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この疑惑は、トランプ大統領がことし7月、ウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談で、民主党の有力候補、バイデン前副大統領に不利な情報を得ようと、軍事支援と引き換えに捜査を要求したとされるもので、野党・民主党は、議会下院で弾劾に向けた調査を進めています。

21日、5日目となる議会の公聴会では、ウクライナにあるアメリカ大使館のホームズ参事官が、電話会談の翌日に行われたトランプ大統領とソンドランドEU大使との電話でのやり取りについて証言しました。

それによりますと、トランプ大統領は電話で「彼は捜査をするのか?」と述べ、ゼレンスキー大統領に対し、バイデン氏の息子が勤めていた会社の捜査を行うことを要求していたということです。

そのうえでホームズ氏は「私の明確な印象は、大統領が軍事支援を保留していたのは、ウクライナに捜査をするよう圧力を強めるためのものだった」と述べ、ウクライナへの軍事支援が当時、一時停止されたのは捜査に応じさせるための圧力だったとの認識を示しました。

また、公聴会ではホワイトハウスで欧州・ロシア上級部長を務めたヒルも証言し、ことし7月に、ウクライナ政府に捜査を要求する計画を耳にした際、「不適切だ」と考え、当時のボルトン大統領補佐官も「麻薬の取り引きには関わらない」と述べて、外交を政治利用する不正な行為だとの認識を示していたことを明らかにしました。

トランプ大統領はこれまで、ウクライナに対し「何も求めていない」と述べ、自身の潔白を主張していますが、民主党公聴会で得た一連の証言は大統領の不正への関与を示すものだとして、攻勢を強めるものとみられます。

この疑惑はトランプ大統領がことし7月、ウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談で、民主党の有力候補、バイデン前副大統領に不利な情報を得ようと、軍事支援と引き換えに捜査を要求したとされるものです。

弾劾に向けた調査を進める民主党は議会下院で21日まで5日間にわたり公聴会を開き、全米に生中継されるなか、政府高官ら合わせて12人が証言しました。

20日には疑惑のカギを握るとされるソンドランドEU大使が「見返りがあったかどうか聞かれれば、答えはイエスだ」などと述べ、トランプ大統領側がウクライナに対し、首脳会談の見返りにバイデン氏らをめぐる捜査を要求していたと証言するなど、一連の公聴会では外交が政治目的のために利用されていたと指摘する証言が相次ぎました。

民主党ペロシ下院議長は21日、記者会見しトランプ大統領が個人的な利益のために政権を利用した証拠は明白だ」と述べ、一連の証言を通じて大統領の不正に関する明白な証拠を得られたという認識を示しました。

今後、民主党側は公聴会で得られた証拠をまとめたうえで、弾劾訴追を決議するための弾劾条項を起草する権限を持つ司法委員会に送り、来月にも下院本会議で弾劾訴追に踏み切る構えです。

一方、トランプ大統領と与党・共和党「いずれの証言にも信用性はない」などとして徹底抗戦を続ける方針で、来年の大統領選挙を見据えて与野党の駆け引きが激しさを増しています。

弾劾に向けた調査を行う下院の情報委員会は今後、一連の公聴会での証言を総括したうえで報告書にまとめ、司法委員会に送付します。司法委員会は報告書をもとに弾劾訴追を決議するための弾劾条項を起草します。

ただ今回の一連の公聴会ではポンペイ国務長官ホワイトハウスのマルバニー首席補佐官代行、さらにボルトン前補佐官など、トランプ政権幹部らの関与についての証言が相次いだことから、民主党側は証拠をさらに固めるために司法委員会での取りまとめ作業と並行する形でこうした幹部らにも証言を求めるものとみられています。

弾劾条項は司法委員会での決議を経て民主党過半数を握る下院本会議に送られることになっており、アメリカのメディアは来月のクリスマスの前までに民主党が弾劾訴追に踏み切る可能性があると伝えています。

訴追されると今度は議会の上院で弾劾裁判が開かれることになります。今の議会上院は与党・共和党が多数派を占めるため、大統領が罷免される3分の2以上の賛成を得るのは容易ではないとみられています。

民主党としては仮に大統領を罷免できなくても、公聴会や弾劾裁判を通じてトランプ氏の大統領としての適正に疑義を投げかけ、世論を味方につけることで来年秋の大統領選挙に向け流れを引き寄せたい考えです。

また来年2月からは党の候補者を選ぶ予備選挙が始まるため、民主党は弾劾裁判が長期化して有権者の関心が予備選挙に向かないことは避けたい考えで、一連の弾劾手続きをスピード感を持って進めたいものとみられます。

一方、トランプ大統領と与党・共和党「そもそも、ウクライナ側がトランプ大統領から圧力を受けたことを否定している」として、弾劾手続きは民主党による「政治ショーだ」と主張し、徹底抗戦する構えです。

さらに仮に上院での弾劾裁判で訴えが否決されれば、トランプ大統領は「無実が証明された」と民主党への攻勢をかえって強める可能性もあります。

ウクライナ疑惑をめぐる公聴会は、アメリカの4大ネットワークと呼ばれる主要テレビ局すべてが全米に生中継し、大きな関心を持って伝えられました。

テレビの視聴率などのデータを提供する調査会社ニールセンによりますと、今月13日の第1回目の公聴会では、累計でおよそ1380万人が生中継か時間差放送を見たと推計しています。

一方、公聴会の評価や弾劾調査への支持不支持は、大きく分かれています。

政権に批判的とされるメディアは「トランプ大統領が支援と引き換えにウクライナに調査を要求していたとその場にいた政府関係者が証言した」として、不正の疑いが濃くなったと評価しています。

そのうえで、民主党トランプ大統領の行為を「贈賄にあたる」と見ているとして、議会下院で大統領が訴追され、上院で弾劾裁判が開かれる公算が強まったという見通しを伝えています。

これに対し、トランプ大統領がたびたびコメントを引用するFOXニュースは公聴会で証言した政府関係者は電話会談に立ち会っていたが、トランプ大統領と直接、会話したことがない」として証言の信用性を問題視しました。

そして、ウクライナのゼレンスキー大統領が『圧力を受けていない』と言っている以上、議会での調査に意味はない」として、調査を早期に終えるべきだと主張しています。

専門家は、こうしたメディアでの論調の差が国民の政治ニュースの受け取り方の違いを現しているとして、アメリカの分断を象徴していると指摘しています。

こうした見方の差は、弾劾の支持不支持にも現れていて、各種世論調査の平均値では21日現在、トランプ大統領の弾劾に賛成する人が48%、反対する人は44.7%とほぼきっ抗しています。

内訳を見てみますと、民主党支持者の8割以上が弾劾を支持しているのに対して、共和党支持者では9割が弾劾に反対しています。

また、トランプ大統領の支持率も、公聴会の前は44%、公聴会の後は44.3%とほぼそのままで、「岩盤」とも表される支持層の底堅さを物語っています。

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