リーマンショックやユーロ危機を乗り越えて、順調に経済成長を続けてきたヨーロッパ。その経済の先行きに今、黄信号がともっています。大きな理由が、日本に次ぐ世界4位、あの経済大国の失速です。https://t.co/dySdhRW6fU
— NHKニュース (@nhk_news) March 10, 2019
「このところの経済統計はかんばしくない。ユーロ圏の景気は予想以上に弱い」
ヨーロッパ中央銀行のドラギ総裁は、7日の記者会見でこう漏らしました。
ユーロ圏は、EU加盟国のうち、単一通貨ユーロを使うドイツ、フランス、イタリアといった19の国で作られています。
日本における日銀のように、この地域の金融政策を担うのがヨーロッパ中央銀行です。
そのトップがこの日、これまでの方針を見直し、年内の利上げは断念すると発表。景気回復を確認したとして始めたばかりの金融正常化の道は、足踏みとなったのです。
ユーロ圏の経済に何が起きているのでしょうか。
GDP=域内総生産の伸び率は去年、1.8%となり、前年の2.4%から大きく縮小しました。
大きな要因になったのが、ユーロ圏で最大の経済大国ドイツの失速です。去年の後半、ドイツのGDPの伸び率は7-9月期がー0.2%、10-12月期は0%と低迷しました。2期連続でマイナス成長となると、景気後退局面に入ったとされます。
財政問題に揺れるイタリアは同じ時期にこの状態になりましたが、ドイツも景気後退ぎりぎりの状況となったのです。
ユーロ圏ではこれまで、域内最大の経済大国ドイツがほかの国々を力強く引っ張ってきました。盟主ドイツが失速した影響は非常に大きいのです。
なぜドイツの成長にブレーキがかかっているのでしょうか。
ドイツは日本と同様に自動車が国の基幹産業です。その自動車業界では、去年9月からEUで新車に新たな燃費試験が必要になり、この対応の遅れから生産が落ち込みました。
これに加えて、アメリカと中国の貿易摩擦や中国経済の減速で、輸出が伸び悩んだことが打撃になりました。
さらに、アメリカがEUから輸入する自動車に関税上乗せを検討する構えを示していることや、イギリスのEUからの“合意なき離脱”への警戒感も根強く、先行きに慎重な見方が強まっているのです。
フランス・シトロエンのリンダ・ジャクソンCEO=最高経営責任者は、イギリスのEU離脱に伴う不透明感が重しになっていると明かしました。
「イギリスは私たちにとって5番目に大きい、非常に重要な市場。離脱後の関税がどうなるのか、自動車をスムーズに輸送できるのかが問題だ」トヨタのヨーロッパ現地法人のマシュー・ハリソン上級副社長は、自社の販売は好調としながらも、ヨーロッパ市場全体では下向きのリスクがあると説明しました。
「市場は弱くなり始めている。主な市場の中で厳しいのは、フランス、ドイツ、イタリアだ」
先行きが不透明な状況を受けて、ヨーロッパ中央銀行は、ことしのユーロ圏の成長率の予測をこれまでの1.7%から1.1%にまで、大幅に下方修正しました。
年内の利上げを断念すると発表したドラギ総裁は、ことし10月で8年間の任期を終えます。後任には今のところ、フィンランドの前中央銀行総裁やフランスの中央銀行総裁らが有力と見られていますが、欧州経済の減速が強まる中、あくまで異例のゼロ金利政策などからの正常化を目指すのか、それとも再び緩和姿勢を強めるのか、難しい判断を迫られることになります。