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日銀は今回の金融政策決定会合で、長期金利が0%程度で推移するよう大量の国債を買い入れ、短期金利はマイナス金利を続けるとした今の大規模な金融緩和策の維持を賛成多数で決めました。

国内の景気については「基調としては緩やかに拡大している」という判断を据え置きました。

しかし米中の貿易摩擦などで海外経済が減速するリスクが大きく、国内の企業や家計に与える影響を注視していく必要があるとこれまでより警戒感を強めています。

一方、日銀に先立って金融政策を決める会合を開いたアメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会は景気に配慮して利下げも辞さないという姿勢に転換しました。

ヨーロッパ中央銀行のドラギ総裁も講演で、さらなる金融緩和に踏み切る考えを明らかにしています。

日銀としては、米中の貿易摩擦の影響などを警戒しながら、少なくとも来年春ごろまでは今の緩和策を続ける方針です。

しかし、アメリカ、ヨーロッパをはじめ世界的に金融緩和策の拡大が議論されるようになり、今後、日銀の対応が問われる可能性があります。

日銀の黒田総裁は20日金融政策決定会合のあとの記者会見で、米中の貿易摩擦の影響などで「世界経済の下方リスクが強まっている」と述べ、これまでよりも慎重な景気認識を示しました。

一方、今回の会合に先立って、アメリカの中央銀行にあたるFRB連邦準備制度理事会は景気が減速する可能性が高まれば、利下げも辞さないという姿勢に転換しました。

これについて黒田総裁は「他国の中央銀行の政策が金融市場に影響を及ぼすこともある。その点を注意深く確認しながら国内の物価上昇の勢いが損なわれるようなことになれば、ちゅうちょなく追加緩和を検討する」と述べ、景気や物価の状況に変化が生じたならば、アメリカと同様、金融緩和策を強化するという姿勢を強調しました。

米中の貿易摩擦など世界経済が減速するリスクも指摘される中、ヨーロッパやオーストラリアも金融緩和の方向に向かおうとしています。

金融市場で日銀の金融緩和策がほかの国に比べて不十分だと受け止められれば、円高が進み、景気に悪影響が及ぶという懸念もあり、今後、日銀の判断が問われる可能性もあります。

世界各国で金融政策の方向がいま大きく変わろうとしています。

リーマンショックから10年余りがたって、アメリカでは景気の回復が際立ち、中央銀行にあたるFRB金利を引き上げ、金融政策の引き締めを進めていました。

ヨーロッパでも大規模な金融緩和策を去年で終え、利上げの準備に入っていました。

ところが、エスカレートする米中の貿易摩擦が世界経済に暗い影を落とします。

その影響もあって中国経済の減速も鮮明になりました。

世界各国で企業の生産や投資の勢いにかげりが見え始め、先行きに懸念が広がりました。

このため、欧米の中央銀行は引き締めの路線を転換し、再び金融政策を緩和する方向にかじを切り始めています。

たとえば、アメリカのFRBは3年半前から続けてきた金利の引き上げをことしに入って停止。

今月19日の会合では、景気の減速を食い止めるため利下げも辞さないという姿勢に転換しました。

ヨーロッパ中央銀行もドラギ総裁が18日の講演で、政策金利の引き下げなど再び金融緩和の路線にかじを切る考えを明らかにしました。

さらに、オーストラリアでもおよそ3年ぶりに金利を引き下げるなど、世界の主要な国々の中央銀行が金融政策を緩和する方向に向かおうとしています。

世界中がいっせいに金融緩和に向かうと円高が進む可能性があります。

仮にアメリカやヨーロッパで利下げが行われると金利が下がるドルやユーロを売って、ほかの通貨を買う動きがでやすくなります。

その結果、釣り合いが取れていたシーソーが急に傾くように円高に向かう可能性が否定できないのです。

実際、2008年のリーマンショックのあと、アメリカのFRBが行った空前の規模の金融緩和は急速な円高をもたらしました。

さらに、東日本大震災の投機的な円買いも重なって1ドル=75円台まで円が急騰するなど、歴史的な円高水準が続き輸出企業が打撃を受けました。

日銀は少なくとも来年春ごろまで今の金融緩和を維持する方針です。

ただ、アメリカやヨーロッパが再び金融政策を緩和する方向に動くならば、日銀も欧米に追随して追加の金融緩和に踏み切らざるをえないのではないかとみる市場関係者もいます。

市場では、早ければアメリカは来月にもおよそ10年ぶりに利下げに踏み切るという見方が広がっています。

日銀の次の金融政策決定会合は来月下旬に控えています。海外の動きをにらみつつ対応が問われる可能性があります。