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疾風怒涛 一法律家の生涯―佐伯千仭先生に聞く

疾風怒涛 一法律家の生涯―佐伯千仭先生に聞く

関西刑法学会の重鎮、故佐伯千仞さんの存命中のヒアリングの記録です。一部はすでに発表されていましたが、「自分が存命中、公表はまかりならん」と言われた部分、「ここはオフレコ」と言われた部分も含めて、今回、その大部分が公になったわけです(それでも割愛された部分があるようですが)。

この本の中で最も興味深いのは、いわゆる「滝川事件」に関すること。日本史の教科書にも取り上げられる有名なこの事件の主役滝川幸辰は、佐伯さんをして「滝川先生は無用な言動が多かったですね」「滝川先生は非常にエキセントリックなところがありましたね」(79頁)と言わしめる人物で、右翼に狙われたのは、滝川さんが「天皇が自分に対して切りつけてきた場合、正当防衛ができるか、天皇に対する正当防衛ができるかという例」を出したことも原因だったらしい。また、滝川さんが免官となった後、京大法学部が一致団結して大学自治のために戦っていたときも、「しっかりやらんか」と督戦に来たとか。「滝川先生は、本当はせんでもよいことをして我々に散々迷惑をかけたといわれてもしょうがない状態」であったにもかかわらず。

佐伯さんも他の教授たちといっしょに辞表を出し、立命館に移りますが、すぐに京大に戻ったため、また、滝川さんの「督戦」を諌めたため、恨みを買い、戦後、滝川さんが京大に復職したとき、今度は「進駐軍を嵩にき」た滝川さんによって、教職追放となります。「本当にやっぱり捨て置きがたいわがまま、横暴を先生はやりましたね」

そのほか、勉強になったのは、「鎌倉幕府になると、幕府の裁定で、その人達(武士)が領主であるとされて、貴族は領土権を失いますね。あれは、やっぱり、一つの時効ということですね」(125頁)というくだり。貴族の荘園が武士の物となるプロセスがいままでよくわからなかったのですが、「時効」ということで説明できるというのは、実に驚きです。

また、戦後、弁護士としても活躍した経験から、「もう職業裁判官には、日本の刑事裁判は任せられないと、やっぱり、刑事裁判権を国民の側に取り戻す他ないというのが私の今の本当の気持ちですね」というコメントもあります。

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