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和田先生:いえ、日本の刑法学の中でバランスが大きく変わってきました。その原因として一番大きかったのが、裁判員制度ロースクール制度の開始という司法制度改革だと思います。それ以前は、実務家には、「学者が言っていることは結局役に立たん」みたいなイメージをもたれ、逆に、研究者側からすると、「実務はちゃんとした理屈なしに動いてしまっている」というように、別々の世界をそれぞれ勝手に生きるという印象が強かったわけです。それが、司法制度改革以降は、両者をきちんと繋がないといけないという要請が相当強まってきましたし、大学や学会も現にそういう雰囲気になりました。
 ロースクール制度が始まって、現にそこで教える状況になり、体系性だけ追究していけばいいというものではないことが、まさに自分の日々の行動の内容として要請されるようになってきました。刑法学が重点を置くべきポイントが相当大きく変わって、良い学説だと判断される基準も変わってきていると思います。現実の判例をより適合的に説明して、次の判断の指針となるような解釈をし、総合的な判断ができる枠組みを提示しないといけないという具合に変わってきました。それまでは判断する基準が少なかったというか、もっとスパッと切っていたのが、いろいろな事情を考慮した上で、しかも理論的にきちんと根拠づけられるものでないといけないという要請が強まったということです。それは研究者としての感覚からすると「外圧」だったわけですが、結果としては非常に良かったことだと思います。

宍戸先生:憲法行政法も、法科大学院制度によって、より実務的な議論が重視されるようになってきた点は同じだと思います。

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