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本日のテーマは金融市場です。金融市場と聞いてすぐ思い浮かぶのは、日々、新聞やニュースで報道される株価や為替相場であり、企業や個人投資家にとっても馴染みのあるものです。しかし、その取引の具体的な仕組みや価格形成の在り方、さらに金利や債券、デリバティブ取引等に話が及ぶと、途端に技術的な色彩が濃くなり、専門性が強まる分野とも言えます。


振り返ってみますと、私自身、これまでも様々な立場で金融市場と関わってまいりました。かつて財務省においては、日本の為替政策の当局者として、外国為替市場と日々接してきました。また、アジア開発銀行(ADB)では、開発金融に必要な資金を債券の発行によりグローバルな金融市場から調達していました。そして、現在、日本銀行では、「物価の安定」を使命として金融政策を運営する立場から、金融市場と深く関わっています。具体的には、年8回の金融政策決定会合において、経済・物価の状況や金融情勢を踏まえ、「物価の安定」を達成するために金融市場調節方針を決定します。その方針に基づいて、日本銀行は、日々、金融市場において国債などの金融資産の買入れといった市場オペレーションを行っています。そのほかにも、市場インフラの整備や市場関連データの作成、決済インフラの提供も含め、金融市場と多面的な関わりを有しています。


これらの機会を通じていつも感じていることは、金融市場は理論と現実が交錯する場である、ということです。例えば、株価や為替相場の決まり方は、豊富なデータが継続的に生産される金融市場の特性を映じ、理論的分析に比較的馴染みやすいテーマです。現に、本日お集まりの皆様をはじめ、学界関係者の方々が金融市場に関する理論を発展させ、金融市場の理解をリードしてきました。他方で、金融市場には、資金の調達者、運用者、そして政策当局者等の様々な主体が広く関わり、各々の現実の行動を通じて、市場価格が毎日成立しています。その際、金融市場がまさに理論通りに動くこともありますが、逆に、金融市場の展開が理論の予想するところとは異なるケースも少なくありません。そうした理論と現実の乖離を埋め合わせていくことは、新たな理論の構築のきっかけとなり、それを基に市場参加者の行動が改めて合理的に説明されるということもあります。


このように、金融市場は理論と実務が互いに刺激し合いながら、発展を続けています。本日は、この点を念頭に置きながら、金融市場に関する理論についてお話しするとともに、中央銀行の観点からみた金融市場の実際に触れることで、理論と実践の橋渡しを試みたいと思います。


http://d.hatena.ne.jp/d1021/20170516#1494930784
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20170428#1493375698