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日本人はなぜ目的と手段を混同するのか?太平洋戦争の敗戦から学ぶこれからの戦い方|戦略は歴史から学べ|ダイヤモンド・オンライン

日本軍は新たな戦略を生み出す一方で、効果の消えた古い戦略を新たな戦略に差し替えることが苦手。米軍は日本軍の戦略を破壊するイノベーションを狙い続けて戦局を急速に転換させていった。

【法則13】手段ではなく、目的を正しく追い続けた組織が勝つ

マレー沖海戦では、英軍の戦艦プリンス・オブ・ウェールズを航空機で撃沈。しかし、初期の戦勝で見落とされた教訓に、敵の位置を先に(そして正確に)発見することの決定的優位がありました。英軍の戦艦のレーダー性能がまだ低く、日本軍は潜水艦と偵察機、哨戒機で敵部隊の位置を比較的早く発見できていました。


 相手より早くか同じタイミングで敵を認識できれば、日本軍の精度の高い射撃が効果を発揮します。しかし「敵を早く発見すること」は勝因として追求されず「攻撃(特に航空機)の効果」を日本軍が過剰に認識したことが、太平洋の大惨敗につながります。レーダーと通信傍受で米軍が完全に待ち構えた状態に何度も決戦を挑んだからです。


 米軍は開戦時には日本の外務省暗号を、4ヵ月後には海軍の暗号を解読していました。1942年6月のミッドウェー海戦は、作戦計画が筒抜けで大敗北。同盟国ドイツが暗号解読の懸念を伝えるも、日本軍は根拠なくそれを否定してさらに大きな敗因となります。

 太平洋における日米の主な戦闘には、次のようなものがあります。


・ 珊瑚海海戦(1942年5月)日本軍の熟練パイロットが多数戦死も敵空母撃沈
ミッドウェー海戦(1942年6月)正規空母四隻を失う大敗北
ガダルカナル島作戦(ソロモン海戦)段階的に日米軍の均衡が破れていく
マリアナ沖海戦(1944年6月)レーダーと対空砲火で日本軍が一方的に敗北
レイテ沖海戦(1944年10月)日本海軍は壊滅、組織戦闘力を完全に失う


 戦局が米軍有利に大きく傾いた、3つの要因をあげてみます。


(1)悲観的なトップを交替させて、組織の戦略転換をすばやく実施した
 米軍はガダルカナル島作戦で、日本の戦闘機を怖れて空母で逃げ続けるゴームレー中将を解任。勇猛果敢なウィリアム・ハルゼー中将に指揮官を交替させます。日本軍は肩書が上位の人物を敗北でも更迭できず、彼らの指揮でさらに失敗を重ねます。


(2)レーダーの発達により、日本軍の奇襲効果はゼロ以下になった
 珊瑚海海戦から米軍はレーダーを配備。夕闇の日本軍航空機の“奇襲”に逆に大きな損害を与えます。ミッドウェー海戦では米軍機はあらかじめ基地から退避しており、日本軍の奇襲攻撃は米軍のレーダーで完膚なきまでに撃退されました。


(3)当たらなくとも撃墜できるVT信管で、一方的な勝利が加速した
 射撃の精度を徹底追求した日本軍。一方の米軍は砲弾が敵機に近づくだけで炸裂するVT信管を開発。マリアナ沖海戦以降の対空防禦に使用され、撃墜率の飛躍的な向上に成功。射撃精度にこだわることが意味を失い、日本軍の航空優位はさらに低下します。米軍は戦略を差し替えるため人事を断行し、日本軍はずるずると敗北を続けたのです。

 ビジネスでも、経験則で物事を判断すると既成概念に進化を阻まれることがあります。このような壁を取り払うためJTBD(Jobs to be Done)という概念があります。


「ほとんどの企業は(中略)市場をセグメントし、提供する製品やサービスに特徴や機能を加えて差別化している。しかし、顧客は市場について異なる見方をしている。顧客にはただ片づけるべきジョブがあり、それを行うのに最も良い製品やサービスを『雇おう』としているだけなのだ」(デヴィッド・シルバースタイン他『発想を事業化するイノベーション・ツールキット』より)


 同書に紹介されている、JTBDを利用した解決策の新旧の対比を紹介しておきます。


例1 薬を投与する=解決策(旧:錠剤と注射、新:皮膚用パッチ剤)
例2 夜間に敵を発見する=解決策(旧:照明弾、新:暗視装置)
例3 窓をきれいに保つ=解決策(旧:窓掃除をする、新:自己洗浄ガラス)
例4 情報を探す=解決策(旧:図書館、新:インターネット)


片づけるべきジョブが本当は何であるかを考察することで、既存の手段から上手く離れて目標達成への発想を飛躍させることが可能になります。


「JTBDについて何か覚えておくとすれば(中略)JTBDは、特定のソリューション(製品やサービス)にはまったくこだわらない。顧客のJTBDは時間がたってもあまり変わらないが、製品やサービスは、つねに提供する価値を高めながら戦略的な周期で変わっていくべきだ」(前出書より)