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 話をまとめると、「ITと統計学の素晴らしき結婚」によって次の2つがこの世に生み出されたということです。


 1つは統計学において、紙とペンの手計算だけでは難しい分析がコンピューターによる計算アルゴリズムで実現できるようになりました。これが「現代的なITによる統計学」です。一方で、コンピューターサイエンスの世界で生まれた人工知能研究においても、記号論理学のような理屈や知識表現だけではうまくいかなかったことが、統計学の理論と計算方法によって実現できるようになりました。このようなクロスオーバーが、現代のデータ社会の中でとても大きな力を発揮しているのです。そしてそれゆえに、統計解析手法と機械学習手法を数学的に記述するやり方は、細かい慣例などの違いこそあれ「基本的に全く同じ」というわけです。違いがあるとすれば数学的な理屈の後の、「どういうアルゴリズムでコンピューターを働かせるか」という部分ぐらいでしょうか。


 そうすると、いまエンジニアたちが統計学機械学習の背後にある数学に慣れておくことは、前述のような品質の向上や、生産計画の最適化に使うという以上の意味を持ちます。蒸気やガソリンを使ったエンジンを使いこなすために熱力学を理解するとか、電子部品を使いこなすために電磁気学を理解する、といったのと同じようなレベルで、これからのものづくりにおいてその競争力の少なからぬ割合が、機械学習技術をどう活かすか、というところと関係してくるからです。

 前述のベンジャミンによれば、高校までの数学カリキュラムは「微積分を頂点とするピラミッド状に積み上げられている」とのことです。微積分を理解するためには関数やxy平面上のグラフの概念を理解しておかなければいけません。そしてこれらの概念を理解するためには、「数をxやyといった文字で表す」といった考え方を身につけておかなければいけません。このように、より基礎的で使う範囲の広い知識から少しずつ積み上げて、最終的に「微積分が理解できる」という頂点に至るのが、彼の言う「ピラミッド状」ということなのでしょう。


 そしてこのピラミッドの頂点にある微積分が、彼の言うように「理工系の専門家だけのためのもの」であるとするならば、アメリカでも日本でも、子どもたちは小学校入学から高校卒業までの長い期間をかけて、「理工系の専門家になるためのピラミッド」を積み上げていることになります。


 しかし、このピラミッドのほとんどは完成せず、どこかの部分でつまずいたまま放置されて、数学の苦手な大人が多数輩出されていくというのが現状なのではないでしょうか。

 ではどうすれば、もっと世の中の多くの人が統計学機械学習を理解し役に立てられるのでしょうか?


 この問題に対して、私が本書で提示する答えは、高校までの数学の内容を編み直し、大幅に削減した上で「統計学機械学習を頂点とした数学教育のピラミッド」を作ろうというものです。

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