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 県は8月31日に埋め立て承認を撤回し、工事は止まっている。これに対し、事業主体の防衛省沖縄防衛局は今月17日に審査と、裁決が出るまで撤回の効力を一時的に止める執行停止を石井啓一国交相に求めた。防衛省は提出した文書を公表していないが、毎日新聞は審査請求書と執行停止申立書を入手した。

 防衛省は2015年に当時の翁長雄志(おながたけし)知事が埋め立て承認を取り消した際にも行政不服審査法に基づく審査請求などを国交相に申し立てた。当時、「国民の権利救済」が目的とされる行政不服審査法防衛省が利用したことに「国が私人になりすましている」と行政法学者などから厳しい批判が相次いだが、防衛省は今回も「法は行政機関が請求人になることを排除していない」としている。

 県は撤回の理由として、埋め立て予定海域に護岸が沈下する可能性がある軟弱な地盤が存在するなどの新事実が判明したと指摘。これに対し、防衛省は地盤の強度について「現在調査中で、県の指摘は未確定の事実に基づく『おそれ』にとどまる」と主張。「仮に地盤改良工事が必要となっても、埋め立て区域を変えずに施工できる」と強調している。

 また、県が「承認時の留意事項に定められた事前協議をせずに工事に着手した」と指摘していることについても、防衛省は「協議は十分で、留意事項では県の同意を得ることまでは求められていない」と反論。裁決前に撤回処分の執行停止を求める理由として「工事の中断で警備費などに1日約2000万円の不要な支出がかかり、普天間飛行場の返還が遅れて米国との信頼関係にも悪影響が出る」と緊急性を挙げた。

 国交相は執行停止申し立てに対する意見書を25日までに提出するよう県に求めている。玉城(たまき)デニー知事は防衛省による行政不服審査法の利用を「制度の趣旨をねじ曲げた、違法で、法治国家にあるまじき行為」と批判。撤回から申し立てまで1カ月半がたっていることを挙げ、「緊急性は到底認められない」と主張している。

本多滝夫・龍谷大教授(行政法)の話
 防衛省は審査請求書で、公有水面埋立法に基づき知事から「免許」を受ける民間事業者と同様の立場だとして、行政不服審査法を用いることを正当化している。しかし、公有水面埋立法の規定では民間に比べ、国の法的地位が特権的に守られており「私人と同じだ」という主張は成り立たない。行政不服審査法は、国の機関が「固有の資格」で処分を受けた場合は法を適用しないとしているが、防衛省の立場はまさに「固有の資格」にあたる。国交相は適切に判断すべきだ。