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この報告書は、9年前、名古屋市で開かれた国連の会議で、さまざまな動植物や生態系を保全するため各国が取り組む「愛知目標」が採択されたことを受けて、日本を含む130か国余りの科学者などで作る政府間組織、IPBESが初めてまとめました。

報告書では、この500年間で、
ガラパゴス諸島ピンタゾウガメやインド洋のモーリシャスに生息していた大型の鳥ドードー
▽オーストラリアのフクロオオカミ、といった少なくとも680種の脊椎動物が人間の活動によって絶滅したと指摘しています。

そして、今も地球全体で100万種の動植物が絶滅の危機にひんし、保全の取り組みが進まなければその多くは今後数十年間で絶滅すると警告しています。

影響を与えている要因としては、
▽農地の拡大や沿岸の開発といった「海と陸の利用の変化」、
▽乱獲などの「採取」、
▽「気候変動」、
▽「汚染」、などを挙げています。

各国の科学者や研究者が地球規模の報告書をまとめて対策を求める動きは地球温暖化対策に続くもので、今後、各国がどのような政策を打ち出すのかが問われることになります。

地球規模で動植物や生態系の多様性を失わせている直接的な要因として、報告書では、
▽「陸と海の利用の変化」、
▽「生物の直接的な採取」、
▽「気候変動」、
▽「汚染」、
▽「外来種の侵入」、の5つを挙げています。

このうち「陸と海の利用の変化」は、主に農業や漁業、鉱業などの産業の発達を意味し、1970年以降、37億人から76億人へと倍に増えた世界の人口と増え続ける需要などに応えるため、これらの産業が拡大していったとしています。

中でも農業の拡大は、とりわけ生物の多様性が豊かな熱帯地域で生態系の破壊につながっていることが多く、
中南米での大規模な畜産業、
▽東南アジアでのパーム油の大規模栽培、などによって1980年から2000年にかけて世界全体の熱帯雨林が合わせて1億ヘクタール消滅したとしています。

また蜂や鳥など花粉を運ぶ動物の減少は農作物の生産量の減少を招き、最も深刻な場合には最大で5770億ドル(およそ64兆円)相当の損害が出るおそれがあるとしています。

さらに報告書では、動植物などが人間に果たす役割にも焦点を当て、食料やエネルギー、医薬品などの原材料として多くの恩恵をもたらし、人類の存在や生活の質の維持・向上に欠かせないとしています。

そして、生物の多様性が失われることは、環境に適応したり、さまざまな環境から身を守ったりする力を弱体化させることにつながり、人間を含むほかの動植物に深刻な影響を与えると警鐘を鳴らしています。

報告書をまとめたIPBES=「生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学・政策プラットフォーム」は、2010年に名古屋市で開催された生物多様性条約の締約国会議で「愛知目標」が採択されたことを受けて、2年後の2012年に設立され、事務局は国連環境計画のもとに置かれています。

今回の報告書は、さまざまな生物や生態系の現状を地球規模で科学的に分析することで、保全に向けた取り組みを各国に促し、政策を後押ししようと、初めてまとめられました。

作業には日本を含む50か国145人の専門家が参加し、およそ3年かけて最新の科学的な知見だけではなく、先住民族や伝統社会の知識も反映しました。

そして先月29日から今月4日にかけてフランスの首都パリで行われたIPBESの総会では、各国政府の代表が40ページ近い報告書を一語一語精査し、承認しました。

IPBESには130か国余りが参加し、今後は今回の報告書が各国の政策上の指針となることが期待されています。

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