https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

21世紀、これからの哲学はどこに向かうのか|いま世界の哲学者が考えていること|ダイヤモンド・オンライン

急ぎ足で20世紀後半の哲学的な変化を見てきましたが、もう少し広い文脈で理解するようにしましょう。そこで注目したいのが、リチャード・ローティ「言語論的転回」という言葉です。それが意味するのは、19世紀末から20世紀初頭にかけて引き起こされた哲学上の転換です。


まず、言語論的転回が20世紀に起こったとするならば、それ以前をどう表現すればいいのか、考えてみましょう。それについては、大よそのコンセンサスができていて、表現としては「認識(知識)論的転回」と呼ばれています。近代哲学は通常、デカルトに始まる大陸系の合理論とロックやヒュームからのイギリス経験論に分けられますが、このいずれも主観と客観の関係にもとづいた「意識」の分析に集中します。


こうした問題設定が、「認識論的転回」という言葉によって表現されています。17世紀の認識論的転回以後、近代哲学が数百年続きましたが、19世紀末頃から20世紀初めにかけて、言語論的転回が引き起こされたのです。こうして、主観‐客観関係における「意識」ではなく、むしろ「言語」を分析することが、哲学の主要なテーマとなりました。


20世紀の後半において、英米では分析哲学が展開され、フランスでは構造主義ポスト構造主義が流行し、ドイツでは解釈学やコミュニケーション理論などが提唱されましたが、それらは総じて言語論的転回の一環として理解されることになります。

20世紀の哲学を「言語論的転回」として理解するとき、確認しておきたいのは、1970年代以降世界的に流行したポストモダン思想との関係です。「ポストモダン」というのは、もともと建築の分野で始まりましたが、その後、文化全体の新たな運動として、時代的な潮流となりました。


哲学的に「ポストモダン」を定式化したのは、ジャン・フランソワ・リオタールの『ポスト・モダンの条件』(1979年)です。彼はポストモダンを「(モダンの)大きな物語に対する不信」と規定しましたが、そこで大きな物語と呼ばれたのは、万人が認めるような真理や規範を指しています。たしかに、現代人は、こうした真理や規範を、もはや信じているようには見えません。


それに代わって、リオタールがポストモダンとして提唱したのが、小さな集団の異なる「言語ゲーム」でした。他とは違う「小さな物語」を着想し、多様な方向へ分裂・差異化することが、ポストモダンの流儀となりました。こうして、ポストモダン思想が、20世紀の言語論的転回と結びつくことになります。


言語論的転回では、極端に言えば、(1)「言語によって世界が構築される」と見なされます。これは、一般に「言語構築主義と呼ばれる立場です。この考えを代表するものとして、ジャック・デリダの表現「テクストの外には何もない」(『グラマトロジーについて』)がしばしば引用されます。
また、「言語構築主義」とともに、ポストモダン思想は、(2)「異なる言語ゲームは共約不可能である」と考えています。言語によって現実が構築されるとすれば、言語が異なるとき、現実も違ってくるのは当然でしょう。そのため、ポストモダンは、他の立場との「差異」を強調し、ついにはいずれの主張も優劣がつけられないという相対主義へと到るわけです。


(1)言語構築主義と(2)相対主義を提唱した哲学者が、アメリカで活躍したポストモダニストのローティです。彼は、『言語論的転回』を編集した後、『哲学と自然の鏡』(1979年)や『プラグマティズムの帰結』(1982年)を出版し、自分の立場を鮮明に打ち出すようになりました。さらには、同時代のフランスやドイツの哲学者たちと対話を進め、アングロサクソン系と大陸系の哲学の相互理解を図ったのです。そのときローティは、みずから「ポストモダニスト」を自認しました。


たしかに、20世紀の後半には、言語論的転回が積極的に推し進められ、そのうえポストモダンの流行によって、社会構築主義相対主義が主張されるようになりました。そのため、道徳的な「善悪」や、法的な「正義」に関しても、普遍的な真理はなく、多様な意見があるにすぎない、とされました。極端な場合には、自然科学的な事柄に関してさえ、多様な解釈があるだけであって、どの説が正しいのかは決定できない、と言われることがあったのです。


しかしながら、21世紀を迎える頃には、ポストモダンの世界的な流行も終息し、「言語論的転回」に代わる新たな思考が、模索されるようになりました。大別して3つの潮流がありますが、その概説は9/12(月)に公開する次回にゆずることにしましょう。

このポストモダン相対主義)というのは父神一神教の変形。
元々、創造神を僭称して支配する体制だから、すり替えて乗っ取ろうとする。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160908#1473331258
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20080107#1199945158

#フランス留学派 #カトリック大国