3時間でマンガを1万冊売る方法 佐渡島庸平(コルク代表)×三木一馬(元電撃文庫編集長)対談 その1|ぼくらの仮説が世界をつくる|ダイヤモンド・オンライン
できる作家は、お客さんの反応を見て自在に話を変える
僕が安野さんの代わりに、企画の是非を決断するときがありますが、それは友達として仲が良いからではなくて、作品を深く読み込んでいるからできることなんです。
その関係性は、安野さんだけでなく、他のすべての作家さんでも同じです。
同じ漫画を繰り返し読んでいく中で、新しい発見を何度もしていく。気がつくと、作家の思考がちょっとだけこちらに乗り移ってきます。そういう読み方をして作家よりも作品に詳しくなることが、編集のやることだって僕は思っていますが、同じ感覚の人はなかなかいなくて、三木さんはジャンルは違うけど、作家との関係性が同じだ! と思いました。
美容院が絶対的に正しい場所というわけではなく、作品ごとに送り場所は違うと思います。ただ、でも正しい場所でPRすると、全く結果が違うのだということを最近、実感しました。投資に興味がある人たちが集まっているサイトでインベスターZを限定販売することにしたんです。三田さんのサイン入りを、1000セット。11巻なんで、1万1000冊を売ることになりました。
3時間で1万1000冊、現実の場で売るって無理じゃないですか。だから正しいコミュニティに届けるっていうのは、すごく正しい営業活動なんだと思いました。もっともっとこういう事例を増やしていきたいし、リアルでもネットでも、こういうことはたくさんできると思っています。
独立すると、仕事がさらに楽しくなりますよ。作家エージェント業が、日本に増えていく方が、作家にとってもいいし、エンターテイメント全体の仕組みも良くなると僕は思っています。
なので、三木さんのようなトップの編集者が、エージェントとなり、作家側の立場で仕組みづくりをする会社が誕生するのは、コルクにとっても心強いです。今年、聞いたニュースの中でもだんとつにうれしいニュースです!
作家は魂を削って作品を創り上げています。その魂の作品に寄り添い、より“面白いほう”を目指して作りあげたコンテンツを、『作品第一主義』で考え、より適合したベストなパートナー、ベストな宣伝施策、ベストなファンサービスを……と考えていると、どうしても出版社社員であるとできないこともあるのは事実で、この決断に至りました。もちろん、出版社内でないと、できないこともたくさんあるんですけど。