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フランシスコ法王はローマ法王としては35年ぶりにタイを訪れていて、21日夜は首都バンコクにある国立競技場でミサを行いました。

タイのカトリック教会の信者は人口の1%未満ですが、当局によりますと、参加者は付近の施設も合わせておよそ6万人に上りました。

冒頭、フランシスコ法王がオープンカーに乗って場内をまわると、法王のイラストが入ったTシャツを着ている人や、タイとバチカンの国旗を手にした人たちから歓声があがっていました。

タイをはじめ東南アジアでは、女性や子どもを強制的に働かせたり売春させたりする、いわゆる「人身売買」の被害が世界でも特に深刻だとされていて、フランシスコ法王はミサの中で「売春や人身売買の犠牲になり、人間の根源的な尊厳を傷つけられている女性や子どもたちが思い浮かぶ」と述べました。

そのうえで、こうした弱い立場の人たちはだれもが同じ家族の一員だとして支援を呼びかけました。

ミサと一連のイベントは合わせて2時間半におよび、フランシスコ法王は途中、両脇を抱えられて歩くなど疲れを見せる姿もありました。

フランシスコ法王は23日、タイを出発して日本に向かいます。

フランシスコ教皇ローマ教皇としては35年ぶりにタイを訪れていて、22日はバンコク近郊にある教会を訪問しました。

国民の9割以上が仏教徒のタイですが、国内にカトリック教会が設立されてから350年と歴史は古く、教会では地元の子どもたちや修道女など大勢がフランシスコ教皇を歓迎しました。

フランシスコ教皇はオープンカーに乗って教会の敷地内をゆっくりと移動し集まった人たちにあいさつをしていましたが、現地は30度を超える暑さで時折、強い日ざしにまぶしそうにしながらも終始、笑顔を絶やしませんでした。

教会では神学生らが参加する集いが開かれ、修道女を目指す女性が家族の誰もが仏教徒の中で葛藤を抱えながら学んでいることを打ち明けると、フランシスコ教皇「私たちの信仰が外国人の宗教と受け取られないようにタイに溶け込んだものにしなければなりません」と語りかけていました。

フランシスコ教皇は23日朝、タイを出発して日本に向かい、夕方に羽田空港に到着し、24日に被爆地の長崎と広島を訪れます。

そして25日の月曜日には東京で東日本大震災の被災者と会うほか東京ドームでのミサなどを予定しています。

フランシスコ教皇の来日にあわせ、警視庁や広島、長崎両県警は、合わせておよそ1万人の態勢で警備にあたることにしていて、22日は、首都高速道路湾岸線の大井パーキングエリアで警視庁の警察官がゴミ箱や側溝の中に不審なものが置かれていないか確認していました。

警視庁は教皇が滞在する千代田区にあるローマ教皇庁大使館や、立ち寄り先に警備の部隊を配置するほか、周辺で車両の検問を行って警戒することにしています。

また、不審なドローンに対処する専門部隊や、テロなどが起きた際に銃器で対応する部隊、それに臨海部で水上バイクに乗って対応する部隊を配置するほか、多くの人が集まる東京駅などのターミナル駅ではパトロールを強化することにしています。

フランシスコ教皇は、23日からローマ教皇として38年ぶりに来日し、24日は被爆地の長崎と広島を訪れるほか、25日には東京で天皇陛下との会見や東京ドームでの大規模なミサが予定されています。

【11月23日 午後】
▽タイから東京に到着

【24日 午前】
▽東京から長崎へ移動
▽爆心地公園で核兵器廃絶に向けたメッセージ
▽西坂公園で日本26聖人に祈り

【24日 午後】
長崎県営野球場でミサ
広島へ移動
▽平和のための集会でメッセージ
東京へ移動

【25日 午前】
東日本大震災の被災者と面会
天皇陛下と会見

【25日 午後】
▽東京ドームでミサ
▽安倍首相と会談

【26日 午前】
上智大学でスピーチ
▽東京を出発しバチカン

フランシスコ教皇核兵器廃絶に向けた取り組みに力を入れていて、被爆地の長崎で核廃絶に向けたメッセージを打ち出します。

教皇が爆心地で献花する花を手渡すのは、長崎の被爆語り部、下平作江さん(84)です。下平さんは50年近くにわたって、長崎を訪れる修学旅行生などに被爆体験を語り、核廃絶を訴え続けています。

下平さんは当時の状況について、「1発の原子爆弾で、たくさんの尊い命が、『助けて』の『た』の字も言えないで死んでいった。生き残った者たちが探そうと思っても、無残な姿で、自分の親もきょうだいもわからなかった」と話していて、その惨状をフランシスコ教皇に伝えたいと考えています。

そして、フランシスコ教皇が爆心地で述べる核廃絶のメッセージについて、「漠然と『ダメだダメだ』と言っても、『何がダメなのかわからない』となってしまう。しっかりわかるように伝えていただいて、それを私たちが受け止めて、1歩1歩平和な道に向かって、前進していけたらいいなと思っています」と述べました。

フランシスコ教皇は長崎のあと、38年ぶりに被爆地の広島を訪れ、広島市平和公園で開かれる「平和のための集い」に出席してスピーチを行う予定です。

集いには被爆者などおよそ2000人が出席する予定で、会場の平和公園では22日から設営が始まり、作業員らが出席者の席や照明を設置するなど準備が進められています。

平和公園では、24日午後1時から立ち入りが制限され、原爆資料館が一時休館となるほか、周辺の道路でも24日午後6時から2時間、交通規制が行われ、厳戒な警備態勢がとられます。

近くの平和大通りなどには交通規制を知らせる看板が立てられ警察や広島市などが理解と協力を呼びかけています。

市内に住む90代の被爆者の男性は「広島を見ていただいて、核兵器は作ることも持つこともだめだと世界に発信してもらえると期待しています」と話していました。

フランシスコ教皇に2度面会したことがある聖心女子大学学長の高祖敏明さんは、上智大学を運営する法人の理事長を務めていた平成25年と平成26年の2度にわたり、バチカンやローマでフランシスコ教皇と面会しました。

このときの印象について高祖さんは「やさしくて自然と笑みがこぼれてくるような、非常に温かい印象の方でした。昔からの友達のように迎えてくださったので、お目にかかった時から打ち解けることができるような感じがしました」と振り返りました。

その際、高祖さんは、フランシスコ教皇に日本を訪れて若者にメッセージを送ってほしいと依頼したということです。

高祖さんは「フランシスコ教皇は、いま自分がいるところから出かけていく、異文化だったところに橋をかけていくということを非常に強調されています。日本では、宗教はプライベートな空間の信仰の世界で、政治や経済とは別だと考えられていますが、フランシスコ教皇から見ればそれはみんなつながっています。『すべての命を守るために』とおっしゃっていますが、環境問題、核兵器や平和の問題、死刑廃止の問題、行き過ぎた経済の問題など、すべての行動がそのことばに集約されていると思います」と話しました。

フランシスコ教皇は、訪日前に公開したメッセージで日本に対し「皆さんの国は戦争がもたらす苦しみについてよく知っています。人類の歴史において核兵器による破壊が二度と行われないよう皆さんとともに祈ります」と述べ、被爆地で核兵器の廃絶を訴える考えを示しました。

高祖さんは、1人でも多くの若者が、こうしたフランシスコ教皇のメッセージに触れてほしいとしていて「フランシスコ教皇の出身のイエズス会は、若者の教育は世界の変革だとしています。現代の世界から未来に向けたメッセージを発せられると思いますので、それが若者たちを鼓舞して自分たちも世界に向けて頑張っていこうという力になってほしい」と話していました。

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