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武田 前回は、トップダウンボトムアップ双方には弱点があり、その弱点を克服するマネジメント・スタイルとして、野中先生は中間管理職発信型の「ミドル・アップダウン」に着目されている、というお話を伺いました。


野中 組織的な知識創造においては、ミドルの存在が鍵を握っているというのが僕らの主張です。しかし、ミドル・アップダウンが有効に機能するためには、それを支える組織構造が必要になります。


武田 先生は『知識創造企業』の中で、ミドル・アップダウンに有効な組織構造として「ハイパーテキスト型組織」を提唱されていますね。


野中 ええ。以前は「ハイパーテキスト型組織」と言っていましたが、今は研究をさらに進め、フラクタル組織という概念にまとめています。


武田 それはどのようなものですか?


野中 フラクタル組織とは、部分と全体が相似の関係にあり、どこの部分をとっても全体を代表するように自律分散的に行動している組織のことです。


野中 そもそもフラクタルとは、数学者ブノア・マンデルブロが提唱した幾何学の概念であり、全体を細分化していっても最初と同じ形が現れるという自己相似性を持ちます。一方、部分を合わせて全体をつくると、これまた部分と同じ形になる。いわば「入れ子構造」のようなものです。


武田 おもしろいですね。フラクタル組織の例としては、どのようなものがあるのでしょうか。


野中 代表例は、アメリ海兵隊のMAGTF(マグタフ)です。

野中 ええ。通常、企業や軍隊の組織では、ピラミッド型のヒエラルキー(序列)で構成される官僚制階層組織の構造が多いです。これは、上からの指示命令をブレイクダウンして部分に分業化し、効率的に遂行することに適しています。


 このようなトップダウン型の組織では、部分はあくまで全体の一部分にすぎません。これに対し、フラクタル組織では、一人ひとりが経営者の意識を持ち、どのレイヤー、レベルでも、自律的な判断と実行がなされます。


 アメリ海兵隊のMAGTFは海兵空陸任務部隊ですが、組織のどのレベルをとっても指令部、陸上部隊、航空部隊、兵站部隊を組み合わせた自己完結型の統合部隊です。これは世界に類を見ない組織構造です。

野中 軍事における戦い方には、「消耗戦」と「機動戦」があります。消耗戦は、圧倒的な軍事力と兵站力で、敵を壊滅状態に追い込みます。命令はトップダウンで、現場の自律性は要求されません。


野中 一方の機動戦は、迅速な意思決定と兵力の移動や集中によって、戦闘の主導権を握る戦い方です。中央より現場の状況判断や行動が優先されます。昨今のように軍事における俊敏さや臨機応変さを求められる状況では、機動的な戦い方こそが効果を発揮します。


 この機動戦に適した組織が、自律分散的なネットワーク型組織であるMAGTFだったというわけです。

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