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中東のイエメンでは、サウジアラビアやUAE=アラブ首長国連邦が支援し、南部を支配する政権側と、イランの支援が指摘され、首都サヌアを中心に北部を掌握する反体制派の間で内戦が続き、多くの市民が巻き添えになっています。


こうした中、反体制派と連携してきたサレハ前大統領派が2日、突然、サウジアラビアなどとの関係改善を訴え、続いて反体制派との関係断絶を発表しました。


これを受けて、首都サヌアでは、反体制派と前大統領派の間でも戦闘が起きていて、一段と混乱が広がっています。


サウジアラビアやUAEは、前大統領派が反体制派から離反したのを歓迎しており、地域で影響力を増すサウジアラビアが反体制派を切り崩す工作を行っているという見方が広がっています。


これに対して、反体制派は3日、UAEの首都の近郊で建設が進む原子力発電所に向けてミサイルを発射したと主張するなど、サウジアラビアやUAEをけん制する動きを強めていて、双方の対立が激化しています。


イランがフーシ派に武器を提供し、軍事アドバイザーを送りこんでいるために、イエメン内戦は(シーア派の)イランと(スンニ派の)サウジの覇権争いの延長線上にあると説明されることも多い。しかしこの見方は、戦争の原因とサウジが介入した理由を誤解している。イエメン内戦は、イエメン政府の正統性と統治能力が低下した結果、中央政府と長年虐げられてきた北部部族の対立がエスカレーションしたことで引き起こされた。そして、サウジが介入したのは、イランの拡張主義に対抗するためではなく、フーシ派の脅威から自国の南部国境線を守るためだった。・・・


空爆では何も解決しない。国際コミュニティと地域諸国がイエメンを救うためのコミットメントを示さない限り、この国はシリア、リビアイラクのような混乱、あるいはそれ以上のカオスに陥り、これら3カ国の問題が重なり合う無残な空間と化すかもしれない。イエメンに介入せざるを得なくなったこと自体、・・・サウジの失敗を物語っている。アラブ世界でもっとも豊かな国がアラブ世界の最貧国の政治ダイナミクスを変えるために空爆を実施せざるを得なくなった。現在の危機は、この数年にわたって地域諸国がイエメンの混乱に傍観を決め込んだことによって直接的に引き起こされている。仮にフーシ派を抑え込めたとしても、劣悪な生活レベル、少数派の政治的周辺化、弱体な政府といった紛争の根本要因は残存する。すでに1000人のイエメン人が空爆の犠牲になり、数千人が負傷し、数十万人が難民化している。

<サウジの挫折>


2015年3月以降、(スンニ派の)サウジを中心とするアラブ連合軍はイエメン空爆を実施している。目的は、シーア派武装集団フーシ派、そしてその同盟勢力であるシーア派のアリ・アブドラ・サレハ前大統領の支持勢力を粉砕することだ。アラブ連合軍はフーシ派を弱体化させ、(2011年に大統領を退陣してもなお影響力をもつ)サレハの権力基盤を切り崩そうと試みている。だが、これまでのところはっきりしているのは、空爆作戦で多くの民間人が犠牲になっていることだ。少なくとも、1000人のイエメン人が犠牲になり、数千人が負傷し、数十万の市民が難民化している。


仮にサウジが主導するアラブ連合軍が最終的にフーシ派の打倒に成功しても、イエメンに介入せざるを得なくなったこと自体、サウジの失敗を物語っている。実質的にアラブ世界でもっとも豊かな国が、アラブ世界の最貧国の政治ダイナミクスを変えるために空爆を実施せざるを得なくなった。要するに、現在の危機は地域諸国がこの数年にわたってイエメンの問題に傍観を決め込んだことによって直接的に引き起こされている。・・


2015年1月、イエメンでイスラムシーア派武装勢力「フーシ派」が権力を掌握し、議会を解散して暫定政府の樹立を宣言した。しかし、政治的経験のないフーシ派には、政府を運営し、経済を管理していく力はない。これまでの問題を批判するだけで、統治上の責任はほとんど果たせずにいる。一方でイエメンのスンニ派系テロ集団・アラビア半島のアルカイダ(AQAP)は、紛争を宗派抗争へ持ち込もうと策謀している。実際、フーシ派を侵略者とみなしているイエメン中央部のバイダー県を含む地域では、いまやAQAPに多くの若者が参加しつつある。地方の部族がAQAPと手を組む可能性もある。サウジは、外交的にフーシ派を孤立させ、彼らと軍事的に対立している集団を支援し、フーシ派に明確に敵対する路線をとっている。一方で、危機を緩和させるためにシーア派のイランが前向きな行動をみせるとも考えにくい。いまや宗派を軸とするイエメン内戦のリスクが高まっている。・・・