多様性ばかり追求して、本当に会社は成り立つんですか? 大学生が「100人100通りの働き方」を掲げる社長に聞く
ビジョンを伴わない多様性は、ただのカオス!
はじめに、なんでサイボウズが多様性の考え方に行きついたかを話すと、昔一時期、離職率がすごく高かったんですよ。これをなんとか引き下げるためには、みんなに「ここで働きたい」というモチベーションを持ち続けてもらえるように、「100人100通り」の働き方を実現する必要があると考えた。つまり「多様性」の考え方が必要だと気づいたわけです。
でも、多様なだけだと、ただのカオスになってしまう。多様性がある組織を作ったときに一番大事なのは、「みんなが共感するビジョンがあること」なんです。
たとえば、「少林サッカー」でもなんでもいいんですけど、スポーツ映画なんかで、個性的なプレイヤーがいっぱいいる。最初はなんにもまとまらないわけです。
ところがある日、みんなが「勝とう」と思う瞬間がくる。「次の大会は、絶対勝とう」っていうひとつのビジョンにみんなが向かった瞬間、それぞれの個性というものが強みに変わるんですよね。
それぞれが個性を生かした役割分担で、お互いをカバーしあいながら、突き進んでいける。それが、一番大事なところ。
サイボウズではそのビジョンを、「グループウェアで世界一の会社にする」という一点に絞り切ったんです。つまり、このビジョンに共感する人だけ残ってくださいということ。これに共感する人しか、この会社に入ってこない、ということでもあります。
この強いビジョンがあれば、人が多様であっても、いろんな役割を果たしていくことができる。みんなに共感してもらえる柱となるようなビジョンを、いかにして作り、持ち続けるのか。基本的には、それがすべてだと思ってます。
ところがね、日本の企業にはそういうビジョンがないんですよ。たとえば大企業で、「来年の売り上げを5兆円にする」なんていうビジョンを掲げても、共感しないなあと思う。5兆円になったところで、何がおもしろいのかよくわからないですよね。こういうのが、弱いビジョンです。
小さい企業でも同じです、規模とはあまり関係がない。 夫婦だって「幸せな家庭を築こう」みたいな共通のビジョンがなくなったら、すぐバラバラになりますよね。2人しかいないのに。
大事なのは「共感できるビジョンがあるかどうか」ということ。徹底的なビジョンマネジメントこそが、必要です。
そのことに、頭のいい経営者は気づき始めています。 たとえばユニクロさんも、最近は「地域限定社員」や「週休3日制」を打ち出している。リクルートさんもいまは、「全員在宅勤務」の制度なんかも取り入れています。
そんなふうに、頭を切り替えられる会社は生き残っていく。他方で、それができないところ、長時間労働・男性中心みたいな価値観だけでやっているところは、残念ながら先細りになっていくでしょうね。今、ちょうどその変革期にきていると思います。
これはね、けっこう難しいです。「多様性を尊重しますよ」というと、どんな人とでも仲良くしないといけないと思いがちなんですけれど、そんなこともない。合わない人と、無理に仲良くする必要はないと思うんです。
だからといって、攻撃する必要もないんですよね。自分がその人の考えを気に入らないからといって、暴力を振るったり、言葉で攻撃したりしてしまうと、相手の反感を買ってしまうわけです。すると、相手から暴力を振るわれたり、批判を受けたり、反撃されることになる。これって、あんまり生産的じゃないよね?
多様性がある社会がうまくいくのには、お互いが違うことを認識して、自分が好きなようにするんですけれど、自分と違う人を排除する必要はないということ。そういう人はそういう人として、共存できる道を探していくと。
それはもちろん暴力によってではなくて、議論や話し合いによって解決していくことが必要じゃないかな、と思います。
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20110327#1301236717
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20080107#1199945158
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