累計48万部を突破した大ヒットシリーズの最新刊、『統計学が最強の学問である[数学編]』が発売されました。統計学と機械学習を頂点とした数学教育のピラミッドとは? - 統計学と機械学習のための 数学ピラミッド https://t.co/lkZHMmCrB8
— ダイヤモンド・オンライン (@dol_editors) 2017年12月26日
高校までの数学カリキュラムを、理工系の専門家になるための微積分ではなく、統計学と機械学習への入門を頂点に設定してピラミッドを再編成した場合、学ぶべき内容を大幅に絞り込むことができます。
なぜこのようなことが可能なのでしょうか?その理由をみなさんが理解するために、まずは現代の中等教育(中学校と高校)の数学カリキュラムがどのようなものから成り立っているかを説明しましょう。数学Iだとか数学Bだとかいった名前からはその実態があまり見えてきませんが、中等教育における数学カリキュラムは大きく、1)代数学、2)幾何学、3)解析学、4)確率・統計などを含む「その他の分野」、という4分野に分けることができます。
これらの具体例を挙げてみましょう。数をxやyといった文字で表して計算しようというのは代数学にあたります。実際の「数」の「代」わりに文字や記号を使おうというわけです。一方、三角形や立方体の性質を考えるのは幾何学です。一定の規則性を持つ図形や模様のことを「幾何学的」と表現したりもしますね。また、微分や積分を行なうことは解析学にあたります。
中学校でも高校でも、こうした分野が混在している状態で教わっていますが、当然ピラミッドの部品である「単元」について、代数学は代数学同士、幾何学は幾何学同士の関係性が強いことは言うまでもありません。そして統計学と機械学習を理解しようとする際、幾何学よりも代数学や解析学の方が圧倒的に重要になります。たとえば、円柱の体積や表面積を求められなくても、統計学と機械学習の勉強にはそれほど差し支えがありません。
これは私が個人的にそう思っている、というわけではなく、きちんとした歴史的な経緯を説明することだってできます。
カナダの科学哲学者であるイアン・ハッキングはその著書『確率の出現』の中で、なぜ人類は17世紀になるまで近代的な意味での確率や統計という概念を思いつけなかったのかについて論じました。
サイコロとして使われていたと考えられる加工された動物の骨や、賭博の勝敗記録は古代エジプトの遺跡からも発掘されます。ユダヤ教の聖典にも「くじ」という言葉が登場します。また、ローマ皇帝のマルクス・アウレリウスはサイコロ賭博に熱中したと伝えられています。つまり、少なくとも有史以来人類はずっと、確率を使って遊んだり意思決定をしたりしていたということになります。
そして、我々が中学校や高校で習うレベルの幾何学の知識は、古代ギリシャの時点ですでに発見されています。足し算や掛け算、分数といった概念が生まれた時代ともなれば、私には調べようもないくらい昔としか言いようがありません。しかしながら、近代的な確率論は、17世紀の数学者ブレーズ・パスカルらからはじまった、というのが学校でよく教えられる歴史です。古代のエジプトやローマ、ギリシャからなぜこれほど時間がかかったのでしょうか?
この問いに対する説明の1つとしてハッキングは、「確率について考えようとすれば代数学など“数の表し方”の発展が不可欠だったから」という考え方を提示しました。代数学は幾何学と比べれば歴史は浅く、代数学(algebra)という単語の語源はアラビアの数学者であるフワーリズミーが9世紀に著した書物に由来しています。また、未知の数あるいは値が変わりうる数(後で詳しく述べますがこれを変数と呼びます)をxやyといった文字を使って表すようになったのは、フランスの哲学者/数学者であるルネ・デカルトが17世紀に著した、今日『方法序説』と呼ばれるテキストを含む長ったらしい名前の書籍からです。こうした便利な道具が揃ったことではじめて、人類は確率といった概念を理解して使いこなせるようになったのではないか、というのです。なお、英語で偶然という意味を持つchanceやhazardといった単語も、元を辿れば代数学(algebra)と同じくアラビア語が語源となっているそうです。
イアン・ハッキングの本は「それだけでは十分な答えではない」というところから考察を深めていきますので、興味がある方はぜひご一読ください。ただ、確かに私たちが学生時代に習うような最低限の数学的な道具がなければ、確率や統計について考えることはとても難しくなります。
そうしたわけで、本書で考える「統計学と機械学習のためのピラミッド」は、中高時代に習う代数学と解析学を中心とし、逆に中高時代の数学から、かなり大胆に幾何学の分野をカットしたものとしました。
#AI
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20171222#1513939147
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20171216#1513421122
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20171107#1510050927
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20170729#1501324626
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20170718#1500374294
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20170705#1499251024
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20170617#1497696716
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20170613#1497350187(アナロジー)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20170607#1496831610
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20170607#1496831611
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20170606#1496745345
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20170605#1496659173
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20170604#1496573510(また彼らは、『国家』における「哲人王」と同じく、幾何学・天文学を含む数学諸学科などの予備学を修めた上で、雑多なものから一なる形相(イデア)を導き出していく能力を養われ、また、諸天体が神々の「最善の魂」の知性(ヌース)によって動かされていることを理解して「敬神」の心を持ちつつ、国制・法律の目的である徳・善を追求・護持していける者であることが求められる。)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20170528#1495968376(地上世界と天上世界は異なる世界ではなく、同じ法則に従っている、という前提の下で「近代科学革命」が人類を大きく変えていく。)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20170426#1493203208(人はいかにして多様・複雑かつ膨大な情報の本質を把握し体系化するのか。重要な役割を果たすのが、万物を分類し、つなぎ、知を可視化するダイアグラムである。ダイアグラム(diagram)とは、情報を2次元幾何学モデルで視覚化した象徴的表現である。)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20170418#1492511955(デカルトは,単に幾何学を代数的に取り扱うことを考え出しただけではなく,代数学を再編し,かつその各要素に幾何学的な映像を与えるという仕事をやってのけたのである.)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160918#1474194774(巡行地を結ぶと神聖幾何学に基づく幾何学模様ができ、ひとつの結界を形創る、それは「光の壁」「防壁」となって守護の役目を果たす)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160131#1454236546
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20151222#1450781122(私が灘にいたころ、中2の数学では「幾何」しか習いませんでした。)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20141201#1417430505(『幾何学』)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20141130#1417344126(「初めに形ありき!」宇宙における調和は幾何学に基礎があると信じ、天球に数学的な図形を探し求めたヨハネス・ケプラー。)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20141107#1415356830(ガリレオ・ガリレイは、数学的に記述される自然という新たな世界観を作り出した。)
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20131122#1385117662(デカルトが歴史学・文献学に興味を持たず、もっぱら数学・幾何学の研究によって得られた明晰判明さの概念の上にその体系を考えた事が原因として挙げられる。)
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