ゴーン元会長逮捕からまもなく1年 国際捜査の全容判明 #nhk_news https://t.co/kNyXGvDIwH
— NHKニュース (@nhk_news) 2019年11月17日
日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告(65)は去年の11月19日、レバノンから到着したジェット機を降りた直後に羽田空港で東京地検特捜部に逮捕され、延べ130日間にわたって身柄を拘束されました。
元会長はみずからの報酬を有価証券報告書に少なく記載した罪と、日産の資金を不正に支出させた特別背任などの罪で起訴され、ことし4月に保釈されたあとは弁護団との打ち合わせなど裁判の準備を進めています。
一連の事件は日本の捜査権限が及ばない海外が主な舞台で、特捜部が捜査共助を要請した国は中東のオマーンやレバノンのほか、ルノーの本社があるフランス、それに資金移動に使われたとみられる金融機関があるスイスや元会長の息子が経営する会社があるアメリカなど少なくとも8か国に上ることが関係者への取材でわかりました。
特捜部が手がけた国際捜査としてはこれまでで最大の規模で、フランスとオマーンでは日本側の要請に応じてルノーの関係者や日産の現地代理店の関係者への事情聴取が行われ、特捜部の検事も立ち会ったということです。
また、特捜部の捜査結果の一部は海外の当局にも提供され、フランスではことし7月、現地の捜査当局が元会長が会社の資金を流用した疑いでルノー本社の捜索に乗り出し、捜査は現在も続いているとみられます。
ゴーン元会長の裁判は早ければ来年4月にも始まる見通しで、国境を越えて「ゴーンショック」の影響が続く中、裁判や海外での捜査の行方が注目されます。
ゴーン元会長は、15日午前9時ごろ、上下黒のスーツ姿で都内の弁護士事務所を訪れ、記者の問いかけには一切答えず、無言で建物の中に入っていきました。
ゴーン元会長はことし4月に保釈されたあと、弁護団との会議に参加したり裁判の資料を読み込んだりして過ごしているほか、娘と京都などに旅行することもあるということです。
一方、妻のキャロルさんとは保釈の条件で会えない状態が続いています。
ゴーン元会長をめぐる一連の事件は、逮捕からまもなく1年になる今も国際的に高い関心を集めています。
アメリカの有力紙、ウォール・ストリート・ジャーナルはことし3月、元会長が最初に保釈された際のニュースを写真付きで1面トップで伝えたほか、ことし9月の西川前社長の辞任も1面で報じました。
ウォール・ストリート・ジャーナルのピーター・ランダース東京支局長は「日産はアメリカでもかなり広く知られているのでゴーン元会長が何をしているか、裁判の行方はどうなるか、ルノーとのアライアンスがどうなるのかなど今でもかなり関心が高い」と話しています。
また、今回の事件では、日本の刑事司法の在り方について海外メディアから批判的な報道が相次いだことも特徴でした。
ランダース支局長は「ゴーン元会長が拘置所で尋問を受けるときに弁護士が同席できないことなど、初めて日本の司法制度を知ってびっくりすることが多かった。裁判の取材でも前例を理由に公開されない情報が多く、検察や裁判所はもっと情報公開を進めるべきではないか」と指摘しました。
そのうえで「海外で日本国内の裁判がここまで注目されることは歴史的にもなかった。これからも熱心に積極的に取材したい」と述べました。
「ゴーンショック」は外国人役員をヘッドハントし、日本企業に紹介する業界にも影響を与えていたことがわかりました。
東京 港区にあるコンサルティング会社では逮捕からの半年間、日本企業に役員クラスの外国人を仲介する交渉が中断するケースが10件近く相次ぎ、会社の業績にも影響が出たといいます。
この会社のヘッドハンターのケーシー・エーブルさんは、交渉中だった当時の外国人の反応について、「有罪判決が出ていないのにゴーン元会長が拘置所にずっと入っていることが非常にショックなようでした。自分が何をしたかわからないのに拘束されるのが怖くなったという人もいました」と振り返りました。
そのうえで「東芝やオリンパスの問題もあり、私たちの業界では日本企業はコーポレートガバナンスが緩いという印象になっている。ガバナンスの向上は競争力強化にもつながるので、日本企業が解決すべき課題の1つだ」と指摘しています。
ゴーン元会長の裁判では、今回の捜査で使われた「司法取引」の妥当性が争点の1つになる見通しです。
検察は去年、日本に導入されたばかりの「司法取引」を使って、日産の元秘書室長ら2人を不起訴にする見返りに、2人から得た供述や書類などの証拠をもとにゴーン元会長を起訴しました。
弁護団は、この「司法取引」について「元会長を失脚させる目的で行われたもので違法だ」と厳しく批判しています。
これについて、元検事の高井康行弁護士は司法取引は、権力争いや追い落としが背景にあることを前提とした制度だと指摘します。
そのうえで「そうした動機を背景に司法取引に協力した人の供述の信用性は裁判で厳しく吟味されなければならない」と述べ、裁判では司法取引で得られた証拠を裁判所がどのように評価するかがポイントになるという見方を示しました。