https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

渋滞はなぜ起こる?東大教授が解明した「渋滞を解決する方法」

土屋:先生、「起きなくてもいい渋滞」ってどういうものなんですか?


西成:例えば、数年前に起きた東名高速の40キロ渋滞。この原因は、たった一台の追い越し車線への割り込みが原因だったことが分かっています。この車が無理矢理割り込んだ時に、追い越し車線の車がブレーキを踏んで、それが結果として40キロの渋滞になったんです。その人が割り込まずに我慢できていれば、渋滞は起きなかったかもしれない。


土屋:急ブレーキで1台の車が4秒遅れたとすると、後続の車も4秒だけ遅れるだけのような気もしますが。


西成:そこが最大のポイントです。ロボットだったらそのまま4秒遅れでいけるんですが、人間は「認知・判断・行動」という3つの段階を踏むんです。


まず「前が空いてる」って認知しますね、それから「俺はどうするんだ?」「いける」って判断しますね。それから行動する。これで人間は1秒くらいかかります。


それを走っている車みんながやってみてください、どんどん遅れていく。認知・判断・行動が早い人でも0.5秒、遅い人は5秒と言われています。


土屋:割り込みした人は、その場では1、2秒だと思ってやってるけど、実はその後ろで…。


西成:そうです、大混乱を起こしているんです。


その上、混んでくるとみんな早く前に行きたいから車間距離を詰めるんですね、それも、「前の車は急にブレーキ踏まないだろう」と思って詰めるんです。そういう根拠のない信頼関係で車列が結ばれているのですが、前の車がいつブレーキ踏むかなんてわからないじゃないですか。それが踏まれた時に大事故、大渋滞が発生します。


東名高速20キロ渋滞」なんて聞くと「車がだんだん溜まって20キロになったんだな」と思うんですが、そうじゃない。渋滞のできる場所に定点カメラを仕掛けて調べたところ、10キロ、20キロの渋滞ならあっという間にできるんです。


土屋:あっという間に!


西成:高速道路のところどころに車間距離を詰めた車の列ができはじめます。それが渋滞の前兆。車間距離を詰めてるからわりとみなさん緊迫していて、そこに誰かがちょっと割り込んだり、坂道でブレーキを踏んだりすると、あっという間に遅れが後ろに伝わって、渋滞になるんです。


土屋:自分の後ろが詰まっていて前が空いていると、「後ろが詰まってるからもうちょっと前に詰めなくちゃ」と思うんですが。


西成:実はそれが渋滞化を加速させちゃうんです。車間距離が詰まっていると誰かがブレーキを踏むと全員がかぶっちゃう。逆に車間距離をあけていれば、前の車がブレーキを踏んでも関係ないですよね。この車はブレーキのバトンを伝えない。だから、渋滞というのは「ブレーキのバトンをみんなで伝え合うゲーム」なんですね。


土屋:!!(絶句)


西成:ブレーキのバトンを伝えなきゃいいんです。そのためには車間距離を開けておけばいいだけ。


土屋:ってことは、勇気を持って全員が車間距離を意識すれば…。


西成:全員が意識すると、今度は間延びしちゃうんですね(笑)。だから詰めている人もいていいんです。その中に1台だけあけてる車がいれば、その車間距離でそれより前の渋滞を消しているかもしれない。


土屋:………ほうほうほう。


西成:これ、一般道で考えるとわかりやすいんですが、ちょっと先の信号が赤だったらどうしますか。燃費の観点からも考えてください。


土屋:絶対に減速しますね。


西成:おっしゃる通り。早く行きたいからといって赤信号直前まで加速して止まって、また信号が青になったら加速して…そんなの非効率的ですよね。前方の赤信号がわかったら、ちょっとゆっくり行けばそのうち青信号になり、止まらずにいける。これが燃費のいい走り。


渋滞もこれと同じなんです。渋滞で止まってる車は赤信号だと思って、目の前に「渋滞発生」という看板をみたら、ゆっくり行けばいいんです。そうすれば止まらずに燃費もよくいける。どうせ止まるんです、みんなのためだと思って、勇気を持ってゆっくり走ってください。

土屋:車間距離を空ける以外に、一人一人ができることはありますか?


西成:車の動きに素早く反応することです。目の前の車が加減速しますよね。それに対して後ろの車がトロトロついていくと渋滞を長くしちゃう。


例えば、渋滞から抜ける時を考えましょう。前の車が走り始めたら、車間距離があいてから加速しはじめる人がいるんですが、これは逆なんです。


渋滞から抜け出る時は、3台ぐらい先をみて連結列車のようになるべく早く走りはじめてください。スローイン、ファストアウト」と言っているんですが、これが個人でやるべき最も大事なこと。渋滞を見たら車間距離をあけてゆっくり入って、終わったら連結列車のように素早く出る。適切な車間距離と短い反応時間、それが科学的には究極の渋滞解消方法です。

西成:ファストアウトに関しては、高級車に乗ってる方はご存知だと思いますが、ACCという機能があるんです。車をよく見ていただくと「ACC」というボタンがついているはずです。これは「アダプティブ・クルーズ・コントロール」と言いまして、押すと前の車にロックオンして自動運転してくれる機能です。もちろん車線変更はできませんが、アクセルを離しても前の車がゆっくりになったら減速するになるし、速くなったら加速する。


これがあると人間より速く動いてくれる。人間は認知・判断・行動で1秒くらいかかりますが、機械だと0.5秒以内でできますから。「ACC」を押していただくと、実はかなり渋滞が解消されるんですね。それが自動運転になるともっと究極ですから、渋滞を先頭から削る部分に関してはかなり速くなる。ACCの普及率が今1%くらいなので、「渋滞にはまったらACC」と、もっと宣伝して普及すれば変わると思いますよ。

土屋:最後に。あらゆる渋滞をなくすためには、どういう気持ちが大事なんでしょうか。


西成:結局、思いやり、譲り合いです。みんなで「我先に」と押し寄せるか「どうぞどうぞ」って譲り合っていくか、一度50人くらいで実験してみるといいですよ。譲り合ったほうが早く行けますから。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160811#1470911862