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EUは17日、ベルギーの首都ブリュッセル首脳会議を開き、イギリスとまとめた離脱条件をめぐる合意全会一致で承認しました。

イギリスとEUはこれまで、北アイルランドアイルランドの国境管理の問題で折り合いがつかず、協議が難航していました。

しかし今回の合意では、モノの移動を円滑に行えるようにするため、北アイルランドについてはEUの物品のルールが適用されることなどが盛り込まれています。

EUのトゥスク大統領は首脳会議のあとの記者会見で「合意によって混乱も、EUとイギリスの間のいさかいも避けられる」と述べ合意を歓迎しました。

合意内容はイギリスとEU、それぞれの議会の承認が必要で、イギリスでは19日に採決が行われる予定です。

ただ、野党のほかジョンソン政権に閣外協力する北アイルランド地域政党も「地域の経済的な繁栄を損ねる」などと反対しています。

ジョンソン首相が採決までのわずかな期間に、議会を説得し過半数の支持を取り付けることができるのか予断を許さない状況です。

EUとイギリスの間で合意していたこれまでの案では、国境の管理について根本的な解決策が見つかるまでイギリス全土が事実上、EUの関税同盟にとどまることが盛り込まれていました。

これではいつまでもEUのルールに縛られ、新たにほかの国と貿易協定を結ぶこともできないなどとしてイギリス国内では反発があがっていました。

今回、合意した案ではこの項目は削除されました。

一方で、離脱後の急激な変化を避けるために設けられる来年末までの「移行期間」が終了したあとは、新たなルールが適用されることが盛り込まれました。

まず、「移行期間」の終了と同時にイギリス全土は、EUの関税同盟から抜けることになりますが、アイルランドと国境を接する北アイルランドについては、流通する物品に関して規格や安全基準などEUのルールが適用されます。

また、物品がイギリス本土から北アイルランドを経由してEU域内に入る際は税関検査北アイルランドアイルランドの国境ではなく、イギリス本土と北アイルランドの間で行うことになります。

さらに、物品に対する付加価値税については、イギリスの法律が北アイルランドにも適用されますが、品目によって、北アイルランドがイギリスとは異なる付加価値税を適用することも認められます。

こうしたルールを適用し続けるかどうかは、北アイルランド自治政府が4年ごとに議会で決定するとしています。

一連の合意内容について、北アイルランド地域政党などは「イギリスとの一体性が損なわれる」などとして強く反発しています。

ジョンソン政権に閣外協力する北アイルランド地域政党DUP民主統一党は声明を発表し「イギリス政府とEUが合意した内容は北アイルランドの経済的な繁栄を損なうもので、イギリスの国家の形をゆがめてしまう」として反対の意向を改めて表明しました。

イギリス政府がEUと合意した離脱条件はイギリス議会で過半数の支持によって承認される必要がありますが、与党・保守党の勢力は閣外協力するDUPを合わせても過半数に満たないのが現状です。

このためジョンソン首相にとっては、DUPの議員10人の支持がないと、議会の承認を得るために野党からの造反に一層頼らざるをえない状況に陥ることになります。

ヨーロッパ経済に詳しい第一生命経済研究所の主席エコノミスト、田中理さんに、今後の見立てを聞きました。

▽イギリス議会の承認は
田中さんは、次の焦点について「イギリスとEUが離脱条件に合意したあと必要なのが、合意した離脱協定案がイギリス議会で承認されることだ」としたうえで「メイ前首相はこれまでに3度、議会で否決されている。現在、北アイルランド地域政党DUP民主統一党は協定案に反対する姿勢を崩していないし、野党も反発している。承認されるかどうかは1票、2票差というかなりギリギリの線になるだろう」と分析しています。

▽議会で承認された後は
イギリス議会で離脱協定案が承認された場合、議会は上院と下院で離脱協定案の法律を可決し、立法化する必要があります。
これについて田中さんは「通常は審議に1か月かかるので、可決されるとしても今月末の離脱には間に合わず、期限を短期的に延期する可能性があるが、合意して離脱することに変わりはない」と述べ、イギリスの離脱が11月以降になる可能性もあるとしています。

▽議会で否決された場合は
一方、イギリス議会が離脱協定案を否決した場合について「可能性は2つある。否決されるとジョンソン首相は、延期をEUに要請することが義務づけられている。EUがその要請を全会一致で受け入れれば離脱が延期される。その間、ジョンソン首相はイギリス議会を解散し、自身が率いる与党・保守党の議席の上積みをはかるだろう。そして改めて採決に持ち込み、法律を成立させて離脱するというシナリオだ。もう1つは、ジョンソン首相が、延期要請を拒否する場合だ。法律を無視して、今月末までに何があっても離脱すると言い続け、法律は無効だとして訴訟を提起する可能性もあり得る」としています。

▽合意なき離脱のリスクは
そのうえで、田中さんは「合意なき離脱」のリスクについて「ここまでこぎ着けた合意を変更するのはばかげていると考えているはずだ。今月末の離脱を延期し、議会解散をして選挙に持ち込めば、保守党は議席を増やす可能性が高い。その後、再度採決に踏み切る可能性のほうが高く、合意なき離脱のリスクは、以前よりも低下していると考えている」と分析しました。

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