入手するデータがもたらす経済見通し次第である。


委員会は、保有する政府機関債とエージェンシー発行モーゲージ債(MBS)の償還元本をMBSに再投資し、米国債の償還金を新発債に再投資する既存の政策を維持する。そして、FF金利の水準が十分に正常化されるまで(until normalization of the level of the federal funds rate is well under way)、そうすると想定している。委員会による長期証券の保有を相当な水準で維持するこの政策は、金融環境を緩和的に保つ上で役立つはずだ。


政策決定の投票で賛成したのは、ジャネット・イエレン委員長、ウィリアム・ダドリー副委員長、ラエル・ブレイナード、チャールズ・エバンス、スタンレー・フィッシャー、ジェフリー・ラッカー、デニス・ロックハート、ジェローム・パウエル、ダニエル・タルーロとジョン・ウィリアムズの各委員。

FRB: Press Release--Federal Reserve Board and Federal Open Market Committee release economic projections from the December 15-16 FOMC meeting--December 16, 2015

イエレン米FRB議長の会見要旨 | Reuters

<利上げと回復>


利上げは、景気回復が続くというFOMCの自信を反映したものだ。景気回復に明らかな進展は見られたが、まだ完了していない。


労働市場の改善余地が残り、インフレもより長期の目標を下回り続けている。しかし、景気が順調で、今後もこうした傾向が続くとみられるなか、連邦公開市場委員会(FOMC)は、今回の利上げ後も金融政策スタンスは引き続き緩和的であるとの認識の上で、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標の緩やかな引き上げが現時点で適切と判断した。


<シクリカルなぜい弱さ残る>


11月の失業率は5%と、昨年末の水準から0.6%ポイント低下し、FOMC参加者による長期見通しの中央値に近付いた。求職断念者や不本意なパートタイム就業者などを含む、広義の失業率も確実に改善した。だがシクリカルなぜい弱さが一部残る公算が大きい。労働参加率は人口動態トレンドの予測を依然下回っている。不本意なパートタイム就業者も幾分高止まりしており、賃金の伸びもまだ持続的な拡大を示していない。


<経済見通し、リスクは安定>


委員会は現在、金融政策スタンスの緩やかな調整、および経済活動が緩やかなペースで拡大を続け、労働市場関連の指標が引き続き力強さを増すと想定している。


海外の動向がなお米経済成長へのリスクとなっているが、こうしたリスクは夏以降、低減したようだ。委員会は総じて、経済活動見通し、および労働市場に対するリスクは安定していると判断している。


<低インフレにもかかわらず利上げに踏み切った理由>


インフレが現在も低水準にとどまっているにもかかわらず、FOMCはなぜフェデラルファンド(FF)金利誘導目標を引き上げたのか。


これまでも言ってきた通り、インフレが現在軟調となっているのは大部分が一時要因によるもので、こうした要因は次第に後退していくと予想している。また、労働市場などのスラック(需給の緩み)の縮小によりインフレには上向き圧力がかかるはずだ。さらに、金融政策措置が将来の経済情勢に対し影響を及ぼし始めまで時間がかかるとわれわれは認識している。


FOMCが政策正常化を待ち過ぎれば、景気の過熱や、インフレ率がわれわれの目標を大きく超えて上昇することを防ぐために、ある時点で比較的急に政策を引き締める必要に迫られる可能性がある。


このような急な引き締めは、経済をリセッション(景気後退)に追いやるリスクを高める恐れがある。


<バランスシート規模を当面維持>


大規模な長期証券の保有を維持することで、緩和的な金融状況を維持する一助となり、また将来マイナスの衝撃が及んだ際に、フェデラルファンド(FF)金利を事実上の下限に戻すリスクを低下させる。


<利上げ開始のタイミング>


今回利上げを決めたのは、労働市場のさらなる改善、インフレ率が中期的に2%へ戻るとの合理的な確信という利上げの条件が満たされたと判断したためだ。


われわれは、海外経済によるリスクやこうしたリスクが長引くことを懸念していた。だが米経済はこれまで多大な力強さを示している。米経済の支出総額の85%を占める国内支出は引き続き持ちこたえ、確実なペースで拡大している。比較的ぜい弱な海外経済の成長やドル高を起因とする純輸出の足かせはあるが、総じて労働市場と経済の見通しに対するリスクは安定しているとみている。


<インフレ率と今後の利上げ>


インフレ率が確実にわれわれの想定通りに推移するよう、時間とともに実際の進展を監視する必要がある。追加利上げ前にインフレ率が2%に達するのを確認する必要はないが、われわれはインフレ動向について見通しを持っている。


だが想定通りに進展しない、または目標を下回っている状況が一時的ではなく、労働市場が引き締まっても変わらないなら、確実にわれわれは利上げを休止する。


われわれは最大雇用の目標達成までかなり近い状況にあると示唆してきた。だがインフレ率については目標を大きく下回っている。


原油価格とインフレについて>


原油価格の一段の下落に驚いている。ただ、物価への影響を払しょくするために、原油価格が上昇する必要はない。必要なのは原油価格の安定だ。


<利上げ後に政策転換が必要になる可能性について>


一部の中銀がいったん金利を引き上げ、その後金利を引き下げたことがあるのは事実だが、すべてのケースで政策のミスがあったわけではない。経済はショックに見舞われることがある。利上げした時は適切な判断だったが、その後条件が変わり、ショックに対応するため、政策の転換を迫られた場合もある。


中銀の行動が早すぎたケースがあることを否定するわけではない。我々はきょうの決定にあたり、そうしたリスクを検討し、そうしたリスクを慎重に秤にかけた。そのようなことが必要になるとは思わない。


新興国市場について>


新興国の政策当局に対しては、突然の予期しない政策変更に伴う波及効果を避けるため、できる限り明確なコミュニケーションを行うよう約束してきた。今回の措置は予想されており、うまくコミュニケーションされていたと思う。少なくともそう期待したい。


全般的に見て、多くの新興国は例えば1990年代よりも強さを増していると思う。一方で、ぜい弱な面もあり、非常に注意深く見守っていく。


<緩やかな利上げは低水準の中立的名目FF金利が理由>


FF金利は当面、長期的に見込まれる水準を下回る見通しだ。


この見方は、経済が潜在成長率に近い状況にあると仮定した場合に緩和的でも引き締め的でもないFF金利の水準と定義される、中立的な名目FF金利が現在、歴史的低水準にとどまっており、時間とともに緩やかに上昇していくとみられることと一致している。


中立的というのは政策目標ではなく、評価だ。経済が潜在成長率に近い状況だとして、この状況を維持する実質的な政策スタンスであり、短期金利の水準だ。米経済はまだこの状況とは言えないが、妥当に近い水準にある。


<利上げは自信を反映>


きょうの決定が米経済に対するFRBの信頼を反映していることに米国民はまず気づくだろう。労働市場は大幅に改善しており、地域や業界によって状況はまちまちであるものの、われわれは経済が持続可能な回復軌道にあるとみている。


<金融市場の底堅さ>


米金融システムは金融危機前と比べてかなり底堅いと言える。十分な資本を備えた銀行は企業向け融資を支援するのに良好な状況にある。


また、ここ数年間に多くの企業が利支払いを減らし、債務プロファイルを拡大してきた。このことは波及効果の軽減につながるとみているが、慎重に評価していく。


<成長に対するリスク>


下振れリスクには注意したい。ただ、消費者の置かれた金融環境はかなり健全になっている。彼らの所得見通しは改善した。多くの自動車購入が確認されている。住宅(市場)の回復は極めて緩やかだが、データは住宅投資の大幅な増加傾向を示唆するだろう。


個人的には緩やかな回復を中心的な予想としているが、上振れリスクは存在する。掘削活動の減少は投資支出を抑制してきたが、上振れリスクもある。


とりわけコモディティー価格が下落する中で、多くの国が非常に困難な(経済)調整や成長減速を経験している。一方、最近でも新興国市場の成長加速が確認されている。


<インフレ率の未達容認>


FRBはインフレ率の(目標)未達を容認してきた。未達は中期的に解消されると考えたからだ。FRBはこれまでにも、一時的との判断から、インフレ率のオーバーシュートを容認したことがある。ただし、インフレ動向を極めて注意深く監視する必要はある。エネルギー価格とドル相場が安定化すれば、インフレ率とコアインフレ率が上昇すると予想しているからだ。もしもFRBが想定する通りの展開にならない場合には当然、見通しを再考するとともに、適切な政策をとる必要がある。


<リセッションの可能性>


米経済の基調的な状況は、極めて堅調だと考えている。景気拡大は長引くなればいずれ失速する、というのは神話に過ぎない。経済が予想外のショックに見舞われ、リセッション(景気後退)に落ち込む可能性は、どんな年にもかなりある。その確率がどのくらいなのかは正確には知りようがないが、少なくとも10%といったところなのではないか。


<バランスシート政策>


われわれはいずれは、金融政策を効果的、かつ効率的に運営するのに必要と判断される規模まで、バランスシートを縮小する方針にある。


金融システムを取り巻く状況は、金融危機前から大きく変わっている。FRBは現在、FRBの長期的な運営フレームワークをどのようなものにすべきかについて、検討を重ねているところだ。そのため、今はまだ、効果的・効率的な運営に最適なバランスシートとはどのくらいの規模なのか、具体的に特定することはできない。危機前の極めて小さな規模よりは大きいのかもしれない。われわれはまだ、決定していない。


FRBはこれまで、再投資を減少もしくは完全に停止することによって、バランスシートの規模を段階的に縮小する見通し、と説明してきた。これ以上のことに関しては、再投資縮小のタイミングは経済と金融の情勢次第とだとする以外は、追加的なガイダンスは示していない。


<インフレモデルは最善>


多くのスタッフがインフレモデルを研究している。私も試みたが、彼らに対して謙虚にならざるを得ない。彼らが完璧だとは思わないが。われわれは一貫して機能していないモデルは使わない。常により良いモデルの開発に努めている。現在採用しているモデルより優れた別のモデルを私は知らない。


<賃金の伸び加速へ>


私は、労働市場の力強さが増す中で賃金の伸びが一段と加速すると期待している。そして、2%のインフレ目標の下で、賃金の伸びが加速する余地はこれまでよりも広がると考える。


賃金の伸びが加速している初期の兆候が一部で確認される可能性がある。すでに時間給は上向き、ここ数カ月で時間当たり平均賃金はやや上昇している。


私はこれを確かなトレンドと呼ぶことは控える。われわれは過去に期待を裏切られてきた。賃金の伸びに影響を及ぼす要因は多い。FRBの政策決定において、賃金の伸びはいかなる意味でも決定的な要因ではない。ただ、インフレ見通しとは関係がある。また、労働市場にどれほどのスラック(需給の緩み)が存在するかの評価にも関係する。

米FRB 利上げ決定 7年続いたゼロ金利政策を解除 NHKニュース

FRBは、16日まで2日間、ワシントンで金融政策を決める公開市場委員会を開き、終了後、声明を発表しました。
声明で、FRBは、アメリカの景気について「雇用が著しく改善し、物価上昇率も中期的に2%の目標に向かって上昇していくと確信できた」などと指摘し、ゼロ金利政策を解除し、利上げを始めることを全会一致で決めました。
これによって、現在ゼロから0.25%の幅の極めて低い水準に抑えてきた政策金利は、17日から0.25から0.5%の幅に引き上げられます。FRBが利上げを行うのは、2006年6月以来9年半ぶりです。
政策金利は、アメリカの金融機関どうしがお金を貸し借りする際の金利で住宅ローンや企業への融資などあらゆる金利に影響するため今後、さまざまな金利が緩やかに上昇していくと見られます。FRBは、2008年のいわゆるリーマンショックのあと7年間にわたって、金利を事実上ゼロに抑え、景気を下支えしてきましたが、今回、危機への対応は終了し、金融政策をいわば通常の状態に戻す段階に来たと判断しました。アメリカはこれで日本やヨーロッパに先んじて、異例の政策を転換することになりました。
ただ、FRBは、声明で「このあとの景気の改善には、極めてゆっくりとした利上げが必要になっている」などと指摘し、景気の回復の勢いを損なうことがないよう、当面、金利は低めに抑え、利上げは慎重に、ゆっくり進めることを強調しました。
これに関連してFRBが公表した、今後の金利の見通しでは、来年末まで、8回ある会合のうち、4回程度で利上げを行って、1.25から1.5%程度の幅まで、利上げを進めることが会合参加者の中心的な見方になっていて、過去に行った利上げに比べるとゆっくり進める考えが示されています。

会合を終えて記者会見したFRBのイエレン議長は、「今回の決定は、大恐慌以来、最悪の金融危機と不況から経済が立ち直るのを支援するため7年に及んだ異例のゼロ金利政策を終えることを意味している。雇用の回復や賃金の上昇で大勢のアメリカ人の暮らしに著しい改善があり、景気が力強く回復を続けていくというFRBの自信を反映したものだ」と述べました。
一方で、今後の利上げの進め方について、イエレン議長は、「景気は順調に拡大していくと見込んでいるが、金利の引き上げは小幅に進めることが現時点では望ましいと考えている。今回、金利を上げたがFRBの金融政策は引き続き、緩和の姿勢に変わりない」と述べ、景気に十分配慮して、ゆっくりと利上げを進めていく姿勢を強調しました。
また、利上げをきっかけに、世界の資金の流れが変わり、新興国の経済に打撃になるのではないかという懸念が根強いことについて、イエレン議長は「今回の利上げは、新興国でも織り込まれていたと思っている。確かに資金の流出などマイナスの影響が及ぶ可能性はあるが、同時にアメリカ経済の回復の恩恵も及ぶ。打撃を与えないよう注意している」と述べました。

FRBが7年間続けたゼロ金利政策の解除を決めたのは、景気が、順調に回復を続けていくと先行きに自信を深めたためです。


特にFRBが重視する雇用情勢の改善が鮮明です。一時10%に跳ね上がった失業率は、先月までに5%ちょうどに下がり、FRBの目標とする水準にまですでに改善しました。またリーマンショック以降の不況でアメリカでは870万人の職が失われましたが、2010年2月を底に増加に転じ先月までに1300万人以上職が増え、失われた分を上回る雇用が産み出されています。


また賃金の伸び率も、1年前にくらべ2%余り伸び、増加基調を続けています。伸び率は、力強いとまではいえないものの、建設業や技能を持つ専門職の分野で人材確保のために賃金を引き上げる動きも広がり始めています。


個人消費も回復しています。特に好調なのが自動車販売で2009年に1040万台まで落ち込みましたが年間の新車の販売台数はことしは14年ぶりに1700万台に達する見込みです。


ニューヨーク株式市場のダウ平均株価は、2009年3月に6547ドルまで値下がりしましたが、FRBの金融緩和で大量のお金が流れ込み、ことし5月には、1万8312ドルの最高値をつけました。最近も1万7000ドル台で取り引きされています。こうした指標の改善を踏まえ、FRBは、7年間、危機対応として続けてきたゼロ金利政策を解除する条件が整ったと判断しました。


一方、FRBが、雇用と共に重視する物価は2%の上昇率が目標になっていますが、原油価格の値下がりや最近のドル高で輸入品の価格が下がり、足元の上昇率は0.2%に低迷しています。FRBは物価も、いずれ目標に向かって上昇していくと見ていますが、達成には時間がかかりそうです。

FRBの7年間に及ぶ異例の政策で大量のドルが世界の金融市場に行き渡り、各国での投資や企業の借り入れなどにも活用されました。それだけにこれまでアメリカから世界に向かっていたお金がFRBの利上げにより逆流をはじめることで、さまざまな影響が懸念されてきました。特に、巨額の経常赤字を抱える新興国で資金の流出に拍車がかかり通貨安や、株式市場が混乱するおそれも指摘されています。


外国為替市場では、金利が上がるアメリカのドルが買われドルはすでに12年半ぶりの水準に高騰しています。ヨーロッパや日本で金融緩和が長期化するなか、アメリカだけが利上げに向かい金融政策の方向性がばらばらになることで、ドル高がさらに加速する可能性があります。
新興国の企業にはドルで借金を膨らませてきたところも多く、ドル建ての債務の総額はおよそ4兆ドルに達しています。ドル高と金利の上昇で借金の返済負担が重くなって行き詰まる恐れも指摘されます。IMF国際通貨基金世界銀行などの国際機関は、中国経済の減速や資源価格の下落で新興国を取り巻く状況がただでさえ不透明感になっているところに利上げが重なれば、深刻な打撃になりかねないと慎重な対応を要請しています。


一方、急速なドル高は、アメリカにとってもマイナスの影響を及ぼします。アメリカの製造業ではドル高で輸出が落ち込んで業績が悪化し、雇用の削減などのリストラを迫られる企業も出ています。アメリカ経済が減速するようなことになれば、今後の利上げそのものを見直さざるを得なくなる事態も考えられ、FRBもドル高をリスクの1つとして影響を注視しています。