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「早稲田さんと比較されることが多い慶應ですが、全体にこぢんまりとした環境で、各学部などが有機的に補完し合い、法学部に所属しながらも、学部を超えた広がりを学生生活のなかで感じられると思います。学生は法律学科、政治学科に入学するという意識があるかもしれませんが、それぞれ別の学科の授業も聴くことができます」

 と語るのは、岩谷十郎法学部長。法律学科を代表して、小山剛教授が言う。

「教員と学生の距離が近いです。私は法科大学院でも教えていますが、他大学出身の学生は、慶應のこの距離の近さに驚く人が多いようです。また、他大学の法律系学部に類を見ない水準で語学教育に力を入れ、週4回の授業で集中的に学ぶインテンシブコースを選択すると、4年間で不自由なく喋れるようになる学生もいます。法律学科の出身者も多くは民間企業に就職しますが、彼らの強みの一つはリーガルマインド、つまりバランスのとれた実践的思考を学んでいること。もう一つは、問題がある契約書を識別する嗅覚が働くようになることですね」

 続いて政治学科を代表し、萩原能久教授の話。

一般的に教養課程と呼ばれている日吉キャンパスでの語学や人文科学の科目も、両学科とも4年間を通じて配置され、法律、政治、一般教養が4年間で一体化されているのが、法学部の最大の特色だと思います。政治学科については、政治学という学問を経済学と一体のものとしてとらえるのではなく、ドイツ型の国家学の伝統にのっとり、国家に関わる学問のなかの法律部門と非法律部門という形で構想されているのが大きな特徴です。また政治学科は、将来どんな方向にでも行ける勉強をしたい高校生には、一番進学しやすいと思います。社会問題をどうとらえ、どう解決策を見いだしていくのか、という考え方を学べるので、どの職業に就いても問題に対処するうえで役立つと思います」

 早稲田の法学部の説明はどうだろうか。

「1年生全員が履修する法律の導入ゼミ、外国語科目など、徹底的な少人数教育でコミュニケーション能力を高めることからスタートします。大教室の授業もありますが、スマートフォンを使って学習成果を確認するなど、講義形式のなかでアクティブラーニングの試みも始まっています。学年が上がってもゼミでは少人数教育を重視し、語学や教養科目もゼミ形式で専門的に学べる副専攻ゼミがあるのも、法学部の魅力です」

 早稲田の政治経済学部については、教務主任の中村英俊准教授が説明する。

「早稲田では、政治学科が経済学科と同じ学部内にあるのが創立以来の特徴で、現在、PPE(Philosophy, Politics and Economics)という、哲学と政治学と経済学の三位一体のカリキュラムを通じてグローバルリテラシーを学び、事実に即して自分の行動を決められる力を育てようとしています。そのためにここ5年ほど、二つのことに取り組んでいます。一つは政治学と経済学のより本格的な融合です。今は政治学も経済学の手法を取り入れた研究が進んでいる。そこで両学科がある政経学部の良さを発揮できるプログラムを作りました。来年度から公共哲学や政治分析入門を経済学科でも必修にし、経済学科で必修のミクロ経済学入門とマクロ経済学入門を、政治学科でも必修にします」

 ところで早稲田というと、OBには大教室での授業の印象が強いようだが、

「1年生が月曜に受ける政治分析入門は、大隈講堂で行う講義形式の授業ですが、木曜に、全員を20人前後のグループに分け、月曜の授業に関するディスカッションがセットで行われます」

 様変わりしているようだ。さて、二つ目はなにか。

「英語学位プログラムです。2010年に定員30人で始め、16年度には100人に拡大しました。19年度からは、日本語学位プログラムとのハイブリッド化を進め、日本語学位で入学した学生が、留学前に英語開講の科目に挑戦することも可能です。こうした改革を通じて本当の意味でのグローバルな人材を育てたい。政治学と経済学を融合して学ぶことで、現状をデータに基づいて分析し、クリティカルに語れるようになれば、就職後も役立ちます」

 英語学位プログラム・ディレクターのマリサ・ケラム准教授が補足する。

「英語学位プログラムも、基本的な考え方は政治と経済の融合。アメリカで政治学を教えた私の経験からも、統計、ゲーム理論、データ分析やプログラミングなどは、政治と経済を学ぶうえでの大切な知識になります。当学部では、今や英語学位、日本語学位の垣根なく、異なる文化や経験をもつ学生たちが同じ教室で学んでいます。学生たちはこのような環境で自ら学びとり、グローバル人材として育っていきます。教授陣をふくめ、異なる背景が教室に持ちこまれることこそ、国際的な教育環境の価値ある点だと思います。留学も推奨され、留学先で取得した単位が卒業要件にふくめられるので、留学しても4年で卒業することが可能です」

 大学の“親心”は学生に伝わっているだろうか。

「1年次は必修が多く、導入教育では、20人ほどのクラスに先生が1人ついて論文の書き方を学びます。2年後期からゼミが始まって、ゼミごとにOBやOGとのつながりがあるので、就職活動にも役立ちました」

 と、早大政経の18年の卒業生。同じ年に卒業した慶大法学部政治学科のOBは、

「1、2年の間も必修や教養科目が多く、意外に忙しいです。ただ、授業に出ずに試験対策プリントを手に入れて単位を取る、要領がいい人も多い。法律学科の学生のほうがマジメで、政治学科は、自分がなにを学びたいかわからない人が多い印象がありました」

 最後に早大法学部の、現3年生の話。

「私が所属するゼミでは年に1回、慶應のゼミとの討論会があります。そのとき慶應の学生のほうが時間の使い方がうまく、余裕があるように感じます。逆に早稲田生は、討論会の前日に徹夜で準備するなど、瞬間的に出る馬力はすぐれているように思いますね」

 では、彼らはどこに就職していくのか。両大学の就職状況をくらべると、

慶應のほうが強い」

 と言うのは人事コンサルタント城繁幸氏だ。

「ここ十数年で早慶それぞれのカラーは薄まりましたが、それでも慶應が強い理由は、一つにはコミュニケーション能力が高い人が多いこと。二つ目は横のつながりが強いことです。就活情報を共有し、自分たちで模擬面接をするなど、質を高め合って勝負できる。一方、早稲田生は群れないからか、慶應にくらべて横のつながりを感じません」

 『早稲田と慶應の研究』の著書があるライターのオバタカズユキ氏が、逸話を披露する。

「90年代の就職氷河期、早稲田を出ても第1志望にも第2志望にも入れないとき、慶應は就職に強かった。ゼミやサークル、体育会などで縦のつながりが強いからです。三田の学生は取材もしやすいけど、企業の広報のようでイマイチ本音を喋ってくれません。それくらい社交慣れしています。こういう話を早大生にすると“キモい”と言います」

 もっとも、早大生にも強みはある。城氏が言う。

「一つは地道に泥臭い仕事を続けられること。もう一つは、裏方で力を発揮すること。それぞれが強い業界は、慶應は金融や商社。早稲田は銀行からメーカーまでオールラウンドで、あえて言えばマスコミです。入社後は、慶應出身者は上下で助け合うので出世しやすい。社員100人以上の会社にはたいてい三田会があって、早稲田に就職した大学職員で構成される早稲田三田会まであるほどです」

 18年に最も多くが進んだ就職先は、早大政経外資コンサルティングアクセンチュアで、法学部が東京都。一方、慶應法学部は法律学科が三菱UFJ銀行政治学科は東京海上日動火災保険だった。これだけでもカラーが表れるが、結局は、どちらが自分に合うか。駿台の石原氏が言う。

「偏差値なんてプラスマイナス2くらいの間なら変わらない。それより自分を活かせる大学に行くのが一番で、合うかどうかは感覚が大事。私は受験生に、大学の学食に行って学生たちの会話を聞けば雰囲気がわかる、と話しています」

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