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ニューヨーク州新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるため、警察や食料品の販売店などで働く人を除くすべての人の出勤を禁じる行政命令を出してから、22日で1か月になります。

対策の陣頭指揮にあたるクオモ知事は21日の会見で、あらたに481人の感染者が死亡したとする一方、入院する人や集中治療室で治療を受ける人の数は減り続けているとして、感染はピークを過ぎたという認識を示しました。

ただ医療従事者や医療器具の不足は依然として深刻で、州は医学部の学生を医療現場に派遣するよう指示を出したり、他の州の医師にも支援を呼びかけたりしています。

経済にも深刻な影響が及び、失業保険の申請件数は先週までの4週間であわせて118万件にのぼっています。

ニューヨーク州は外出制限を来月15日まで延長していて、経済活動の再開は20日に始めた「抗体検査」で州の人口のどれくらいがすでに感染したことがあるのかなど、実態を把握したうえで慎重に判断することにしています。

アメリカでは新型コロナウイルスの感染拡大による経済への影響を和らげるため、先月、日本円で総額230兆円に上る過去最大規模の経済対策が成立しました。

しかし休業などに追い込まれた中小企業が従業員の給与を支払い続けるために用意された37兆円の資金が申請開始から2週間で枯渇し、政府が議会に対して追加の経済対策を要請していました。

これを受けて議会の与野党幹部は21日、新たに総額4800億ドル(日本円で52兆円)に上る予算をあてることで合意し、ただちに議会上院で法案が可決されました。

法案は近く下院でも採決され、成立する見通しです。

追加の対策では中小企業への資金支援として33兆円が計上され、野党・民主党の要請で零細企業を優先する条件がつけられたほか、医療と検査の体制の整備に10兆円余りが充てられています。

今回の経済対策は緊急の予算措置の第4弾となりますが、トランプ大統領はさらに公共事業などへの投資にも意欲を示していて、巨額の財政出動によって経済の下支えを図る構えです。

トランプ大統領は21日、感染がもっとも深刻な状況が続くニューヨーク州のクオモ知事をホワイトハウスに迎えて会談しました。

会談後、クオモ知事は、アメリカメディアの電話インタビューに「会談は有意義だった」と述べたうえで、現在、州内で1日当たりおよそ2万件実施しているウイルス検査を2倍の4万件に増やしたいと大統領に伝えたほか、ウイルス対策をさらに強力に進めるため資金の支援を求めたことを明らかにしました。

これに対し、トランプ大統領も記者会見で「有意義な会談だった」と述べたうえで、今後、数週間でニューヨーク州の検査を倍増させるために連邦政府が協力していく考えを示しました。

トランプ大統領とクオモ知事は共にニューヨーク出身ですが、共和党民主党で党派が異なることや、新型コロナウイルスへの危機対応をめぐってこれまで対立も表面化してきました。

さらに、経済活動の再開をめぐっても、トランプ大統領は秋の大統領選挙も視野に早期の再開を目指したい考えに対し、クオモ知事は再開を急げば感染が再び拡大するおそれがあるとして慎重な姿勢で、会談の行方に関心が集まっていました。

ニューヨーク州は、厳しい外出制限を始めてから22日で1か月になりますが、深刻な感染拡大が続く中、今回の会談でウイルス対応をめぐる大統領と州知事の対立はひとまず回避されたと受け止められています。

アメリカの主要メディアのウォール・ストリート・ジャーナルとNBCテレビが今月13日から15日までに全米の900人を対象に実施した世論調査では、回答者の6割近くが経済活動の再開に慎重な姿勢を示しています。

調査では「外出制限の解除は早すぎる」と回答した人が58%となった一方で、「外出制限が長すぎる」と回答した人は32%で、経済活動の再開を急ぎ、感染が再び拡大することを懸念している人のほうが多かったとしています。

また、調査の回答者を党派別に分析した結果、民主党支持層の77%、無党派層の57%が「外出制限の解除は早すぎる」と回答した一方、共和党支持層で同様の回答をした人は39%で、逆に「外出制限が長すぎる」と回答した人が48%と、経済活動の再開を求める回答が全体の半分近くを占め、党派による考えの違いも浮かび上がっています。

アメリカでは20日の時点で、全米の9割に当たる45の州と首都ワシントンで住民の外出を制限する措置がとられています。

多くの州では警察や医療従事者、スーパーの店員や電気、ガス、水道、公共交通機関といった社会基盤の維持に必要な職業の人を除いて、すべての社員や従業員などの出勤を禁じていて、東部ニューヨーク州では違反した事業者には、罰金や事業所の閉鎖などの罰則を科すことにしています。

また、南部オクラホマ州は65歳以上の住民と持病のある人に限って、外出を控えて自宅にとどまるように命じています。

一方で中西部ノースダコタ州サウスダコタ州ネブラスカ州アイオワ州、南部アーカンソー州の合わせて5つの州は住民の外出を制限する措置をとっていません。

その理由について、サウスダコタ州のノーム知事は17日の記者会見で「感染を広げないためにサウスダコタの人たちが、責任ある行動を取ってくれると信頼している」と述べています。

また、一部の州は経済活動の段階的な再開に向けて動きだしていて、このうち南部フロリダ州は17日、一部の地域で時間を限定してビーチと公園を開放したのをはじめ、20日からは南部サウスカロライナ州衣料品店や書店、生花店など一部の業種の営業再開を認めています。

アメリカでは、トランプ大統領が経済活動の再開に向けた指針を発表した今月中旬から、全米各地で外出規制の緩和や経済活動の再開を訴えるデモが相次いでいます。

デモは東部ペンシルベニア州や中西部ミシガン州、南部フロリダ州、西部カリフォルニア州など、全米の少なくとも28の州で起きていて、このうちペンシルベニア州の州都、ハリスバーグでは20日、州議会の前に200人を超す人たちが集まりました。

参加した人たちは経済活動の再開を訴えるプラカードを掲げて「外出制限で生活が苦しくなっている」と声を上げました。

参加者の中には怒りをあらわにする人もいて、警備にあたる警察官に詰め寄る人もいるなど混乱した様子もありました。

5人の子どもを育てているというケイト・カマローさんは「個人で旅行代理店を経営していましたが、仕事がなくなりました。夫の収入も半減しました。十分な補償も得られておらず、住宅ローンを支払えません。私の知っているかぎり、収入がない中で何か月も生活できるだけの蓄えがある人はほとんどいません。この状況をなんとかしなければいけません」と話し、一刻も早く規制を解除して仕事を再開させてほしいと訴えていました。

生活への影響を訴えたり、不満を募らせたりする人がいる一方で、アメリカのメディアはデモの背景に政治的な思惑もあるという見方を伝えています。デモの中には与党・共和党に近い保守系団体が主催したり、トランプ大統領を支持する団体が呼びかけたりして起きたものも少なくなく、今月15日に中西部ミシガン州の首都ランシングでのデモも保守系の団体が主催したことが明らかになっています。

ミシガン州は感染で死亡した人が全米で3番目に多く、野党・民主党所属のホイットマー知事は今月上旬、外出制限を今月30日までに延長し、住民がほかの家を訪ねることも原則、禁止しました。

これに対し、一部の住民が州の庁舎に向かって自家用車で列をなして抗議の意思を示すなど、州では反発も出ています。

このデモを呼びかけた保守系団体の幹部のマット・シリーさんは、インタビューで「デモは、州知事の命令に住民は服従せず、抗議することを示している。州知事は経済活動の再開までにあまりにも長い時間をかけていて、多くの家庭を苦しめている」と主張しました。

そのうえで「トランプ大統領の段階的に経済を再開する計画に賛同する。これはとても堅実な計画だ。身体的、精神的、経済的な健康状態が悪化していることに注意すべきだというのがトランプ大統領が伝えようとしていることだ」と述べ、トランプ大統領の方針を強く支持しました。

シリーさんが経営する車両部品会社の工場は、州の緊急事態宣言が出される前の先月9日に取材した時にはフル稼働の状態でしたが、外出規制が出されてからは売り上げが75%減ったということで「州の感染のピークは過ぎたと専門家が話している。新型コロナウイルスは全滅しないため、全滅するまで家に閉じこもり続けるのは無理だ。経済活動を再開して、みんなが仕事に戻れるようにするべきだ」と訴えていました。

トランプ大統領は21日の記者会見で「感染拡大の影響で解雇されたアメリカの労働者が、外国から来た移民労働者と入れ代わるということはあってはならない」と述べ、失業者の急増を受けて雇用を確保するためだとして、移民の受け入れを当面停止する方針を明らかにしました。

対象となるのはグリーンカードと言われるアメリカでの永住権の取得を目指す移民で、受け入れの停止期間を60日間としたうえで、その後は経済状況を見て措置を延長するかどうか判断するとしています。

また、トランプ大統領「最初の大統領令にあす署名するが、必要に応じて第2の大統領令を出すことも検討している」と述べ、22日に停止措置の大統領令に署名したうえで、将来的に移民の受け入れをめぐる追加の措置を取る可能性も示唆しました。

トランプ大統領としては、雇用環境が急激に悪化する中、労働者層にアピールするねらいもあるとみられますが、今回の措置では医療関係者と農業労働者は対象外になる見通しで、ひっ迫する医療態勢や農家からの安価な労働力確保を望む声には配慮したとみられます。

新型コロナウイルスの感染者と死者の数がアメリカで最も多い東部ニューヨーク州は、厳しい外出制限を始めてから22日で1か月になります。人と人が一定の距離を取る「ソーシャル・ディスタンシング」が浸透したこともあって感染拡大のピークは過ぎたと見られていますが、かつてのにぎわいを取り戻すまでには、まだ長い時間がかかりそうです。

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