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ハーバード大学は「音楽」で人を育てる――アメリカのトップ大学が取り組むリベラルアーツ教育 - 菅野恵理子 / 音楽ジャーナリスト

音楽や芸術は人間の営みから生まれ、人の感情や思考が刻み込まれたものである。だから音楽を学ぶことは人文学でもある。そのことをよく表しているのがアメリカの大学だ。ほとんどの大学に音楽学科または音楽学校があり、音楽を専門的に学ぶ学生だけでなく、幅広い学問分野に触れる1・2年次に教養科目として音楽を履修することもできる。

「医学部大学院に進学するためには相当量の勉強が必要なので、勉強漬けの毎日のように見えるかもしれませんが、バランスの良さも大事だと思っています。アメリカの大学では勉強以外の課外活動も重視されています。大学のアドミッションが「バランスの良さ」や「多様な課外活動」を重視してくれたおかげで、高校時代に勉強以外のことにも打ち込むことができました。私は音楽に出会えてほんとうに幸運だと思います。将来は健康で、ものごとをよく知っていて、趣味や特技の多い人になりたいです。ですから身体のエクササイズ、勉強、フルート、ピアノ、歌の練習は欠かしません。それはすべて将来なりたい自分につながっています」

教養としての音楽は、古代ギリシアまで遡る。紀元前8世紀の古代ギリシア数学者ピタゴラスは、音程、つまり音と音の高低差が極めて簡潔な周波数比で成り立っていることを発見した。たとえば8度の周波数は1:2、4度は2:3という具合に。このような発見を通じて、世界には美しく調和する原理原則が存在し、それらは数で表現できると考えたのである。


紀元前5世紀の哲学者プラトンが創設した学園アカデメイアでは、この考えを継承し、音楽を数学の一環として教えるようになった。さらに時代を経て、教養とされる学修科目は七科目に収斂・集約されていった。言語に関する三教科(文法、修辞学、論理学)、数学に関する四教科(算術、幾何学天文学、音楽)である。これを自由七科、すなわちリベラルアーツという。


ここでいう音楽とは、「調和(ハルモニア)」の理論である。古代ローマ帝国が滅亡する5世紀頃、世界観が大きく変わる混乱の最中に、音楽を含むリベラルアーツが形を成していったことは偶然ではないだろう。そしてキリスト教の広まりとともに、修道院等を通じてリベラルアーツ教育も広まっていった。それが中世の大学で教養課程となる。


19世紀になると音楽は数学の一環としてではなく、芸術として、また人文学として教えられるようになっていく。この流れに先鞭をつけたのはドイツで、当時啓蒙思想や科学の進歩による近代化が進み、「人間そのものや人間の活動」が学びの対象になりつつあった。調性音楽が発展しはじめたのもこの頃である。


J.S.バッハを研究していた音楽学者J.N.フォルケルが、18世紀後半にゲッティンゲン大学で音楽を教え始め、ベルリン大学なども追随した。そしてドイツからアメリカへ最新カリキュラムとともに音楽教育も伝承され、全米最古の大学ハーバードで音楽が教えられるようになったのである。ハーバードの音楽学科も、「人文学部の中の音楽」という位置づけで始まり、それが全米に普及して今日に至る。そしてその中から、世界的に活躍する専門家も育っている。

では21世紀におけるリベラルアーツとは何だろうか? 今は知識を多く持つだけでなく、知識をどう生かすかがテーマとなる。

スタンフォード大学では音楽、映画、絵画、彫刻、文学などの芸術作品を通じて、「人はなぜそのように考え、表現したのか」「それが社会にどのような影響を与えたのか」などを、歴史的・社会学的・哲学的視点から学ぶ。答えはただ一つではなく、他人から与えられるものでもない。自ら世界に問いかけ、探究してほしい−そのような考え方が背景にある。

ハーバード大学では約3分の2の学部生が楽器を演奏でき、さらに自分がもつ能力や資源を社会に還元していくことも意識されている。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20151115#1447584217
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