しかし、このような二世、三世経営者は、経営について何もわかっていません。
私がそうした人たちに、「あなたはどのように経営しているのですか」と質問しますと、「父が昔開拓したお得意先があります。そこから注文がきて、売上が上がるのです」という答えが返ってきます。
次に、「今はどのくらいの利益が出ているのですか」と聞くと、「少ししか出ていませんが、うちはずっとそういう状況です」と答えます。さらに、「その利益はどうして出るようになったのですか」と聞きますと、「それは知りません。父の代からそうなっています」と答えるのです。
このように、どうすれば売上が増やせるのか、どうすれば利益が出せるのかという根本的なことを、ほとんどの二世、三世経営者が知らないのです。
そしてとうとう、お父さんが亡くなります。息子は後を継いでから、ずっと経営の根本を知らないまま、お父さんの築いてきた土台の上で、ただあぐらをかいていたに過ぎませんので、数年もすると、会社がガタガタになります。倒産という悲劇に追い込まれることもあります。経営の根本を知らないために、そのようなことが起きてしまうわけです。
私はそのような事例を多く見かけているうちに、「彼らに経営の原点を教えてあげなければならない」と思うようになりました。経営とはどのようなものなのか。実際には泥臭いものです。それを教えてあげなければ、いくら高等な学問を修めても意味がありません。