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 それにしても関係者にとって悲しいのは、報道されている限り、大塚家具の買収に手を挙げる小売業者が出ていないことだ。年間400億円近くの売り上げがあり、高級家具の在庫も約130億円ほどあり、現金も10億円持っている企業を再建しようという小売業が、なぜいないのか。最大の理由は、これだけリストラを行ってもまだ年間50億円の赤字が出続けているという点に、尽きるのではないか。


 企業というものは、本質的には黒字が出なければ経営する意味がない。企業を再生すると言っても、いまから50億円分の大赤字を掃除して、それでようやくスタート地点にたどり着くという「買収案件」では、これに手を挙げる経営者が業界内からは出てこないのは、ある意味、当たり前だ。

 とはいえ、論理的には1つだけ、現状の大塚家具を元の軌道に戻せる経営者がいる。創業家で大塚家具を追われた大塚勝久前社長だ。創業者として大塚家具を建て直す考えはないのだろうか。


 ご本人の気持ちはわからないが、本来、そのようなことをする必要は大塚勝久氏にはないだろう。なぜなら勝久氏は、すでに新たなライバル企業「匠大塚」を創業しているからだ。わざわざ大塚家具の苦境を支援しなくても、今自分が専念している土俵で成功すれば、それで周囲を見返すことができる。自分のつくりたい未来も自由に設計できる。


 そして彼を追い出したのは、大塚久美子現社長だけではない。かつての「お家騒動」には、金融機関も一緒に手を染めてきた。つまり娘が父親と袂を分かった段階で、明るい未来は大塚家具にとって、潰えていたのかもしれない。

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