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ウクライナの大統領選挙は21日、先月の1回目の投票で、得票率で1位になった新人でタレントのゼレンスキー氏(41)と2位で、現職のポロシェンコ大統領(53)の上位2人の間で決選投票が行われます。

ウクライナでは5年前、ロシアがウクライナ南部のクリミアを武力で併合し、東部では現在も紛争が続いています。

選挙戦で優位に立つゼレンスキー氏が、ポロシェンコ政権下で相次ぐ汚職と、経済の低迷を批判して支持を広げてきたのに対して、ポロシェンコ大統領は、欧米の軍事同盟、NATO北大西洋条約機構への早期加盟を掲げるなど、ロシアとの対決姿勢を前面に出し、巻き返しを図ってきました。

5年前のクリミア併合のあとロシアは欧米各国から経済制裁を科され、国際的な孤立を深めてきたことから、今後の欧米とロシアとの関係にも大きな影響を与える選挙として注目されています。

投票は日本時間の21日午後2時に始まり、即日開票されて、早ければ日本時間の22日朝にも大勢が判明する見通しです。

ボロディミル・ゼレンスキー氏は、ウクライナ東部ドニエプロペトロフスク州出身の41歳。

コメディアンや俳優として活躍する人気タレントで、政治経験はありません。

熱血漢の高校教師が突然、大統領に転身し、次々と政治改革を進め、汚職を撲滅していくテレビドラマ「国民のしもべ」で主役を演じ、既存の政治家とは一線を画す、清廉なイメージを浸透させて、若い世代を中心に支持を伸ばしてきました。

先月行われた1回目の投票では、39人の候補の中で最も多い30%余りの票を得て、2位のポロシェンコ大統領に2倍近い差をつけて決選投票に進みました。

今月18日に発表された世論調査では、決選投票に臨む2人のうちゼレンスキー氏に投票すると答えた人の割合は58%で、ポロシェンコ大統領の22%を大きく引き離しています。

一方で政治経験のないゼレンスキー氏に対しては、南部のクリミアを併合したロシアとの外交関係や東部で続く戦闘の終結、また、まん延する汚職の撲滅や低迷する経済の立て直しに向けた政治手腕を不安視する声もあります。

とくに外交面での懸念を払拭(ふっしょく)しようとゼレンスキー氏は今月12日、フランスのマクロン大統領とパリで会談し、EU=ヨーロッパ連合への加盟を目指す姿勢を国内外にアピールするなど、政権交代を見据えた動きを加速させてきました。

現職のペトロ・ポロシェンコ大統領は、ウクライナ南部オデッサ州出身の53歳。

ウクライナを代表する菓子メーカー「ロシェン」を経営する実業家から政治家に転身しました。2004年から翌年にかけて起きた大規模な民主化運動、いわゆるオレンジ革命を率いたひとりで、その後、欧米寄りのユーシェンコ政権で外相に抜てきされました。

2014年、野党勢力によるデモでロシア寄りの政権が崩壊した政変のあとに行われた大統領選挙で初当選し、第5代の大統領に就任しました。

しかしロシアによるクリミア併合や東部で続く紛争の解決に道筋をつけられないうえ、政権内で汚職が相次いだことで徐々に国民の支持を失います。

先月行われた大統領選挙の1回目の投票では得票率15%余りで2位になり決選投票に進んだものの、新人のゼレンスキー氏に270万票の大差をつけられました。

今月18日に発表された世論調査では、決選投票に臨む2人のうちポロシェンコ氏に投票すると答えた人の割合は22%で、ゼレンスキー氏の3分の1程度にとどまりました。

ポロシェンコ大統領は今月12日、ドイツのメルケル首相やフランスのマクロン大統領と相次いで会談して現職の強みをアピールしたほか、選挙戦終盤では政治経験のないゼレンスキー氏への批判を強めて巻き返しを図ってきました。

新人のゼレンスキー氏は、選挙公約で、大統領職を務めるのは1期5年に限るとしたうえで大統領や国会議員の不逮捕特権をなくすことや政治家や公務員の間で広がる汚職の撲滅を訴えています。

また外交・安全保障面では、ウクライナ東部で5年間にわたって続く紛争について、欧米の支援を得ながら、親ロシア派との戦闘を終結させ実効支配されている東部地域を取り戻すことを目指すとしています。

一方、ロシアのプーチン政権が警戒する、NATO北大西洋条約機構への国の加盟の方針については、国民投票を実施して国民の信を問う考えを示すなど、ロシア系の住民に一定の配慮も見せています。

これに対しポロシェンコ大統領は「EUとNATOに加盟しなければ、ウクライナの独立と安全は保障されない」として、2023年にEUとNATOの加盟に向けた手続きを始めると公約に掲げました。

そして、東部のドネツク州とルガンスク州、それに南部のクリミアを、ロシアによって「占領された土地」と位置づけたうえで「国の完全な領土復活を目指す」と強調し、軍の強化や兵器の近代化を最優先に進めるとしています。

ポロシェンコ大統領は選挙公約でさらに、東部やクリミアで受けた損害をロシアに賠償請求する方針を掲げるなど、ゼレンスキー氏と比べるとロシアへの強硬姿勢が際立っています。

ロシアとしては、今回のウクライナ大統領選挙でポロシェンコ大統領が再選することは望んでいません。

ポロシェンコ大統領は、アメリカが主導するNATO北大西洋条約機構への加盟を推し進めるなど、ロシアに対して強硬な姿勢を貫いているからです。

これに対して、新人のゼレンスキー氏は、東部地域で続く政府軍と親ロシア派の武装勢力の戦闘の終結に向けて、武装勢力の後ろ盾になっているロシアと話しあって打開策を模索する必要性も主張していて、ロシアはこうした発言を注視しています。

ロシア国営テレビは、ウクライナの大統領選挙に関するニュースの中で、ポロシェンコ大統領について批判的に伝える一方、ゼレンスキー氏に対しては好意的に伝えていて、プーチン政権の意向を受けたものとみられます。

ロシア大統領府のペスコフ報道官は19日、ゼレンスキー氏について「これまでとは違う見方を示すことを望む」と述べ、ウクライナとの関係が改善に向けて動き出すことに期待を示しました。

ただ、ゼレンスキー氏も、クリミアを併合したロシアに反発し、EU=ヨーロッパ連合と連携を強めたい考えで、ゼレンスキー氏が選挙で当選した場合でも、新政権がロシア寄りに大きくかじを切るとまでは考えていないものとみられます。

ロシアとしては、ゼレンスキー氏を支援するとみられる財閥の影響が強く、政治経験のないゼレンスキー氏が当選した場合、どこまで主体的に政権を運営していけるのかを疑問視していて、慎重に分析していくものとみられます。