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2016年の米大統領選、危険を冒さない−マイケル・ブルームバーグ - Bloomberg

米国民は現在、われわれが共有する価値と国家の約束を守るための重大な試練に直面している。


国内の賃金の伸び停滞と、海外での影響力低下によって、米国民は怒りを抱き不満を抱えている。しかし、ワシントンで目にするのは行き詰まり状態と非難の応酬だけだ。


さらに悪いことには、大統領選の候補指名獲得を争う候補者らは解決策の代わりにスケープゴート(いけにえの羊)を掲げ、実現不可能な成果を約束している。ワシントンの機能を損なっている党派心の熱をどのように下げるかを説明するのではなく、機能障害を悪化させている。


多くの米国民はこの現状に当然失望し、私も彼らの懸念を共有する。民主党の有力候補らは、貿易やチャータースクール、赤字削減、金融セクターへの支援という、ビル・クリントン元大統領の下で成長や機会を促した諸施策を攻撃している。一方、共和党有力候補らは、移民制度改革、税制・給付金制度改革をめぐる妥協、超党派予算への支持を含む、ロナルド・レーガン元大統領の下で成長や機会を促した政策を攻撃している。両元大統領はイデオロギーの純粋主義者ではなく、問題解決者だった。そして両氏とも国家を重要な方法で前進させた。


過去数カ月間、多くの米国民が無所属の候補として大統領選に出馬するよう私に呼び掛け、既存の候補らをよく思わない一部の人々は、私が出馬することが愛国的な責務だと説いた。私は彼らの訴えに感謝し、真剣に検討した。投票アクセスの要件を踏まえると、その回答の期限は今だ。


私は両親から「報いること」の重要性を教えられ、公職は私の人生の重要な一部分だ。ニューヨーク市長を12年間務めたことで、私は選挙運動や選出公職に伴う個人的犠牲を承知しており、愛する祖国を助けるためなら、再び喜んでそうした犠牲を払うだろう。


私は常に不可能といえる挑戦に引き付けられてきた。そして現在、ワシントンでの党派対立を終わらせ、ロビイストや選挙運動の献金者のためではなく米国民のために政府が働くようにすることほど偉大で重要な課題はない。こうした変革をもたらすには、再選を果たすよりも結果を出すことに重点を置き、中小企業を興して雇用を創出した経験を持ち、予算均衡化の方策を理解して大きな組織を管理し、特定の利益にとらわれず、いたる所で市民に誠実な指導者らを選出する必要がある。私がそのような指導力を発揮できると一部の人々が考えてくれたことを光栄に思う。


だがデータを調べた結果、仮に私が大統領選に出馬した場合、勝ち目がないことがはっきりした。幾つかの州で勝利を収めることはできると確信するが、大統領選に勝利するのに必要な270の選挙人票を確保するには不十分だろう。


三つどもえの選挙戦となれば、どの候補も過半数の選挙人票を確保することができず、大統領選出の権限は米国民から取り上げられ、議会に与えられることになる。議員の大半は各党の候補者に投票すると想定されるため、たとえ私が最も多くの得票数と選挙人票を得たとしても、当選できる可能性は極めて小さい。米国民や選挙人ではなく、議会内の特定党の支持者が次の大統領を選出することになるのだ。


選挙戦の現状を見ると、共和党が上下両院で過半数を占める中で私が出馬すれば、ドナルド・トランプ氏、テッド・クルーズ上院議員のいずれかの当選につながる公算が大きい。それは私が自分の良心に照らして取ることのできるリスクではない。


トランプ氏は長年の知り合いであり、常に友人として付き合ってきた。(トランプ氏が司会を務めたテレビ番組)「アプレンティス」出演に2回応じたことさえある。しかし、彼は私が記憶する限りで最も不和を生じさせ、扇動的な選挙運動を展開し、人々の偏見や不安を食い物にしている。共和党の父祖であるエイブラハム・リンカーン元大統領はわれわれの「より良き天使」に訴えたが、トランプ氏はわれわれの最悪の衝動に働き掛けている。


海外からのイスラム教徒の入国を禁止すると脅すのは、宗教的寛容と政教分離という、米国建国の基本的価値観の2つを直接攻撃するものだ。何百万人ものメキシコ人を攻撃して国外退去を約束することや、白人至上主義者について知らないふりをすること、日本や中国に貿易戦争の脅しをかけること。これらも全て危険な誤りだ。そうした動きは米国内を分断し、世界全体ではわが国の道義的指導力を損なう。最終的にはわが国の敵をつけあがらせ、米国の同盟国の安全保障を脅威にさらし、米国の軍人を一段と危険な目に遭わせる。


移民問題をめぐるクルーズ上院議員の迎合的言動はトランプ氏のような大げさな行き過ぎではないかもしれないが、それでもなお過激だ。信仰に基づいて外国人を排斥することにクルーズ氏が反対せずにいるのは、トランプ氏の姿勢よりも仰々しくないとしても、やはり対立を生じさせる。


まず第一にわが国を世界で最も偉大な国とした価値観に背を向けることで、「米国を再び偉大にする」ことはできない。私は母国をこの上なく愛しており、われわれの団結を弱めて未来を暗くするような候補を選ぶのに一役買うわけにはいかない。だからこそ私は米大統領選には出馬しない。


だからといって、党派的な過激主義がわが国に及ぼす脅威に、私は沈黙したままではいない。私はどの候補も支持する用意はないが、対立を招く訴えを退けるよう全ての有権者に今後も呼び掛けるとともに、対立を解消して問題を解決し、われわれにふさわしい誠実で能力を備えた政府を持てるよう、賢明かつ具体的で現実的なアイデアの提示を候補らに求め続ける。


ほとんどの米国民にとって、市民権確保に必要なのは納税義務の履行程度だろう。だが、多くの人々がわが国を守るため命をささげてきた。われわれには皆、リンカーン元大統領が語ったように、「世界で最後の最善の希望」を表す主義主張のために、有権者として立ち上がる責務がある。私自身がそのように振る舞っていると希望し、祈っている。

The Risk I Will Not Take - Bloomberg View