布川事件 国と県に7600万円余りの賠償命じる #nhk_news https://t.co/wetrkiJbOF
— NHKニュース (@nhk_news) 2019年5月27日
昭和42年に茨城県利根町布川で男性が殺害されたいわゆる「布川事件」で、無期懲役の判決を受けた桜井昌司(72)さんは、平成23年に再審で無罪が確定しました。
取り調べで自白を強要されたり、誘導されたりして違法な捜査を受けたとして、国と茨城県に1億9000万円余りの賠償を求めました。27日の判決で東京地方裁判所の市原義孝裁判長は「取り調べで桜井さんを現場近くで見たという目撃者がいるなどとした警察官の発言はうそであり、取り調べは違法だ」と指摘しました。
また、検察に対しては捜査の初期に作られた捜査報告書に桜井さんらを現場近くで目撃したという記載がなかったことなど、裁判で重要な証拠を開示しなかったのは違法だと指摘しました。
そのうえで「違法行為が無ければ、遅くとも2審で無罪の判決が出され、直ちに釈放された可能性が高い」として、国と茨城県に対して合わせて7600万円余りの賠償を命じました。
弁護団によりますと、検察が証拠を開示しなかったことを違法と判断した判決は異例だということです。
桜井さんは無罪が確定したあと、身柄を拘束された29年間の刑事補償として、国から1億3000万円余りが支払われていました。
判決が言い渡された後、東京地方裁判所の正門の前で、弁護士らが「勝訴」や「国の責任を認める」などと書いた紙を掲げると、集まった支援者から歓声が上がりました。
桜井さんは支援者らを前に「きょうの判決を受けて、さらにえん罪の犠牲者の仲間たちと頑張っていきます。ありがとうございました」と話しました。
また、弁護団長の谷萩陽一弁護士は「捜査違反や証拠隠しの違反が認められた。感激しながら判決を聞いていた」と話していました。
判決後の会見で桜井さんは「勝つ確信は揺るぎなかった。4年前に亡くなった杉山さんに『昌司よかったな』と言ってほしかった。再審に続いて勝てたことについて、支援者の皆様や妻に感謝している。えん罪の仲間たちがすべて救われるように、これからも頑張っていきたい。ありがとうございました」と話しました。
谷萩弁護士は「裁判長は踏み込んだ判断をしてくれた。弁護団は勝つべき事件だと思っていたが、国賠訴訟で勝つことは難しい。裁判所は画期的な判断をして警察の偽証や検察の証拠隠しの違法を認め、国と県の責任を認めた」と述べました。
判決について水戸地方検察庁の横井朗次席検事は「判決内容を精査したうえで早急に関係機関や上級庁と協議して今後の対応を検討したい」というコメントを出しました。
また、茨城県警察本部の浅野芳徳監察室長は「まだ一部敗訴という結果しか聞いていないので、判決内容を精査したうえで、今後の対応を検討したい」と話しています。
不法行為に対する損害賠償については、民法の規定で賠償を請求できる期間が不法行為から20年までと定められ、通常はその期間を過ぎると請求権が無くなると考えられます。
これは「除斥期間」と呼ばれ、今回の裁判では、桜井さんが違法だと訴えた警察官の行為が行われてから、すでに20年以上が過ぎていることから、除斥期間も争点になりました。
これについて、27日の判決は「再審によって無罪判決が確定するまでの間も除斥期間が進むと認めると、無罪判決が確定するまでに長い期間を要したえん罪の被害者にとって著しく酷だ」と指摘しました。
そのうえで、除斥期間が始まる起点を再審によって無罪判決が確定した平成23年6月として、20年は過ぎていないと判断しました。