英 EU「合意なき離脱」危機再び 首相が合意反故にする法案提出 #nhk_news https://t.co/RAQ9Gllo50
— NHKニュース (@nhk_news) 2020年9月18日
イギリスのジョンソン政権はことし1月に離脱した際のEUとの合意のうち、イギリスの北アイルランドについての取り決めをほごにする内容を含む法案を今月議会に提出し、審議が続けられています。
ジョンソン首相は14日、議会で法案はいざというときに国内の物流を円滑にするための安全策だと法案の正当性を主張しました。
イギリスは離脱後の移行期間が終わる年明けに向けて自由貿易協定などの交渉をEUと続けていて、ジョンソン首相の強硬な姿勢の背景にはみずからが示した来月15日の交渉の期限を前に難航する交渉を優位に進める狙いがあるとみられています。
しかし、EUは強く反発し、国際法に違反するものだとして今月末までに合意に違反する条項を法案から撤回するよう求めていて、フォンデアライエン委員長は「合意は双方の議会が承認したもので、一方的に変更することはできない」と述べています。
対立が一段と激しくなり、自由貿易協定などの交渉が決裂すれば、移行期間が終わる年明けからは双方の貿易に新たに関税が発生し、新型コロナウイルスで落ち込んだ経済に、さらなる打撃となるだけに、懸念が高まっています。
今回の法案は、離脱の条件をめぐっておよそ2年半続けられたイギリスとEUの交渉の中で、最も難航したイギリスの北アイルランドの国境管理の問題にかかわるものです。
北アイルランドでは、イギリスからの分離の是非をめぐって1990年代までおよそ30年にわたって紛争が続き、3000人以上が犠牲になりました。
このため、離脱に際しては、北アイルランドとEUの加盟国であるアイルランドの間に物理的な国境ができることを避けるため、イギリスが離脱したあとも、北アイルランドはモノの行き来に関して、EUのルールに従うことで双方は合意しました。
しかし法案では、イギリスとEUが進めている自由貿易協定などの交渉が決裂した場合、ルールはイギリスが決められるなどとしていて、双方の合意をほごにする内容となっています。
イギリスとEUの間では離脱をめぐって混乱が続いてきました。
イギリスとEUはおととし、離脱の条件でいったん合意したもののイギリス議会の同意が得られず、メイ前首相は本来、去年3月とされていた離脱を延期するよう要請を繰り返しました。
EUは2度にわたって延期を認めましたが、メイ前首相はイギリス国内をまとめることができずに辞任し、合意案は宙に浮く結果となりました。
その後イギリスでは「合意なき離脱も辞さない」という強硬姿勢を打ち出すジョンソン首相が就任、改めて離脱協定の交渉が始まりました。
そして去年10月に新たな合意に至り、3度目となる離脱の延期を経てことし1月、イギリスはEUを正式に離脱しました。
離脱後、ことしいっぱいは急激な変化を避けるための移行期間とされ、ことし3月にはその後の関係を決めるため、自由貿易協定などの交渉に入りましたが、イギリスとEUの立場には大きな隔たりがあるうえ、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で交渉のスケジュールも遅れ、十分な成果が打ち出せないまま交渉期限が迫っています。
こうした中で、イギリスのジョンソン政権が離脱の際のEUとの合意を反故にする内容を含む法案を議会に提出し、混乱が一段と深まる事態となっています。
ジョンソン政権が提出した法案をめぐっては、イギリス国内でも批判が相次いでいます。
現職の閣僚であるルイス・北アイルランド担当相は、議会で「限定的な形ではあるが、国際法に違反することになる」と認め、与野党の議員から「国際社会の信頼が失墜する」などの声があがっています。
ジョンソン首相は16日、法案の一部を修正することで反発する与党議員たちと合意しましたが、EUとの合意をほごにする内容が削除されるわけではありません。
保守党のメージャー元首相と労働党のブレア元首相は、共同で新聞に寄稿し、ジョンソン政権の対応を「国に恥をかかせるものだ」と厳しく批判したほか、メイ前首相やキャメロン元首相も強い懸念を示すなど、歴代の首相経験者たちが、相次いで反発する異例の事態となっています。