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これをみると、ネット右翼とされる人々の社会的位置づけは、底辺というよりも、一言で言えば「大都市部に住むアラフォーの中産階級」である、となる。


差別的発言、排外的発言を開陳するネット右翼は、その言葉遣いだけを見ると無知文盲のごとく観測されるので、ネット右翼の社会的イメージは「低学歴、低収入の貧困層=社会的底辺層」とされがちだが、それは大きな間違いなのである。


第1回でも述べたが、数えきれないネット右翼と実際に接してきた私でも、この調査結果は皮膚感覚と符合する。


朝鮮人を日本から追い出そう」「シナの工作員がテレビ局に入り込んで反日工作に勤しんでいます」などの、差別発言やトンデモ・陰謀論を開陳するネット右翼の中には、医者、税理士、中小企業経営者、個人事業者、不動産業、会計士、学校教員、地方公務員など、社会的に相応の立場にある人々がなんと多かったことだろうか。


学歴や年収の高い、つまり社会的地位の高い者はネット右翼になるわけがない。彼らは差別的な発言やトンデモ陰謀論を信じたりはしない――という根拠なき信仰こそが、「ネット右翼=社会的底辺」説を常に支えているのだが、繰り返すようにこのような思い込みは何の根拠もない。

政治学者の丸山眞男は戦前の日本型ファシズムを支えた主力を、「中間階級第一類」とした。それはすなわち、中小の自営業者、工場管理者、土地を持つ独立自営農民や学校教員、下級公務員であり、企業でいえば中間管理職や現場監督などの下士官に相当する中産階級である。


これに対して「中間階級第二類」とは、大学教授や言論人などの文化人や、フリージャーナリストなどの知的労働に従事するインテリ階級であり、こちらは日本型ファシズムに対し終始冷淡であった、としている。


現在のネット右翼は、丸山眞男の定義する日本型ファシズムを支えた主力、つまり「中間階級第一類」に驚くほど酷似しているといわなければならない。彼らこそが、政府・大本営の発表を鵜呑みに、翼賛体制の一翼を担って「鬼畜米英」を唱え、一方唱えぬものを「非国民」と呼ばわらしめた社会の主力だったのである。


右傾化の主力は「貧困層、社会的底辺層」であるとか、「貧困であるがゆえの鬱憤を差別発言によって発散している」などというのは根拠なき幻想であり、いつの時代でも、常に右傾化を支える主力は社会の中間を形成する中産階級なのである。


そして現代の「中間階級第一類」たるネット右翼は、なまじの中産階級であるがゆえに、可処分所得や可処分時間が多く、インターネットの世界にのめり込んでいく。さらにお気に入りの保守系言論人・文化人に寄生し、彼らの著作や会員制の有料サービスを購入する、という購買力を持つのである。


もしネット右翼が社会的底辺であり、貧しき弱者の存在であるなら、保守系言論人・文化人に「寄生」と「(著書購入等の)見返り」の関係で共依存している関係性を説明することはできない。


彼らの小ブルジョワ的無数の購買力が、彼らに「寄生」される保守系言論人・文化人の生活を支えているのである。

ネット右翼の実数は、近年まで謎のベールに包まれていた。日頃ネット右翼が極めて右派的、保守的な思想傾向を「宿主」である保守系言論人・文化人に寄生することで開陳しているのは、すでに第1回の記事で述べたとおりであるが、彼らの実数をうかがい知ることは困難であった。


なぜなら最も有力な指標となる国政選挙において、ネット右翼の投票行動のほとんどは自民党票に吸収されてしまい、全国的概数を知ることができなかったからだ。

このような状況が一変したのが、2014年11月の衆議院総選挙である。


この選挙を控えた同年7月、主に日本維新の会から分派して「次世代の党(現・日本のこころを大切にする党)」が結成された。同党は「自民党よりも右」を標榜して、ネット右翼に圧倒的な人気を誇った田母神俊雄航空幕僚長などを擁立し、積極的にネット右翼層への浸潤を図った。ネット右翼の持つ思想的傾向を、初めて国政レベルで代弁する党こそが、この「次世代の党」であった。


総選挙の結果、「次世代の党」は比例代表で総得票数約141万5000票を獲得したものの、公示前の19議席から17議席を減らして2議席となる壊滅を喫した。


一方で筆者は当時、同年1月に行われた猪瀬直樹東京都知事辞任を受けての出直し都知事選挙で、ネット右翼から圧倒的な支持を集め立候補した田母神氏が約60万票を獲得したことを受け、ネット右翼が首都圏に偏重していることを加味して、ネット右翼の全国的実数をおおむね200〜250万人と予想していた。


「次世代の党」の総選挙における比例代表総獲得票数も、投票率が50%強であったことを加味すると、やはりその支持層の全体は概ね200〜250万人として差し支えなく、この選挙においてはじめて、ネット右翼の全国的実数の概要が判明したのである。

続く2016年7月の参議院通常選挙において、既に党勢がかたむきつつあった「次世代の党」は、「日本のこころを大切にする党」と名を変えたが、全国比例区における総得票数は約73万4000票と半減してしまった。しかし、この間約2年弱でネット右翼の実数が半分になったのかというとそうではない。ネット右翼の全国的実数が約200〜250万人であることはむしろ補強されたのである。


というのも、「日本のこころを大切にする党(旧次世代の党)」が2014年衆院選における比例総得票数を半減させた分、ネット右翼の投票行動は彼らが個人的に嗜好する保守系言論人・文化人への投票に向かったからだ。


例えば同参議院選挙で自民党から立候補した、元共同通信記者の青山繁晴氏は、ネット右翼から圧倒的な支持を集める保守系言論人・文化人の筆頭格に位置づけられるが、自民党個人名得票堂々第2位の約48万票を獲得する。


さらに「旧次世代の党」から自民党に転属した山田宏氏が約15万票、「日本のこころを大切にする党」から「おおさか維新の会」に復帰した三宅博氏は約2万票を獲得した。これら「旧次世代の党」の立候補者に対する個人獲得票数を合わせると、結局、138万9000票と、2014年におけるネット右翼層の投票総数と大差ない数になる。


つまり「旧次世代の党」の得票が半減した分、他のネット右翼が好む立候補者の個人票に流れたのである(表2)。

#ネトウヨ#DQN

#政界再編#二大政党制